主人公の「えみる」は、社会人一年生で、初めての仕事として福祉事務所に配属される。
頼れる先輩、有能な同輩、問題を抱えた受給者などなどと接していくうちに、えみるは、生活保護の実態を学んでいくのであった・・・・・。
ここらへんの、読者とペーペーの主人公が一緒になって、テーマを学んでいくというのは、お仕事漫画のお約束。
絵は、以前、スピリッツで連載していたころは、エロい漫画(「花園メリーゴーランド」)で、泥臭かったなぁ。
こちらは、すっきり見易くなっております。(前作は、敢えて泥臭くしていたのかもしれませんが)
展開も丁寧で分かり易い。
・・・・・題材が題材ですからね。丁寧に描かないと、えらいことになるからなぁ・・・・・・。
又聞きも含めて、実際に福祉事務所で、生活保護関連の仕事をしていた人のお話を聞いたことがあります。
ぶっちゃけ、「社会的な弱者を助けるというと綺麗に聞こえるけど、そんな甘い仕事じゃないないよ」てなことを述べておりました。
高校の同級生は、お金でもめたらしく(細かい理由は聞いてませんが、支給を打ち切ったようです)、その後、つきまとまわれて、心身に危害を加えられるのではないかと怯える生活が続いたと言っていたなぁ。
まぁ、その、どうしたって、「どうにもならんな」という人は、いるわけでして。
ネットやら雑誌やらですと、ここらへんの「どうにもならんな」という事例が取り上げられて、「ほーれ、生活保護受給者っていう奴等は、アレなんだよ」という論調になりがちなのは、人の世ですから致し方ないこと。
で、「健康で文化的な最低限度の生活」ですが、決して「絶対的な弱者 = 善」という書き方はしていないし、また一方で、「税金で食わしてもらっている人(生活保護受給者)が悪い」にも寄ることはない。
「いろいろな事情をもった人間」として、マンガらしく時にコミカルに、時に同情的に描いている。
丁寧に取材をしてつくられているのが読んでいて分かるタイプのマンガですので、実際のところ、「こりゃ、どうにもならん人だな」というエピソードも、たくさん集まっているんでしょうけど。
まぁそこらへんを書いても、ある種の人々の溜飲を下げるような内容にはなったとしても、建設的とは言い難いからねー。
で、「いろいろな事情をもった人間」に対して、生活保護というシステムは、所詮、システムなわけで。
万能ではなく、限界がある。
「いろいろな事情をもった人間」と「システムの限界」に、葛藤が生まれ、そこの物語の生まれる余地があるわけでして。
そこらへんが、うまーく融合されて話は展開するので、物語を楽しみつつ、生活保護についても自然と学べるようになっていました。
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