「お祭り映画」と評される作品があります。
公開される前から、多くのファンから「あーでもない」「こーでもない」と議論百出、ちょっとした情報やら撮影風景のリーク、根拠不十分ながら妙に説得力のある噂話が浮上しては歓声やら悲鳴があがり、その作品を象徴する、または単に著名な映画館の前には、数週間前からテントを張って並び始めるファン、ついに映画公開となれば、SNS上では、やはり多くの人々が論評やら感想をアップ、時に感心され、時に「ネタバレ勘弁」と怒られ、・・・・・・まぁとにかく、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」でして、過剰なパトスとカオスによって消化されてしまう「お祭り映画」。
世界三大お祭り映画と言えば、只今、興行成績をゴリゴリと更新している「アベンジャーズ」や、去年の末公開され、毀誉褒貶あった「スター・ウォーズ」、そして「幸福の科学」製作映画。
去年の「君のまなざし」に続いて、今年も「さらば青春、されど青春。」が公開されました。
信者の方が、今回も、タダ券を配って下さり、し・あ・わ・せ。
「よーし、早速見に行くぞー」と勇んだものの、近所の映画館は、午後八時前上映スタート。
仕事が終わって、ダラダラとゲームをしていて、「はっ!?」と気がついたら、すでに上映が始まっている。
「どういうことだ!? 私に幸福の科学の映画を見せまいとする、悪魔の仕業か!!」
と驚くこともなく、
「どうしようかな~、どうせ最初は、いろんな映画の予告編が流れているのだから、今から走ったら、間に合うんじゃない?
と考えたものの、まぁ、それも失礼だな(誰に? 映画に?)と思い返して、その日は、ゲームを進めて、翌日にトライ。今度は、ちゃんとアラームを設定したので間に合いました。
公開三日目、四日目くらいかな? 15名弱の観客がいて、田舎の映画館の夜では、大入りです。この中に、信者の方は何人いるんですかね~。
とにかく、目を合わさないようにして、「よーし、がんばろう」と自らを奮い立たせて、着席。
いろんな映画の予告編が終わって、本編開始。
ニューヨークの街角、主人公を演じる大川ジュニア様の独白からスタート。
そして、場面は、昭和五十年代の日本へ。
実家を離れて東京に向かう主人公のシーン。家族構成は父母兄。
「うん? これは、もしや」というモヤモヤした予感は、東京大学をモデルにしている学校に通い始めたことが判明した瞬間、確信に硬化。
「海外赴任、四人家族、東京大学・・・・・・、この作品は、エルカンターレ(大川隆法総裁)様の半生を描いているのか!」
普通の
で、まぁ、大学での勉強、学友との交流、淡い初恋なんてものが描かれるわけなのですが、とにかく、主人公を褒めまくる褒めまくる。
小論文を提出すれば教授が褒め、難しい本を読んでいると友人が褒め、釣り銭をごまかさないと喫茶店のマスターが褒め、・・・・・しまいにゃ、主人公を振った女性ですら、「偉人のような勤勉さ」と褒める始末。
観客としては、改めて、エルカンターレ様の素晴らしさに感服仕切り。
(友人たちが初恋の女性に、「あいつにラブレターの返事を書いてくれ」と懇願している姿を主人公が回想するシーンで、「えっ、大川ジュニアは見てたの?」と思ったのは、僕だけ?)
就職してからも、変人扱いではあるが、上司からは将来の社長と期待され、同僚・先輩からは、あまりの辣腕を妬まれ、アメリカに行けばパツキン美女に惚れられ・・・・・・、相変わらずの無双。
一応、「世間知らず」という欠点が、時にコミカルに語られ、かなわぬ恋愛やら、司法試験の失敗、ものすごい優秀な東大生なはずなのに学究を志すわけでもなく、また官途に就くわけでもなく、それほど大きくない商社に勤めることになったりするといった、下手をすると「負」「マイナス」「評価を下げる」ようなエピソードもあるのだが、・・・・・・結局は、全て、運命なわけですよ。
主人公にしか出来ない使命を全うする為の、大いなる意思によって仕組まれた挫折であり、寄り道であり、壁。
そして、自らに課された使命・義務に気がついた主人公は、「安定した生活こそ、すべて」と耳打ちする悪魔の声に打ち勝って、会社を辞めて宗教家となり生きていくことを決意するのであった。(仏陀の生まれ変わりにしては、えらく小市民な悩みがクライマックスだなぁ・・・・などと思うのは悪魔の仕業です。
と、まぁ、そんな感じ。
映画のポスターとか見ると、「恋愛映画なのかな?」と思ってしまいますが、「清水富美加」改め「千眼美子」さんが登場するのは、後半から(最後の45分くらいから?)。
女優としては、連続テレビ小説「まれ」くらいしか知らないのですが(「龍の歯医者」の声優は、それなりに上手だと思ったなぁ)、ちょっとふっくらしたものの、「それはそれで」という感じで、まだまだ可愛らしさは健在、演技にしても声にしても、なりなりに場数を踏んできたこともあって、アイドル女優として、自らの素材を巧みにスクリーンに映し出す力量は大したものだなぁと感心。
・・・・・・・・しかし、この映画がエルカンターレ・大川隆法総裁の半生をなぞっているのだとすると、千眼美子さんの役は、大川きょう子さんがモデルなのか? などと、余計なことを考えてしまったのは、僕だけ?
しかも、主演とは言え、大川ジュニア様は、ご尊父の逆鱗に触れてしまった為に、今は、絶賛教団追放との噂。
ヒロインも、追放されてしまった大川きょう子さんがモデルだとすると、この映画は、宗教家として第一歩を歩むまでを描いているのだが、その一方で、家族と言えども、所詮は他人、人間の全ての行いは虚しいという「諸行無常」の世界観で支えらていることを考えると、大変に非常に正しく深慮遠謀な作品ですね。
とりあえず、最初にタイトルを聞いた時には、柴田翔「されどわれらが日々」が思い浮かびました。
40超えのおっさんからしても、「古いな」と思った作品ですが、青春小説としては、未だに色あせない魅力があります。
おすすめです。