2018年2月12日月曜日

吉田大八「羊の木」



「羊の木」、見てきました。

観客の代理人として、なにも知らない主人公が出会う、いかにも訳ありなオーラをまとった六人の人間たち。
徐々に明かされる彼らの秘密と、そして加わる新たなる疑問。

時折、センセーショナルな場面がありつつも、基本的には意味深ではあるが穏やかな、はっきり言ってしまうと地味なシーンが続きますが、「これは撒き餌だな。こうやってエサをばらまいておいて、後半では一気に巨大な魚が釣り上がるんだ!」と思っていると、中盤の祭りにて、ようやく奇妙な人間たちが一堂に会する。

「これで、物語が動く!」と、心情的には前のめりになりましたが、結局、そこまで大きな事件は起きず。

また、同じような薄味展開。でも、きっと最後にはと期待していると、・・・・・・さすが、松田龍平さん、デビュー作の「御法度」では人間離れした美貌でしたが、直近の「散歩する侵略者」では、ついに人間を離れてしまいました。
今作では地球人に戻ってますが、しかし一般人とは思えない不気味なオーラを発し、背中だけしか映っていないのに、観客に得も言われぬ恐怖を味あわせてくれる。

他の演者にしても、適材適所、演技にも文句はない・・・・のだけれども、結局、六人の奇妙な人間たちの接触は、ほとんどなし。各々が個々で生きている。

田中泯さんの、ずばり彼のこれまでの生き様が分かる象徴的な登場シーンは、後に活かされることはなく。
また、優香さんにしても、「どうして、そういう関係になるの?」という伏線がなく、最終的には、彼女の言葉を、そのまま信じるしかないという、もやもや。
(田中泯さんと水澤紳吾さんのキャラは、一本にしようと思えば、出来たよなぁ・・・・。市川実日子さんにしても、物語の解釈の鍵となる「羊の木」の導き手ではあるのだが、それ以上でも、それ以下でもないか?)

そして、最大の不自然さは、主人公と松田龍平さんとの友情。
六人の人間を描かなくてはいけないこともあって、松田龍平さんからの一方的な友情も、最後の最後、主人公が松田龍平さんを説得する理由も(なぜ、逃げない!?)、いまいち説明不足で、ピンとこない。

群像劇は、登場人物たちの「交差する糸」に面白味を見出すか、人間や世界の多面性を表現することになると思うのだが、僕個人としては、どちらも物足りなかったなぁ・・・・。

つまらなかったわけではないのだが、吉田大八監督と言えば、どうしても、「桐島、部活やめるってよ」レベルを願ってしまうわけで、そうなると、今作、せっかくの前半の積み立てが、どうも活かしきれていたようには思えなかった。

by カエレバ

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