ド定番なんだが
子供服メーカーのファミリアの創業者をモデルに、戦前・戦中・戦後の激動の時代を背景にして、女性の半生が描かれたNHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」。
設定だけ見ると、「あぁ、いつものね」というド定番が漂っていましたが、始まってみると、戦前・戦中が、あっという間に終わってしまう。
幼少期が一週間で終わってしまうのは、いつものことですが、少女期(学校時代)も、瞬殺レベル。
実の姉と男の取り合いという、「おいしいエピソード」も、そんなに深掘りされるわけでもなく。
「うーむ、なぜに?」という疑問だらけの展開でしたが、
1.朝の連続テレビ小説の定番の流れを断ち切りたかった。(前作「とと姉ちゃん」と時代にしろ、女性の起業家という設定にしろ、もろかぶりだから、独自性を求めたんだろうなぁ)
2.戦前戦中の苦労話よりも、戦後の成長を物語のメインにしたかった。(時代の要請として、「復興」話にしたかった)
というところかな? と、自分を納得させました。
まぁ、前半は、戦前との暮らしの落差や、戦地から旦那が戻ってくるかどうか、また、そんなお家に転がり込む心優しい間男(未満)、病弱だったり、苦しい生活を強いられる友人等々、それなりに見所はありました。
が、子供服事業が軌道に乗ったあたりから、物語は迷走。
最初は厳しかった父の実兄も、なんだか優しくなって、「オレは社長の器じゃない」と旦那が会社から逃げ出しておきながら、奥さんの会社でトップに就任とか、・・・・・・「?」という、おかしな点が見受けられるようになって、徐々にご都合主義が見え隠れ。
前半のリアルさから、明確に決別が見られたのは、市村正親さんが、クリスマスソングを堂々と歌ったあたりかな?
ファンサービスだったんだろうけど、・・・・・・謎演出だったなぁ。
で、中盤のメインエピソードになるのが、「娘との確執」
「仕事と家庭、どっちが大事なの?」は、これまた、ド定番なネタではありますが、まぁ、現代社会における働く女性の悩みだから、やっぱり入れておかないとね。
でも、そこに、「娘の初恋」が入ってきて、さらに恋した男は音楽で食っていくことを目指す「夢追い人」で、しかも友人の恋人でもある「三角関係」。
「べっぴん」(特別なお品)をつくるという物語だったはずなのに、どんどん逸れていくわけでして・・・・・・。
つまりは、水増し感がハンパない。
「うーむ」なわけです。
ここで時間稼ぎをするくらいなら、少女時代を重厚に描けば良かったのでは?
そこで出会った友人たちと、戦後になって一緒に事業を起こすわけですから、いくらでも伏線を入れることができたはずなのに・・・・・・。
以降も、子供たちが成人して会社への入社や結婚で揉めるのも、これまた「謎展開」。
自分が心血注いだ事業を、愛する子供が継ぎたいと熱心に訴えてくることを、邪険に払いのけるって、なんじゃそりゃ?
親友と言って差し支えない友人の子供、しかも東大出のイケメンと自分の愛娘が結婚するのに、なにや悩むことがあるんだか。(一人っ子同士で、どちらの家に入るか揉めるのは、まぁ分かるが)
そんな感じ。
せっかく四人の女性がメインで、
・ニュートラルな主人公
・病弱(マザコン気味の旦那)
・勝ち気(独身)
・意気地なし(旦那が高齢)
と、初期においてはある程度、役割があったのに、中盤以降は、みんな仲良し小好しで、互いに理解して衝突はなし。
主人公の提案はいつも「いいねー」と簡単に受け入れられて、ちょっとした悩みがあれば、雁首揃えて一緒に考えてあげる・・・・・・、あんまりハードな物語にしたくなかったという製作者側の意図は理解しつつも、だからと言って、これではヌルい。ヌルすぎ。
すっかり物語が風邪を引いてしまっているわけでして・・・・・。
配役の苦しさ
主人公を演じた芳根京子さんの演技は、悪くなかったんですけどね~
でも、撮影当時は、まだ十代。
物語においての「十代」は、ほとんど重視されなかったわけで、なら、もうちょっと上の女優さんを配置するべきだったのでは? という疑問が、中盤以降の中年から老年という加齢が進む度に、思わざる得ないわけで。
しかも、ご友人たちも、主人公に合わせてた年齢層の女優さんとなっているので、いくら老けメークをしたところで、やっぱり「うーん」となるのは仕方ないこと。(主人公の友人である土村芳さんは26才で、その息子役の古川雄輝さんは29才という、なんだ、この倒錯は・・・・・)
天下のNHKとは言え、いろいろと芸能事務所の意向を無視はできないのかねぇー、などと邪推したくなる配役だった・・・・・。
衣装は見事でした
良かった点は、衣装。
主人公と、その友人たちが着ている服は、時代を感じさせるテイストだけれども、現代人が見ても「かわいらしい」デザインになっていました。
日本の映画にしてもドラマにしても、戦後から現代の服装となると「とりあえず、雰囲気出てれば、いいでしょ?」といった感じで、イマイチなことが多いですが、今回は、素直に感心する出来栄えでした。
それだけに、戦後服飾史は無理でも、子供服の変遷から、時代の変化を感じさせるような演出があっても良かった気がするのだが・・・・・。
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