2016年8月14日日曜日

新作「ゴーストバスターズ」を見てきた

続編というかリボーンというかリスタートというかリブートというか


見たことがない人でも、テーマ曲は聞いたことがあり、「あぁ、ゴーストバスターズの曲ね」と分かるくらいに知れ渡っている作品です。

ハリウッドのネタ切れもありまして、 昨今のリブートブームに乗って新作がつくられました。

1も2も見たことがあるはずなのですが、幼少期のことなので、ほとんど内容は忘れています。

が、1980年代のアメリカ映画らしく、とてもワクワクする映画だったのは、なんとなく覚えています。


で、今作。



映画「ゴーストバスターズ」最新作予告編が公開されるも大ブーイングを受けるなど賛否両論

個人的には別段気にならなかったのですが、あんまり予告編(前評判)は、良くなかったですね。


さて、実際見てみました。

まぁ前作は、ほとんど覚えていないので、比較はできないので、純粋に今作の評価になるのですが、・・・・・・うーん。

少なくともワクワク感はなかったですね。

単純に私が年を取ったのか、作品のレベルがイマイチだったのか・・・・。

隣の隣にカップルがいて、女性(20代前半?)は、けっこう声を出して笑っていたんですよ。

なので、自分(男性)の肌には合わなかっただけなのかね~。

あらすじ


主人公の女性は、大学教授。終身雇用の権利を得ようと必死になっている最中。
そんな大事な時期に、幽霊を退治して欲しいという、珍妙な依頼を受ける。
そこで、かつて友人と書いたオカルト本が出版されていることを知る。

「これはマズイ」と、直ぐに旧友に抗議へ。
未だに幽霊の存在を信じている旧友は、聞く耳を持たず。

そこで、幽霊退治の依頼を仲介してやるので、出版を撤回してもらうように持ち掛ける。

大喜びの旧友と一緒に、主人公は依頼主のところへ向かうのであった・・・・・。

女性による女性の為の映画?


敢えて女性四人組、さらに中年。

全盛期のキャメロン・ディアスの美貌に頼っていた「チャーリーズ・エンジェル」なんかと比べると、「どの層を狙っているんだ!?」と不安になるような布陣。

男に媚びるような作品はつくらん! という製作者の意図が透けて見えます。


昨今のブロックバスター映画なら、ゲップが出るくらいにCGが冒頭から尾っぽまで詰まっているのですが、この作品は、女性たちの掛け合いにも時間が割かれています。

ここらへんも、女性の観客を意識した配合なのかな?

ネタバレ


で、まぁネタバレです。

幽霊退治(ゴーストバスター)なんて、権威には相手にされていない世界。
そこに従事する人間というのは、現代では女性こそが相応しいということなんでしょう。

女性主人公たちを大学(権威)から追い出すのは、男だったし。


他に登場する男たちも、(作品がコメディということもあって)どれもこれも、一癖二癖あり。

その中で、重要な役割を担う二人の男性。


一人は、彼女たちの補佐。
マッチョの美男子だけど、脳みそからっぽ。

電話の応対も出来ないような、ダメダメ。

戦力になるどこか、足を引っ張るタイプ。


もう一人は、幽霊を現実世界に解き放つ黒幕。
ネクラの童貞こじらせ小デブ。

この重要な二人は、物語の途中で合体してしまう。


「イケメンもキモメンも、どっちも女の敵じゃーい」ということなのか?


で、この男が霊界と現世の壁に穴を開け、ニューヨークは幽霊で大パニックに。

警官や軍隊(ものの見事に、男性ばかり)が出動するが、まったく役に立たず。(踊るだけ)

結局、ゴーストバスターズチーム(全員女性)の活躍によって、世界は救われる。


・・・・・・男尊女卑ならぬ、女尊男卑だねー。


ラストで友情を取り戻し、二人の女性の髪が白髪になってしまうのは、老化のメタファーとも捉えることが出来るわけでして、いろいろあったけど、新しい研究施設も手に入って、仲良しの女性四人で、これからもガンバロー的な終わりは、「年を取っても、女だけで仲良く。もう男になんか頼らないし、男の面倒を見るのもやなこったい」という、まぁ、現代女性の願望につながっているようにも見えます。


娯楽映画なので「政治性」というものが前面に押し出されているわけではないし、無理にほじくり出す必要もないのでしょうが、どうも、イマイチ楽しめなかったせいで、そこらへんに原因があるのかな~などと思ってしまいますが、所詮、屁理屈です。


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2016年8月7日日曜日

ありがとう、庵野秀明監督「シン・ゴジラ」


ついに庵野監督がメジャー世界に羽ばたくか!?



