2014年10月11日土曜日

東村アキコ「主に泣いてます 1-5」読了


東村アキコさんの「主に泣いてます」の全10巻のうち、5巻まで読了。


容赦無いギャグ漫画だな・・・・・。


ストーリーは、超絶美人の泉さんを巡る物語。

あまりの美麗&ナイスバディで、既婚未婚、老若を問わず、あらゆる男が一瞬で惚れてしまうという特異(?)体質。

しかし、本人の性格は控え目で、そんな自分を嫌っている。
(そういう、不幸が全身からにじみ出ている女性というのは、また男にモテたりする)


妹の新郎までも惚れさせてしまうという事件に絶望して、投身自殺しようとしているところを美大の教師で、絵描きでもある青山先生に救われものの、彼は既婚者であった。

で、そんな状況に、主人公の赤松君(青山先生のお弟子)は振り回されて・・・・・という感じでストーリーは進んでいきます。


美大生が主人公で、ハイテンションなギャグ炸裂なので、ちょっとだけ「ハチミツとクローバー」を思い出させる面もあるけど、アッチは、ストーリーがメインでギャグはサブ。

こっちは、ギャグがメインでストーリーがサブ・・・・と表現すると、ちょっと違っているかな。

正確には、SFにおいては、空想的な設定を利用することで、逆に現実世界が浮き上がってくるように、ギャグ漫画を利用して、「薄幸な美人」の救済を描いている、という感じ。


ちょっと不思議なのは、なんで、泉さんは、青山先生には惚れちゃったのかね?

一応、彼の絵の中にいる自分を見て、自己肯定ができた、とはなっているけど。

青山先生は、女の敵というヤツで、綺麗な女性を見れば、手当たり次第にちょっかいを出すタイプ。
顔はいいけど、男としては、かなり難のあるタイプ。

まぁ現実においても、そういうタイプはモテたりしますが。

でも、泉さんは、他の男から逃げておきながら、なんで青山先生みたいな男に飛び込んじゃったかね・・・・・・。


強いて理由を探すと、青山先生は本気で泉さんに惚れることがないからか?

惚れないからこそ好きなのであって、惚れてしまうと、その時点で終わってしまう、というのは、リアルでもあるもんな。


マンガは、面白いことは面白い。

けど、冒頭で「容赦無いギャグ漫画」と書いたのは、作者が徹底的に冷めている。

泉さんと青山先生との不倫も、美しく描こうとすれば美しくなるけど、そうはしない。

泉さんが主人公なのだから、タイトル通りに、ただただ泣いている悲劇的な側面ばかりクローズアップして、悲しい物語にしようと思えばできるけど、それもない。

ドロドロ&グチョグチョ、人間の負の側面を強調してやるぜー、なんてこともない。

不倫と言えども、単なる「ネタ」にしている。


他にも、泉さんの親友の「つねちゃん」が主人公の赤松君を好きだけど、やはり、これも手心を加えることなく、作者によって、「ネタ」にされてしまう。

もちろんのこと、泉さんに惚れてしまう男たちは、ぜーんぶ、「ネタ」。


読んでいて、たまに引っかかるのは、その酷薄さ。

つまりは、愛についての作者の突き放し、というかルサンチマンが、この作品の底流にあるんだろうな。

そこが、「あんまりだよ・・・・」と思うこともあるけど、ギャグ漫画だから、そこまでやるからこそ、面白いんだけどね・・・・・・。


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by カエレバ

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