松嶋菜々子さんの「やまとなでしこ」や、仲間由紀恵さんの「トリック」など、美人の百面相(変顔ではない)を見せられると、どうしようもなく魅入られてしまうものですが、綿矢りささん原作、大九明子さん監督の「勝手にふるえてろ」の主役・松岡茉優さんには、久方ぶりに、「このまま、ずっと見ていたいな~」と思わせる美貌と演技力でした。
映画の概略ですが、田舎から都会に出てきた松岡茉優さん演じる主人公のヨシカは、もともとコミュ障気味のサブカル系女子。
「アーバンライフを満喫」なんて人生とは縁遠く、「タモリ倶楽部」をリアルタイムで見ることを楽しみにしているような日常。
気心の知れた親しい同僚はいるものの、そんな彼女にも彼氏が出来てしまって・・・・・。
以下、ネタバレあり。
SNSにも仲間を見つけられない主人公が、それでも世界に紐帯をつくろうとする行為が、日々、通勤や買物で出会う人を、勝手に話し相手に想定して繰り広げる脳内会話。
うーむ、エキセントリック・コミュニケーション。
そんな彼女ですから、当然、これまでの人生で恋人など皆無。
仕方がないので、学生時代にあった、うすーい異性へのトキメキを、十年経っても反芻しているという、牛もビックリな栄養補給。
と言うか、それ、もう栄養成分なくなっているよ・・・・・。
これで、まぁ、言い方は悪いが、「しおらしい」「いじらしい」というのであれば可愛げもあるが(男性目線)、コミュ障系の人間にありがちな内弁慶外地蔵という、二面性。
面白くないことがあれば、裏では「ファッーク!」と叫んでいるわけで、現実にいたら、超面倒な女性。
なんだけれども、松岡茉優さんが演じると、超キュートでして、・・・・・・まぁ、ここらへんの「現実」と「フィクション」の狭間に、苦笑いしたくなるのは、僕だけ?
ぶっちゃけ、松岡茉優さんくらい美貌があったら、性格に多少難ありでも、なんぼでも男が寄ってくるだろうし、そういう学生生活を歩んでいたら、ここまで性格がひねくれる(こじらせる)ことはないだろうし。
まぁ、それは置いておいて。
一念発起して、脳内彼氏を現実に召喚(再会)してみたら、あれ、頑張ったかいがあったよ、意外に良い雰囲気。共通の話題も見つけて、話も盛り上がる。こりゃ、一発逆転、スクールカーストを鯉の滝登りじゃーい! と思ったら、リアル彼氏(彼氏ではないが)は、主人公のヨシカのことなんて、全然覚えちゃいない。
いや、「全然覚えてはいない」わけではないのだが、ヨシカの望むレベルではなかったわけで・・・・・・まぁ観客からすれば、「いや、そりゃ、そうじゃん。そこまで求めるのは、おかしくね?」って、思ったんじゃないかな? 少なくとも、僕としては、この展開は、「ちょっと無理筋?」とは感じたけど、でも、ヨシカを気に入っている男性(霧島)のことを名前ではなく「二」なんて呼んでいるのと、同じこと。
リアル彼氏(彼氏ではないが)がヨシカを「なんとなくいた同級生」程度の認識であるように、ヨシカにとって霧島は「なんとなく私に好意を持っている男」程度の認識。
脳内彼氏に見切りをつけて、「一応、自分のことを好きと言ってくるから、まぁいいか」という、安っぽい承認欲求から「ニ」と付き合ってみるが、結局、彼女にとって記号でしかない「男」であり、「求めながらも、与えることはない」という身勝手な自分自身に復讐され、うまくいかずに破綻。
最終的には、「割れ鍋に綴じ蓋」という、永遠の真理に落着して、オメデトサンなんだが、「ニ」の霧島、前半のうざーい感じからすると、さて、うまくいくんだか、いかないんだか・・・・・・・。
とにもかくにも、松岡茉優さんの素晴らしかったです。
この演技見せられたら、他の監督さんも「使ってみたい!」と思うんじゃないかな・・・・・とwiki見たら、今年、是枝監督の作品に出るのね。
どんな役で、どんな演技をしてくれるのか、非常に期待が持てます。
勝手にふるえてろ (文春文庫) | ||||
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