庵野秀明監督は「エヴァンゲリオン」の成功の後は、村上龍さんの「ラブ&ポップ」、永井豪さんの「キューティー・ハニー」を実写化したりして、まぁ、それなりに話題にはなったけど、・・・・・・「それなり」という感じでした。

面白かったけどね。


結局、最近になって、エヴァをリブート、まんまと大ヒット。

まぁ、こちらも面白いから困ったものでして。


でも、個人的には、「このままエヴァだけで、終わってしまうのかね・・・・」という危惧も。


エヴァだって、社会現象にまでなった大ヒットなのは、分かってますよ。
それは、そうなんだが・・・・・・。

超映画批評(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』60点)さんで、
この映画にエヴァンゲリオン初心者の方を連れて行くのはあまりオススメしない。ためしに私は本シリーズを知らないスタッフを連れて行ったが「眠くなるけど(アクションシーンが)うるさくて眠れず、早く終わらないかとずっと思ってた」などと散々な評価であった。
と書かれている。

つい最近お亡くなりになった永六輔さんも、「話題だから見てみたけど、なんだか分からんから、途中で退席したよ」とラジオでおっしゃってました。

アニメ史に残るようなヒット作であって、やっぱりオタクコンテンツから抜け出ていない。(一応言っておくと、オタクコンテンツが悪いわけではないよ)


お師匠筋の宮崎駿監督なら「ナウシカ」(「もののけ姫」か?)、押井守監督なら「GHOST IN THE SHELL」で、オタクの大将から一歩抜け出したのですが、さて、庵野監督は、このままオタクの大将で終わるのかな・・・・・、いや、別にオタクの大将が悪いわけじゃないし、妙に芸術家気取られるくらいなら、清々しいとは思うけどね。

でも、これだけの才能がある人なんだから、メジャーな世界でも通用する作品も見たいなー、とは思っておりました。



・・・・・・そして、「シン・ゴジラ」。

渡辺謙さん主演のハリウッド版「GODZILLA」の成功から、「本家の日本でつくらんで、どうする!?」というライバル意識と危機感で制作が決定。

特撮面では、「進撃の巨人」の酷評から立ち直れるかの、瀬戸際。
今作が失敗すれば、「やっぱり、日本のSF映画は、こんなものか・・・・・。所詮、オタク or マニア向けか、子供相手の商売しか出来ないのね」という失望と失笑が広がるのは必定。

どうなのかね~、いけるのかね~、エヴァの最終作をつくりたくないから逃げてるかね~、・・・・・などと思っておりましたが、ものの見事に傑作を送り出してくれました。

ありがとう、庵野監督。

「THE 日本」が、いいんだか、わるいんだか


今作は、特撮ファン&SFファンだけに限定されることのない物語であり、渡辺謙さんの「GODZILLA」とも違う、オリジナリティに富んだ「今のゴジラ」「庵野監督のゴジラ」でした。

そして、単に優れたエンターテイメント作品であるだけでなく、現代日本に対して、示唆に富む内容。

が、この「現代に日本に対して、大変示唆に富む内容」というのが曲者だったりします。


この作品、えらく、登場人物が多いんだよ。
で、官僚は官僚で、自衛隊は自衛隊で、絶えず会議をしている。

怪獣映画と言うよりも、会議映画ですよ。


確かに、リアリティを生み出す効果はある。
庵野監督らしい、「ハッタリだな」と思わないでもなかったけど、これって、主人公・矢口が率いるチームとの対比で、描かれているんだよね。

縦割り式で、最終的に上の判断が無ければ銃の一発も打てない官僚組織。

で、ありながら、トップの首相は、個人的な思いや政治的信念とは違っていても、周囲からの説得で、あっさり従ってしまう。
日本らしい組織。空気によって物事が運ぶ、無責任の構図。


に、比べて、主人公の矢口チームは、一つの部屋に集まって、縦も横も関係なく、意見を出し合う。
また、リーダーの矢口は、他人からの意見を聞く度量はあるが、自らの決意に忠実で、危険を顧みず現場で指揮をとる。
(人命を前にして、攻撃を止めさせる首相と、最終決戦を前にして躊躇しない矢口も、対比になっていたねー)


