2017年10月30日月曜日

世界の中心で「責任者出てこい」と叫びたくなった「ブレードランナー 2049」



著名な漫画の「アニメ化」のお話しは、「朗報」としてネットを駆け巡るのですが、これが、「実写化」となると「悲報」とされるのは、よく見る光景。

なんでですかね?
実写が成功したら「拾い物」だし、失敗したらゲラゲラ笑えばいいだけなのに。

と、考えている私ですが、「ブレードランナー」の続編製作決定を聞き、感じたのは、うれしさよりも、「えぇ!?」という戸惑い。

だって、「ブレードランナー」は、もう過不足のない作品だからなぁ・・・・・。


しかし、「ロッキー・ザ・ファイナル」で十分きれいに終わっていたけど、「クリード」も蛇足ではない、完成度だったし。

いまさら「マッドマックス」? と、ちょっと半笑いだったのに、「マッドマックス 怒りのデスロード」は、大傑作。

またリブートするの? と呆れていた「スパイダーマン ホームカミング」も、安心して見れる良作。

まぁ、「続編」=「駄作」とは限らないのですが、「ターミネーター」は「2」以降、どうにもこうにも(「なんだかなぁ~」が続いても、しつこく続編がつくられるあたりが、逆に「2」のすごさ)。

「エイリアン」も、・・・・「うーむ」と腕を組んでしまうレベル。

その他、ナンバリングが増える程に、「どうでもいい」感じになっていったシリーズ物は、枚挙に暇がないわけでして。


で、「ブレードランナー 2049」。
「スター・ウォーズ」のような物語ではないのに、続編は難しいだろうなぁという予測のもと、公開初日に映画館に行ってきました。

そして、見終わった感想は、タイトルの通り、世界の中心で「責任者出てこい」と叫びたくなったです。

期待の作品のはずなのに、あまりに単調で眠気が到来。
こんなにも眠くなったのは、「47RONIN」で、剣を手に入れる為にキアヌ・リーブスが天狗と戦うという、忠臣蔵屈指の名シーン以来。

どうにか目が覚めたのは、主人公がゴミ捨て場に着いたあたり。
ちょっとした戦闘シーンがあって、ようやく起きていられるようにはなったが、だが、別段、映画が面白いわけでもなく。


ライアン・ゴズリングとハリソン・フォードという、新旧売れっ子をそろえておいて、こうも、つまらん作品になるとは。

「ブレードランナー」の続編としては、
  • レプリカントを追う捜査官が主人公
  • その彼女は、「人間」ではない
という設定は、引き継いでいるのだが、・・・・・残念ながら、前作ほど魅力あるキャラクターにはなっていない。
また、最初っから相思相愛という設定も、興味を失わせる要因の一つなのかな~。

そして、過去作での鮮烈なビジュアルが、この二十一世紀において、どう描かれるのか見物でしたが・・・・・・、なんとなく「ブレードランナー」っぽいけど、いかにもCG全盛期らしく、のっぺりと綺麗な「絵」になってしまい、正直、昨今のハリウッド大作にありがちな「未来」に埋没してしまっている。

過去作の、あの愛らしい手作り感のある猥雑さが、すっかり抜け落ちてしまっているわけで。

つまりは、「ブレードランナー」の続編としては、まぁ、あんま評価できないなぁ。


では、シリーズとは切り離して、単体の映画としては、どうかというと、これもやっぱり微妙な気がする。

特に前半の「だるさ」が、致命的に思えるのは、僕だけ?
まぁ、個人的な嗜好として、会話がメインのシーンを見ていると、「映画でやる必要ないだろ、こういうのは小説でやれよ」と感じてしまうのも、あるんですけれども。

また、ライアン・ゴズリングの欠点というよりもは、芸達者な証左なのだろうけど、レプリカントを追う捜査官ではあるが、当の本人もレプリカントということで、感情をほとんど表に出さない。
「非人間らしさ」を、巧みに演じているのだけれども、そのおかげで、いっそう映画が単調に感じられた。

映画「ブレードランナー」続編が大コケ 中年にしか受けない説

「映画の内容が、前作に依拠している&あまりにSF」ということで、興行的に失敗した要因と分析しているけど・・・・・・、スカーレット・ヨハンソンの「GHOST IN THE SHELL」の敗因を「ホワイトウォッシュ」にしていたのと同じで、僕からすると、「いやいや、そもそも映画として失敗しているぞ」とツッコミたいところです。

