2017年4月13日木曜日

神山健治監督「ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜」



「ひるね姫」、見てきました。

なんか、変わった作品でした。

ストーリーを簡単に説明するのは、難しいタイプ。

幼い頃に母を亡くした少女が、いろいろな事件があって、「知らないワタシの物語」である、真相を知るというのがメインです。

ここまで省略してしまうと、「ありがちなお話」。
主人公にしても、お胸の強調や「萌え」要素はないですが、ミニのスカートを履いているのに、なぜかパンツは絶対に見えない制服姿の高校生という、定番アニメ少女ですし。


で、この主人公は、昨今のアニメらしく、2つの世界を行き来します。(「君の名は。」と同じですな。ついでに言えば、丁寧に田舎を描こうとしているのも、流行りなんでしょうか?)

現実ではない、もう一つの世界では、神山健治監督らしい個性が発揮。

魔法が存在する西洋風ファンタジーだけど、巨大な二足歩行ロボットもいるけど、テクノロジーのレベルは、1900年代前半くらいかな? とうい独特な世界観。
いろんな物をごった煮するのは、最近の映画の特徴ですからねー。


で、ネタバレ。

徐々に、この異世界が、母と祖父の確執から生まれたことが明かされる。
主人公の祖父は、日本を代表する自動車会社の創始者で、娘は、かつては、その会社を継承することを志していた。

しかし、「自動車の自動運転」への考え方の相違から、二人は袂を分かつ。


「自動車の自動運転」。
世界を大きく変えるであろう技術革新であることは間違いないわけで、物語に大きく関わっているのだから、もっと深掘りしても良かった気がするけどなぁ。

単に「こんな未来が待っているよね!」という近未来を観客に提示するアイテムであり、父親にとっては得体の知れない新技術&娘にとっては未来へのパスポートという世代間ギャップを顕著にする設定で終わっているのが、・・・・・うーむ。

攻殻の神山監督なら、もっと意味深なメッセージを込めることも出来た気もするんだけどねぇ。

まぁ、あんまり小難しくしたくなかったという配慮なのか?

そもそも、冒頭の「西洋風魔法ファンタジー」シーンなんか、子供向けを目指した感はあるよなぁ。

・・・・・・・なんだけれども、ラストの巨大ロボットの戦闘シーンは、ある程度の年齢のオタク向けで、・・・・・このごった煮は、うまくいったのかな? どうなんだ?


ごった煮と言えば、父娘の物語だと思ったら、父と母や、母と祖父に焦点が移ったりで。
「家族の物語」ということなのだろうけど、途中、幼馴染の大学生がサポートに入ってきて、良いんだか悪いんだか。


そもそも、「知らないワタシの物語」=「家族史」の解明に主眼が置かれているせいで、「主人公の成長は、ほぼなし」というのが、なんか物足りないような、神山監督の作風のような。(「東のエデン」も謎解きがメインで、登場人物の成長は、あんまなかったような気がするなぁ)

この物語「ひるね姫」の主人公って、特別、「不幸」を感じていない。
現状に満足している。

登場人物の現況を説明する冒頭のシーンでは、高三にしては、えらーく仲の良い父娘関係が描かれています。

亡き母の代わりに朝ごはんをつくり、父親との旅行を希望し、オヤジの友達たちとも仲良し・・・・・・、まぁ父子家庭だから「不幸」という描き方もどうかと思うので、「父娘二人で楽しくやっています」というのも、ある程度「正論」なのだが。

以降も、娘から父親への信頼は、絶対に揺らぐことがない。

この安定した関係というのは、現実であれば理想の親子像ではあるが、物語を平板にしてしまっている弊害でもあるわけで。

そんな、ハードにもソフトにも成りきれなかったけど、中道でもない不思議な作品でした。


by カエレバ

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