で、「普通」の作品だと、
「前者(官僚組織)は悪」
「後者(アウトロー集団、反エスタブリッシュ、反エリート)は善」
と、単純に描いてしまいがちなんだけど、ここが、まぁ、「庵野秀明監督、一皮むけたな~」とうなるところでして、前者にしても、日本的な民主主義として、決して「悪」と描いているわけではない。

だから、最終的には、矢口チームによってゴジラを倒すことに成功するものの、当の矢口は復興にも努力を惜しまないつもりだが、「政治家に大事なのは、出処進退」と口にしている。


初代「ゴジラ」において、圧倒的な力を持つ「ゴジラ」を倒した芹沢博士は、ゴジラを凌駕する力を得た為に、自らを滅ぼさねばいけなかった。

矢口も、自分の行為は、あくまでも非常時の超法規的行為であると自認している。
だからこそ、復興に目処がついたら、自らも身を退かなければいけないと考えているようだし、また、日本の組織においては自分は異端であり、平時においては身の置き所がないことも分かっている、・・・・ということなのだろうなぁ。


ここらへんの、「THE 日本」という組織の描き方は見事だったんだけど、・・・・・・・でも、よく描かれているだけに、海外の人に分かるかな~。

アジア圏なら、庵野監督も名が知られているから、「シン・ゴジラ」はヒットすると思うのだが、でも、西洋には難しいか?


ゴジラは、なんの象徴?


庵野監督と言えば、「圧倒的な情報量」「裏設定」を物語に込めて、受け手に「謎解き」をしたくなる仕掛けづくりが上手な方。

エヴァですと、「死海文書」「ロンギヌスの槍」「生命の実」「白き月」とか、オカルト色の強いワードを羅列して、「さぁ、解釈しなさい」と迫ってくる作品でした。

大ヒット当時、各々が解釈を披露して百家争鳴でした。


「シン・ゴジラ」では、これが、「安全保障」「防衛出動」「憲法」「緊急事態条項」「集団的自衛権」・・・・・など、現実の法規・慣習になっている。

つまりは「政治課題」を、物語の謎解きアイテムにしているわけでして、・・・・・・ぐむむむ、巧みな餌撒きですよ、まったく。
(政治課題を物語に内包させるというのは、押井守監督の「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の影響もあるのかな?)

今後、なにか国家間の事件や、軍事に関する問題が発生する度に、「シン・ゴジラ」が持ち出されるのが目に見えます。


時々の事件の特異性に応じて、「シン・ゴジラ」内の枝葉末節を必要に応じて切り取られることになるんだろうねー。

で、その際、重要なのは、「「シン・ゴジラ」におけるゴジラって、なんの象徴?」という問題。

初代からのモチーフである「原子力の悪」、人智を超えた「圧倒的な自然の力」、最早対話をすることも不可能な「外敵(ぶっちゃけ、北朝鮮か中国)」、暴力的に自国を蹂躙していく「黒船」、・・・・・「ゴジラ」が「最悪な来訪者」であることは誰もが認めるところ。

しかし、その解釈となると、エヴァと同じで、いくらでも出てきてしまう。

まして、現実の政治課題とリンクしているとなると、各々の立ち位置によって、色がついてしまうわけで、そこも含めて、ついに「大人な作品」をつくったなぁと感慨深いものがあります。

おまけの感想


石原さとみさんが、相変わらず「綺麗」&「キュート」だったけど、他のキャラがリアリティのあるオッサンばっかりだっただけに、マンガチックで、ちょっと浮いていたね。
まぁ、石原さとみさんの問題ではなく、庵野秀明監督の女性観の起因するのだろうなぁ(矢口チームの女性も、「いかにも」だったし)。


あと、中盤におけるゴジラの絶望的な強さと比べて、ラストが意外にあっさりだったね。
まぁ、リアリティを追及した結果なんだろうけど。


そして、素晴らしいクオリティの作品で、また見れるなら、同じような作品は見たい。

が、・・・・・・・・・・・続編は、どうかな?
映画会社としてはつくりたいだろうけど、・・・・・・難しいだろうなぁ。

怪獣映画なら、新しい怪獣を出すことで解決するけど、これって会議映画だからな。

また延々と会議を見せられてもねぇ。

あっ、でも、「日本に敵対する国が、新しい怪獣をつくって、それと対峙」という、国際関係を絡めた話なら、どうにか成立するか?