で、「アメリカで大コケ」が、ヤフーニュースのトップを飾ってしまった結果としての、これこそ「蛇足」な、シールがホスターに貼られていました・・・・・・。


by カエレバ

2017年10月29日日曜日

トム・クルーズ主演「バリー・シール アメリカをはめた男」



トム・クルーズ主演の「バリー・シール アメリカをはめた男」を見てきました。

田舎の映画館なのですが、まだ公開から間もないこともあって、けっこう人は入ってましたね。

さすが、トム・クルーズ。

今年は、「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」も公開されました。
しかし、怪奇モンスターのアベンジャーズであるダーク・ユニバースとやらの口開けなのに、「大丈夫?」と、要らぬ心配をしてしまう、「なんだかなぁ」感の強い作品でした。

で、今作は・・・・・、うーむ、微妙。



予告編を見て感じるように、コメディタッチ。
なのですが、CIAの仕事を隠れ蓑にして、麻薬の運び屋をやっていたという、まぁ、実際には、冗談にならないようなシリアスでハードな稼業をしていたわで、トム・クルーズのスター性をもってしても、どうしても乖離が出てしまう。

この乖離が、例えばホロコーストなのに、コメディ映画という「ライフ・イズ・ビューティフル」においては、観客に強烈な印象を残すことになったが、しかし、「バリー・シール アメリカをはめた男」では、うーん、うまく行ってないような?

これがフィクションであれば、「なんだかんだで、ハッピー♪」というオチもあろうけど、実際にあった話をもとにしているからねー。
そうそう、ウソもつけないわけでして。

だから、どんなにコミカルで陽気なシーンでも、「最終的には、破滅しかないよね」と観客としては先取りしてしまい、どうにも単純に楽しめない(し、ラストは案の定だった)。


シリアスな物語に構築することも可能だったろうに、・・・・・と言うか、普通につくったら、そうなるタイプの題材だよね。

ただ、まぁ、あまりにもぶっ飛んでいるから、「コメディで撮ったら、面白いのでは?」と思った製作者の思惑も理解できるけど。
マネーロンダリングをする暇もなく、膨大な紙の束が、家中にゴロゴロしていた状況なんかは、「こりゃギャグだな」って思っちゃうよね。


そして、まぁ、製作者として、最終的には、政治風刺にしたかったんだろうなぁ。

冷戦下における中南米の複雑な国際環境下で、政治家(共和党・保守・タカ派)は安易に火遊びを試み、それを支える官僚(CIA)の走狗としてバリー・シールがいたわけだが、国民を欺くような汚れ仕事故に、つけこまれる隙があり、まぁ、それが、副題の「アメリカをはめた男」となるわけだ(正確には、「アメリカ政府をはめた男」になるのだろうが、それだと、キャッチーさが薄れるよね)。

だから、劇中のバリーは、「汚れ」の割には、家族思いで愛妻家。
手下には高圧的に接するようなこともなく、「稼業」こそ、どうしようもないが、ものすごーく「悪い人」としては描かれていないわけで、だからこその、コメディタッチなんだろうし、製作者としては、本当の「悪人」は「バリー・シール」ではなく、物語の背景にいる政治家と匂わせたい為にも、原題は、「American Made」(アメリカ製・アメリカ産)という、強烈な皮肉となっているんだろうなぁ。

そして、劇中ではレーガン政権への批判となっているけど、・・・・・・イラク戦争も、保守系の政治家たちの幻想と願望によって引き起こされた失策という構図を継承しているわけで、ここらへんは、さすがリベラルの牙城ハリウッド。(来年あたりからは、反トランプ映画が、続々と出て来ることでしょう)

と、まぁ、そんな製作者の意図通り、いろいろと勉強にはなる作品ではありました。

が、やっぱり、実際の「稼業」とトム・クルーズ演じる「キャラ」との差が、どうにも埋まらず、映画的な感動やらカタルシスには薄いよなぁ。



by カエレバ

2017年10月23日月曜日

連続テレビ小説「ひよっこ」の感想

今更感がありますが、先月で、有村架純さん主演のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」が、めでたく終了。

有村架純が主演を務める朝ドラ『ひよっこ』で島崎遥香戦犯論 有村はぱるるを嫌悪か


視聴率的には、「苦しかった」は言い過ぎにしても、「振るわなかった」てな感じでしょうか?(島崎遥香さんが、確かに、ちょっとウザかったけど、それを戦犯とまでは言い切れないとは思うが・・・・・)

しかし、作品(脚本)の「質」からすると、前二作、悪い意味でテンプレートで、時折、「そりゃねーだろ」という行動・セリフが出て来る「とと姉ちゃん」、中盤以降のネタ切れがひどかった「べっぴんさん」と比べると、全然、合格点だったと思うんですけどね。

