なんとなく手にした「野武士のグルメ」。
まぁ、簡単に言うと、コラで大人気の「孤独のグルメ」なんですが。(原作者も同じだしね)
不思議なマンガです。(「孤独」も「野武士」も、どちらとも)
大げさな事件もなく、グルメマンガでありながら、出てくるのは、普通の食事ばかり。
「なんてこった!」という大どんでん返しなオチもなく、「人生のちょっとした出来事を切り取りました」という感じ。
で、ミソとしては、「野武士のグルメ」というタイトルになっているけど、実は「野武士のグルメ」となっていない。
(「孤独のグルメ」はタイトル通り、主人公は、いつも一人でした)
主人公の香住武は、長く勤めた会社を定年退職したばかり。
どうやら、あまり出世はしなかった模様。
でも、ちゃんと結婚して、子供も自立している(ようだ)。健康には不安はないし、持ち家も構えている(借家かもしれないが、まぁ、定年後も家賃を気にする必要がないようだ)。
贅沢できるほどのお金はないけど、定年後も働かなくてはいけないこともなく、ふらっと思い付きで外食が出来るくらいの余裕はある。
そんな切迫感皆無の悠々自適な生活を送る彼ではあるけれども、・・・・・と言うよりは、悠々自適な生活を送る彼だからこそ、少々、物足りなさを感じる。
で、「野武士のように、荒々しく飯を食いたい!」という願望が生まれるのですが・・・・。
「野武士」と言えば、本来、無職。
仕官がかなわず、日々、食うや食わずが当たり前。
どうしたって、生活に余裕のある主人公が、野武士になれるわけもなく。
いくつかの短編で構成されたマンガですが、その殆どにおいて、主人公は野武士のように豪快に飯を喰らいたい! と思っても、そうはいかない現実を突きつけられます。
結局、この「野武士」っていうのは、主人公の若かりし頃の姿なんだよね。
(野武士が出てこないで、過去の回想で終わることもあるけど、それにしても「過去」つまりは、「若かりし頃」について語っているんだよね)
今はもう失ってしまった、あの当時の若々しさを、「まだ持っていると思いたい!」「もう一度感じたい!」という願いが、破綻して終わる。
破綻という表現は少々大げさですが・・・・。
でも、「あぁ、野武士のようにはいかないなぁ」(もう若くないな~)という微妙なペーソスが、仰々しくはなく、ほんわかに描かれているところが、この本の魅力なのかな。
漫画版 野武士のグルメ | ||||
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