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2016年8月4日木曜日

映画「帰ってきたヒトラー」


あらすじ


どうしてか、現代に蘇ったヒトラー。

服がガソリン臭いということは、総統地下壕で服毒自殺の後に、焼却されたことが契機で、タイムスリップした模様。
まぁ、ここらへんの設定を、「なんで?」と聞くのは、野暮でして。

最初は戸惑いつつも、徐々に現実を受け入れ始めるヒトラー。

ヒトラーそっくりの演説は(そりゃ、本人なのだから当たり前)、大衆たちは面白がるようになり、人気者へ・・・・・・・・・。

感想


同じドイツ産ですと、「グッバイ、レーニン!」も、なかなか面白い設定だったけど、こちらはさらに珍妙な映画でして。

「ロードムービー」的にドイツ各地にヒトラーを登場させて、一般人がどんな反応をするか「ドキュメンタリー」的に撮影。(ヤラセ? 演出? どうなんだろう)

その内容を、物語へ適時差し込みつつ、最終的には、この映画制作すら映画内に取り込んでしまうという入れ子。


まぁ、「ヒトラーが現代に蘇って、人気者へ」という筋から、製作者の意図が、「現代への警鐘」であることはもろバレですが、それを単純な一本調子のストーリーではなく、複雑なメタ構造であらわそうしている点が、なかなか凝ってました。


気になったのは、主人公(?)のヒトラー。

顔つきや、演説、身振り手振りなんかはヒトラーに似ているように思えたが、えらく身体がしっかりしているんだよね。肩幅が、しっかりしていて。

ヒットラーというと、小男(実際は、175cmの身長だったそうで、小男ではない)のイメージがあるので、どうも違和感がありました。

が、そのうちに、製作者の意図なのだと納得。

この物語におけるヒトラーというのは、神経質な小男ではなく、「たくましい指導者像」として描かれている。

映画において、多くの大衆は、この「ヒトラーのそっくりさん」を、パロディとして許容している。
最早、ヒットラーなど、過去の遺物。いまさら、恐れるまでもない、と。面白がるのが、大人の寛容ではないか・・・・・。

が、「ヒトラーのそっくりさん」は、実は「ヒトラー本人」。
危険思想を内在した、「たくましい指導者」である。


・・・・・・・まぁ、言わずもがなですが、現代において、「たくましい指導者」というのが、世界各地で誕生していたり、誕生しようとしている。

「たくましい指導者」と、「ヒトラー」は違う。
「ヒトラー」は過去の遺物であり、現代における「たくましい指導者」というのは現代社会における課題を克服しようとしているに過ぎない。

言動の端々には、ヒトラー的なものと相似を覚えるかもしれないが、本質が違うのだから問題はない・・・・・・・と、「たくましい指導者」の支持者は思っているでしょうが、・・・・・・・まぁ、製作者から言わせると、それは、「本物じゃないの?」ということなんでしょうなぁー。


さて、トランプさん、どこまで行けるかな?


あと、おまけの感想としては、名作「ヒトラー -最期の12日間-」の、例のシーン(総統閣下シリーズ)が、そのままパロディになっておりまして。

日本では、このシーンは相変わらずの大人気ですが、ドイツでも人気なのね・・・・・。(わざわざ日本に媚を売ったわけじゃないよね?)

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)
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2016年8月2日火曜日

渡辺謙さんの「GODZILLA」感想


庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」も公開されるので、その前に渡辺謙さんの「GODZILLA」を見てみました。


初代の「ゴジラ」が核戦争の恐怖を下敷きにしていたのは言わずもがなですが、2014年公開のアメリカ版「GODZILLA」は、311をモチーフにしているのね。

冒頭の地震からの原子炉の暴走、一帯が避難区域に指定されて立ち入りが禁止になるという流れは、モロ311。

その後も、ゴジラの登場シーンで津波が発生しているのも、やっぱり311そのまんま。


・・・・・日本では、逆につくれないだろうなぁ。
外国人だからつくれた・・・・・というよりは、ハリウッドの貪欲さだねー。

無神経とも言えるけど。


ローランド・エメリッヒ監督の「GODZILLA」が、「ジェラシックパークをつくるとスピルバーグに怒られるから、ゴジラってことにしようぜ!」程度の作品だったけど、渡辺謙さんのは、まずまずオリジナルへの敬意が感じられました。


にもかかわらず、ハリウッド映画のお約束で、やっぱり日本の風景が「変」なんだよね。

「金がないから」とは思えないし、「リサーチ不足」とも考え難い。

すると、この「ちょっと変な日本」というのが、アメリカの観客には、受け入れ易いのかね~?

うーむ。

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