今更ながら振り返る「べっぴんさん」
「とと姉ちゃん」の視聴率が良いということに混乱している視聴者たち


いや、まぁ、「最初の恋人との別離」や「失踪していた父親との再会」あたりから、ちょっと失速したのは否めないが。

そもそも、今時「記憶喪失って、あんた!」とは思ったし、出て来るキャラが全員が善人というのも、なんとも。
高度経済成長を舞台にしているのだから、「三丁目の夕日」的なノスタルジー万歳になるのは予想していたけど、それにしても、まぁ、あり得ない「優しい世界」なわけで、そこが常に引っかかったのは事実。(この「優しい世界」というのは、今年ナンバーワンヒットアニメの「けものフレンズ」と通底しているなぁ)

けど、これは、有村架純さんの存在感の勝利だろうね。

「あまちゃん」では小泉今日子さんの、非常に癇が強い青年期を演じ、直近だと「アイアムアヒーロー」ではゾンビ化した女子高生、映画「3月のライオン」では、主人公・桐山零の美人だけど性格に難アリの義姉と、どれもこれもそれなりに説得力ある演技をして、今作「ひよっこ」は、田舎から出てきた純朴な少女。

父親の失踪という悲しい過去を背負いつつも、決して、「私って不幸」というウザったい「重さ」はなく、しかし、一方で、「大黒柱が消えたのに、よくケラケラ笑っているよな」という反感をもたれるような「軽さ」もなく、程良いさじ加減だったのでは?

堀北真希さんのような圧倒的な美貌ではないものの、うまーく愛らしい顔立ちを活かした彼女が中心にいるおかげで、「農業が楽しいだと!?」「田舎は素晴らしい!?」「家族万歳!」という、日本人のノスタルジーを喚起させる「昔の人は、滅私奉公で、自己よりも他人を思いやり、優しい人ばっかりだった。昔は良かった」というファンタジーを、嫌味なく成立させる見事な演技・存在感であったと思います。

有村架純さん、こりゃ、まだまだ売れるねー。


by カエレバ

2017年10月20日金曜日

北野武監督「アウトレイジ 最終章」



「アウトレイジ 最終章」を見てきました。

まぁ、言うまでもなく「アウトレイジ」でした。

なんだけれども、徹頭徹尾、グログロな暴力シーンの連続かと思ったら、存外、そんなことはなく。

ぶっちゃけ、途中から、西田敏行さんが大活躍。
西田無双状態。

「主役、誰だよ!?」と戸惑うレベル。

そして、北野武さん演じる大友とは違って、あくまでも利害で動く西野(西田敏行)は、ギャーギャーといろいろ口にするんだけれども、安易に暴力に走ったりはしない。

だから、所謂「口撃」に終始するわけだが、・・・・・・まぁ、これが、口汚く、狡猾で、無鉄砲な罵詈雑言の応酬となるんだけれども、やっぱり北野武監督の根っ子は「漫才師ビートたけし」だからなのか、とてもではない暴力的な言葉のやり取りを、日本を代表する名優たちが懇親の演技をしているはずなのに、どこかコミカルなんだよね。

恐ろしい場面だけど、どうしてか笑えてしまうというわけで、ありきたりな才能では、決して出来ないことだよなぁ・・・・・・。


で、多くの北野映画に通底する「破滅願望」は、今作でも大爆発。(未見の方、安心して下さい、「どうせ、そういうオチだろうな・・・・」というオチですよ、やっぱり)

ビートたけし氏は日本の芸能界においてトップに君臨(する一人)。
そして、北野武監督としては、世界的な名声を得ている。

後続の芸人たちには、「北野を超えるには、映画でも評価されなくて意味がない」という不文律の壁をつくりあげ、テレビでは「高視聴率」をバンバン獲得、「国民的」という冠を得ているくらいの超有名芸能人たちが、その「壁」に挑んでは、敗れているわけで、・・・・・・芸人で芥川賞作家という例もあるけれども、さすがに「世界」ではないわけで(今後、世界的な評価を得るような作品を書くかもしれませんが)、まぁ不世出と評してもいいような存在。

傍から見たら、「功成り名遂げ」なんだけれども、北野氏の願望が投影されている「大友」というキャラは、組織の論理には因われず、己の基準でもって行動するという人間。

組織のトップの人間からすれば、「鼻つまみ」な存在であるはずなのに、それを、芸能界のトップに君臨する人間が希求しているという、この奇妙なネジレ。

しかも、その「己の基準でもって行動」は、「暴力」となってあらわれるというアナーキーなわけで、まぁなんつーか、人間って理不尽ね。(安易なまとめ)


by カエレバ

2017年10月8日日曜日

映画「ベイビー・ドライバー」



評判は聞こえてくるものの、近くの映画館では、なかなか公開されなくて、「うーん・・・・」という気分でしたが、ようやく見ることが出来ました「ベイビー・ドライバー」。

世評通り、確かに面白かったです。

セミドキュメンタリーならぬ、セミミュージカルとでも評したくなるような、主人公ベイビーに聞こえている音楽に合わせての、ちょっとした仕草やカーチェイスなどは、見ていて単純に気持ちが良い。

