2015年6月21日日曜日

是枝裕和監督「海街diary」の感想



映画「海街ダイアリー」を見てきました。

原作は吉田秋生さん、監督は是枝裕和さん。

どの作品を見ても、ハズレがないお二人なので、つまらない作品が出来上がるわけはない。

とは思いつつも、映画と同時に発表された出演陣を見て、ちょっと違和感があったのは、正直なところ。

綾瀬はるかさんが、長女なんだ・・・・・。綾瀬さんのイメージって、ぽやぽやという感じ(おっぱいバレー)で、しっかりものの長女という印象はないけど。

長澤まさみさんの次女は、まぁ、いいか。

三女は夏帆さん。イメージとは違うな。

そして四女の広瀬すずさん。中学生の役をやらせるのは、ちょっと無理がないか?


が、実際に見てみたら、杞憂でした。

時にヒステリックだけれども、家の大黒柱として生真面目な長女を、綾瀬はるかさんが、しっかり演じてました。

夏帆さんにしても、外見は似てないにしても、原作通り、コメディーリリーフ的な立ち位置を確保。

四女も、「大人過ぎない? もしかして、原作の中学生という設定から、高校生に変えるの?」と思っていましたが、ちゃんと中学生でした。

さすが是枝監督。
綾瀬はるかさん、長澤まさみさんの共演という話題作りで終わってはいませんでした。


二時間の映画で、美人さんたちが、ず~っと出ずっぱり。
長澤まさみさんは冒頭からサービスシーン。
物語の展開も早くて、絵も綺麗で、見ていて退屈を感じることはなく。

「海街ダイアリー」を映像化するなら、是枝監督が最適だろうなぁとは思っていましたが、まさしく、期待通り。

「厳しい現実と、鎌倉の優しい人たち」が描かれている漫画ですが、その雰囲気が、映画においてもしっかりと出ていました。


が、僕は原作を読んでいるので、ある程度、「こういうことなんだな、今」というのが分かるのですが、未見の人は、どうなんだろうなぁと思わないでも。


徐々にネタバレなのですが、綾瀬はるかさんを筆頭に三姉妹がいて、父親は外に女をつくって家を出て行ってしまった。で、お母さんも、同じく外に男ができて、今は北海道。三姉妹は、おばあちゃんに育てられたという設定。

で、四女は、お父さんが新しい奥様とつくった子。
でも、新しいお母さんは病死。
お父さんは再婚するものの、また病死。

四女は血のつながらない母親のもとに残されることに。

両親に捨てられた三姉妹からすると、両親と死別した四女のの境遇には、十分すぎるくらいに同情できる。

だから、腹違いの妹を放ってはおけず、引き取ることに。

しかし、漫画で読んでいるときも、ちょっと無理がある家庭環境な気がするなーと思っていたけど、・・・・・二時間しかない映画だと、さらに、「妙に複雑だなー。リアリティがあるとも、言い難いし」という違和感を持つ人もいるんじゃないかな?


で、ストーリーは基本、原作通り。

なんだけど、次女が男と別れるシーンは、アレだと、「えっ、なにが起きたの?」と、原作未読の観客は思ったんじゃないかな?

ここらへん、もうちょっとスッパリ切り落としても問題はなかったような気がするけど、まぁーねー、原作通りじゃないと、怒る人もいるからな~。

その割には、会社の上司と次女の関係には、あんまり踏み込まなかったね。
けっこう、いっぱいいっぱいエピソードを詰め込んだから、こっちは敢えて省いたか・・・・。


そういうところを突っ込んだらキリがないんですけどね。


映画の中で、何度も登場する「梅酒」。
この家の「継承」を象徴する存在。(だから、四女が、自分の心の内を打ち明ける際には、この「梅酒」が重要な役割を負ってます)

昔もつくっていたし、今もつくっている。おばあさんがつくり、三姉妹でつくり、今は四姉妹でつくっている。

長女は、自分たちを捨てた実母が嫌いだけど、そのわだかまりを捨てて(押し殺して)、おばあさんのつくってくれた梅酒を渡す。

いろいろ思うところはあり、納得はしていないのだろうけど、自分も大人になって(不倫もして)、許せないにしても、自らの母親であることは認めるシーン。

普通ならば祖母から母へ、母から娘に継承されるべきところを、祖母から一足飛びに孫に、そこから繰り上がって母にいくところが、この物語らしいです。


また何気なく食べた「しらす丼」から、四女が父のルーツを感じたり。

他にも、父が釣り好きだったことを知った、同じく釣りをする三女が嬉しそうな表情をしたり、まぁ、そこかしこに、この「継承」というものを匂わせています。


この映画は、冒頭が葬式で、最後も葬式で締められます。

「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」でして、四姉妹の親しくしていたおばちゃんが死に、大事にしていた彼女の食堂は勘当されていた(ロクデナシの)弟に取られてしまう。

でも、その食堂の名物料理は、他の人間に継承されていく。

そんな事実を知り、「四女は、父が私達に残してくれた宝物だったんだ」ということに気がついて、・・・・というよりは、そう考えることで、父を許すことが出来て、ハッピーエンド。


原作には、もっと多くのエピソードがあります。
そんな中で、「家族や親しい人の死と、今を一緒に生きている人間」という軸で、エピソードを取捨選択し、まとめたんでしょうね。

綺麗に出来上がった! とは思いつつ、くどいですが、原作未読の観客は、大丈夫だったのかな? と、ちょっとだけ心配。


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