以前の感想。
■NHK 連続テレビ小説「まれ」だが、泣かせよう泣かせようとする、あざとさが、なんとも
最後まで、どうも無理がある内容だったなぁ。
タイトルの「まれ」は、イコール「夢」ということで、それが作品のメインテーマ。
父親が夢追い人だけど、「成功したい!」という目標があるだけで、「これがしたい!」というものはない、ダメ人間。
なにをやってもうまくいかず、家は貧乏。
その影響で、「堅実に生きよう!」と誓った、主人公の「まれ」。
でも、本当は、パティシエになりたい想いを秘めており・・・・・まぁ、七転八倒、紆余曲折あって、どうにかパティシエになり、成長し、自前の店を持って、という流れ。
最終的には、家庭と仕事の両立というのが物語の主要な課題に。
もとより、父親は、家族は好きだけど、奥さん子供に苦労をかけさせても、なんにも思わない人。
また、「まれ」の母方の祖母は、仕事を優先タイプ。
そのせいで、子供を捨てて、フランスに修行に行ってしまったくらい。
そんなわけで、「自分のことを優先するか、他人(家族)を優先するか」というのは、「まれ」という物語にとっては、大変重要なファクターであり、また、これは、現代女性の自立、結婚、育児、仕事(キャリア)の問題と重なり合っている。
過去の「ちりとてちん」という朝ドラでは、女性が落語家を目指すというお話だったけど、最後の最後、「私、母親になります。落語家は、別にいいや」というラストで、視聴者を唖然とさせたけど、さて、「まれ」は、どう処理するのかな? と思って見ておりました。
・・・・・・・・・ぬるい処理でした。
そもそも、旦那というのは漆職人の家。
奥様が下支えしないと成り立たないような仕事という設定。
で、彼のことは好きだから結婚する。
でも、自分の仕事も続けたい。
もちろん、彼の仕事も大事だから、手伝ってあげたい。
そして、子供も欲しい。
子供ができた以上は、家庭は大事にしたい。
という、欲張りさんな「まれ」。
もちろん、現代の女性だって、出来れば全部欲しいと思っている。
でも、まぁ、なかなかそうはいかない。
育児をしながら仕事をすることは普通のことになったけど、それでも男性よりも女性の負担が重くなるのが、いまだ当たり前。
子供ができたら、やっぱり出世は諦めるというのは一般的な風潮。
もちろん、「まれ」も、その壁にぶち当たる。
仕事を大事にすれば、子育てがおろそかに。
家庭を重視すると、自然と仕事にかけられる比重は少なくなる。
さらには、旦那の仕事を手伝うとなれば、そりゃ、出来ることは限られてくる。
どうにか自分の店を持つことはできて、売り上げも軌道に乗ってきたけど、子育てをしているうちに、どんどん進取の精神は後退していく。
それを、過去の同僚に咎められ、奮起し、大会への出場を決意。
が、仕事を頑張ると、当然、家のことにかまっていられなくなる。
しかも、仕事がうまくいかないストレスを、子供にぶつけてしまう始末。
でも、どうにかこうにか新しいケーキが完成し、大会出場できそう。
が、なんと、その日は、子供の相撲大会と重なってしまう。
仕事をとるか、家庭をとるかの重大な選択を迫られた主人公の「まれ」。
・・・・・・で、結局、主人公は、家庭を選びます。
大会を放棄して、相撲大会へ。
たかが相撲大会の為に、それまでの努力を無駄にするというのが「うーむ」・・・・、まぁ、いいけどさ。
とにかく、「家庭が大事」というのなら、それはそれで、「答え」だと思うんですよ。
そこに、うまーく落着するのも、一つの手。
・・・・・なんだけど、大会には、お店の子が勝手に参加して、「まれ」のつくったケーキが大評判という、大どんでん返し・・・・・というよりも、ご都合主義。
家族は大事。仕事よりも大事。
でも、仕事も、どうにかなっちゃうよ。
みんなが勝手にフォローしてくれて、大成功!
( ゜д゜)ポカーン
で、そのケーキの評判をききつけたお師匠さんがやってくるんだが、「相変わらず貧乏くさいセンスだ」と批判しつつ、「今までの、あいつの生活が、味に深みをつくっている」とか褒める始末。「家族を大事にしてきたことは決して無駄ではなく、それが肥やしになるんだよ」という、製作者からのメッセージなんでしょう。
育児と仕事に悩むお母さん方は、こんな理想論に納得するのかな・・・・・・。
この、ご都合主義は、中川翔子さんが東京に戻る際も発揮されていたなぁ。
歌手になりたかった中川翔子さんは、田舎の美容室で、雇われている身。
結婚を真剣に考えることもできるような男が出来たんだけど、彼は東京に行ってしまう。
彼のことは好き。でも、東京に行くと、かつての夢を思い出してしまい、つらい。
どうしよう?
・・・・・と悩んでいたら、中川翔子さんが歌っているシーンがネット上で評判になり、また夢を追えるし、男も諦めなくていいという結論に。
( ゜д゜)ポカーン
男の扱いが、ひど過ぎ。「愛しているなら、昔のわだかまりなんか無視して、男の胸に飛び込めよ」
とまでは言わないにしても、この子にとって、旦那って、なに?
話を戻します。
そもそも、「まれ」の環境って、仕事をする上で、物凄い恵まれている。
旦那の仕事を、「まれ」の母親が手伝っている。
家には、優しい爺さん婆さんが控えている。
同居している弟の妻は、専業主婦。
しかも「まれ」の同級生で、仲良し。「まれ」の仕事にも理解がある。
「まれ」の旦那は旦那で、妻の仕事を尊重している。
せいぜい、旦那の実家が、育児も仕事も手伝ってくれないくらいで、子育てをする上で、物凄い恵まれた環境なんだよね。
こんなだから、いくら「まれ」が苦労している、というシーンがあっても、「うーん、でもなぁ。全然、この子、幸せだよね」と思ってしまうよ。
で、ダメ人間の父親にも触れておかなくてはいけまい。
自分の夢を追ってきた結果として、人を傷つけてきたんだということに、遅ればせながら、気がついた父。
かつての部下に、「おまえの、いいかげんな経営で、おれは不幸になった。お前の家族も不幸にしてやる」と脅されて、失踪することに。
が、最終回間際で、案の定、「まれ」たちのもとに、戻ってくる。
・・・・・・アレ? あの、ちょっと頭のいっちゃった、かつての部下が家族に危害を加えるかもしれない、ということで、消えたんでしょ? 戻ってきたら、家族が危ないじゃん? 部下とは、仲直りしたの? ・・・・・・・・してないんかい。いいのかよ、それで!?
と思いながら、娘と父親の再会シーンを見ておりました。最終的には、主人公の「まれ」が、
「夢なんか追わなくていい。お父さんは、いるだけでいいの」
とか言って、仲直り。
( ゜д゜)ポカーン
なんだよ、その自己否定。お前、なんのために自分の仕事しているんだよ。
それなら、もう、パティシエ辞めちゃえよ。
旦那の家、手伝えって。
家族との時間を増やせ。
「自分の夢を追うのは当然だけど、でも、父親の夢は、ダメ」ってこと!?
なんか、もう最終回の、無理やりな結婚式が象徴しているように、泣かせよう、感動させようという押し売りが強引だったな、このドラマ。
澤野弘之さんの音楽は、「ガンダムUC」も「進撃の巨人」も良かったけど、このドラマには、壮大過ぎ。
その筋立てと相まって、なんだか悪い方向に作用していたなぁ。
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