ストーリーにしても、強盗という犯罪行為に手を貸しているものの、決して「汚れていない」という立ち位置は、感情移入し易くて、程良いお湯加減。

音楽詳しければ、もっと味わい深くなるのでしょうが、残念ながら、そちらの方面には疎いものの、それでも、十分に楽しめました。


十分なヒットのようですから、「続編」という流れになりそうですが。

しかし、この作品、綺麗に2時間で収まっているわけで、無理につくろうとすると、変なお話しになりそうだなぁ・・・・・・。


by カエレバ

2017年10月2日月曜日

映画「ユリゴコロ」



吉高由里子さん主演で、「ユリゴコロ」。

ユリ? 百合? レズビアンの映画? そして、かつてヌードを披露した吉高由里子さんとなれば、けっこうエロいシーンもあるのか? という期待を込めて、見てきました。

結果を先に述べると、ちょっとだけ同性愛を想起させるシーンもあるにはあるし、濡れ場もあるけど、まぁ、そんなに「いやらしい」シーンはなかったです。

でも、吉高由里子さんの美貌と華奢な体型が際立つ映画でした。

ある種の大事な感情を持たないで生まれてきてしまったシリアルキラーという難しい役だったのですが、不気味でありながらも、美しさを失わないという細い橋をきっちり渡っていて、大したものだなぁと感心仕切り。

一方、松坂桃李さんの演技は、今回、どうにも受け付けなかったなぁ。
熱演であることは否定しないけど、ちょっとわざとらしくて。(個人的な好みの問題かもしれないが)


ストーリーですが、父が持っていたノートを、ひょんなことからのぞき見てしまった松坂桃李さん演じる主人公。
そこには、ある女性による、これまでの殺人の告白がつづられいた。

それは真実なのか、創作なのか。

読み進めていくうちに、驚愕の真実が明らかになるのであった・・・・。


で、まぁ「驚愕」と書いたのですが、こういうのは、どうしてもリアリティがなくなってしまうわけで。

ここらへんは、「娯楽作なんだから、派手でいいじゃん」となるか、「いやいや、そうは言っても、多少はね」と意見が分かれるとこでしょうが・・・・・。


さて、前半は、「ナチュラル・ボーン・キラー」で、快楽殺人でなければ、生きている実感を持てない主人公の幼少期から就職までの過程が描かれます。

共感できる設定ではないものの、前述の通り、吉高由里子さんが得体の知れない不気味さを滲み出しつつも、その美貌は全く削がれないお姿のおかげで、けっこう見応えあり。(デジタル撮影の恩恵なのか、色彩の鮮やかさ・コントラストが際立つシーンが多かったですね)


で、以下、ネタバレ。

後半になって、この吉高由里子さんが、出産&結婚を経て、「愛こそはすべて」とばかりに改心。

すっかり、「女の幸せ」に目覚めてしまうわけで・・・・・・うーむ。

そもそも「ナチュラル・ボーン・キラー」であって、「親からの愛情に飢えて」とか、「幼少期の性的な虐待によって」という後天的に快楽殺人に目覚めたという描写がないのに、そりゃ、また、なんだかご都合だなぁと、少々、げんなり。

で、まぁ、普通の家庭を営んでいても、過去の罪は罪。
償ったわけではないので、その罰として、家族と離れ離れになることに。

最終盤、その事実を知った主人公は号泣するのだけれども、・・・・・・泣きて~のは、なんの過失もないのに殺された被害者や、その家族であって、いやいや、お前(ら)じゃないでしょ、と、ちょっと興醒め。


娼婦であった吉高由里子さんを救うことになる松山ケンイチさんとの再会やら、また、松坂桃李さんの婚約者と木村多江さんの関係とか、「あり得ない」レベルの偶然の集積だったりして、まぁ、ジェットコースター的な展開を望めば、そりゃ仕方ないことなのだろうし、「それが楽しい」という人もいるだろうし、まぁ、これはこれで、いいんでしょうね。

直近ですと、藤原竜也さん主演の「22年目の告白」あたりと、似たテイストかなぁ。

映画「22年目の告白 -私が殺人犯です-」

by カエレバ