2017年7月10日月曜日

メルギブな映画「ハクソー・リッジ」




前情報は意図的に拾わないようにしているので、「沖縄戦」を扱った映画だということは、露知らず。

映画「ハクソー・リッジ」は沖縄の地名。でも宣伝文句に「沖縄」の言葉はゼロ…なぜ?

上記の記事で、初めて知りました。
僕個人としては、沖縄が舞台であることで、視聴欲(?)を下げるよりも、上がったと思います。
なので、敢えて「隠している」のは、あんま意味ないよなぁ~とは感じますが、一方で、「沖縄」を前面に押し出せば、それはそれで本土だけではなく、沖縄の県民感情をも逆撫でするおそれもあるわけで、まぁーねー、変な政治闘争に巻き込まれるのもアホらしいしよね・・・・・・。


で、映画の感想。

物語序盤、出征前の恋人とのロマンスなんか、当たり前過ぎて、なんか既視感があるなぁとか、中盤からの訓練シーンとか、ちょっと「フルメタル・ジャケット」を想起させるなぁとか、丁寧に描かれているけれども、正直、「!」という驚きはなく、「まぁまぁこんなもんすね」という程度で進んでいくのだが、やはり白眉はハクソー・リッジでの戦闘シーン。

「パッション」キリストの磔刑シーンで観客も死亡 米

観客を殺す映画をつくったメル・ギブソンが描くだけあって、とにかく容赦がない。

善も悪もなく、勇敢も臆病もなく、憎悪もイデオロギーもなく、ただただ目の前の「敵」を屠る為に前進するアメリカ軍と、それを必死に食い止めようとする日本軍の姿は、単に「雄々しい」「勇壮」なるイカツイ言葉の範疇には収まらない、神の恩寵から見放された凄惨な地獄絵。

このシーンがあって、後の主人公の「気づき」(宗教的な使命感に突き動かされているにしても「悟り」ではないよな?)につながるわけで、まぁ、重要な、意味ある「地獄絵」ではあるのだけれども・・・・・・・。


以下、ちょっとネタバレ。

ハクソー・リッジ制圧後の翌朝。
日本軍の逆襲があるのだが、どうにも元気過ぎるような気がするのは、僕だけ?
まぁ、沖縄戦に限らず、特別、戦争の知識があるわけではないのですが。

で、日本軍の反抗に手を焼いた米軍は、一旦撤退 → 洋上からの艦砲射撃となり、主人公は、取り残された米軍兵士の救出に向かうという流れ。

画面上では、どっかんどっかん戦艦の弾が命中して、火柱&土煙があがっているところに果敢に主人公が突入しているが、いくらなんでも自殺行為。

そりゃ、まぁ、一発当たれば即死という限界な状況を再現したかったのだろうけど、その「絵」では、あまりにも無謀。

そう思えてくると、ハクソー・リッジへの最初の突入シーンだって、地獄の惨状ではあったのだろうけど、兵士が安易に立ち上がって、簡単に弾が命中するというシーンが多くて、「もうちょっと慎重に侵攻しただろ、オイ」とツッコミを覚えるのだが、さて、みなさんは、どうでしょう?

二時間という限定された中での、圧縮した表現であることは、まぁ、分からんでもないのですが・・・・。


で、自らの命を顧みないで、仲間の兵士たちを孤軍奮闘で救出する様は、感動的であるものの、やっぱり、ちょっと「盛り過ぎ?」と思わないでも。


特に、訓練時に主人公をさんざんに痛めつけた軍曹を救うのは、お約束だけど、感動的なシーン。

主人公の高潔さのあらわれなのだが、・・・・・・ちょうど落ち武者狩りをしている日本軍にも見つけられ、その窮地を脱出する為に、主人公は鬼軍曹を引っ張り、一方の鬼軍曹は日本軍に銃をぶっ放すわけで、まぁ、危機的な状況を描写したかったのだろうけど、うーむ。
前半の訓練シーンにおいて提示された、「戦場という極限状況において、自らだけが手を汚すことを忌避するのは、妥当なりや?」という問題について、結局、「奇妙な役割分担とすることでOK」という答えで、いいの? と、ちょっとモヤモヤ。


「極限状況における信仰」という面では、今年は、「沈黙」がありました。

マーティン・スコセッシ監督「沈黙 -サイレンス-」

その作品に比べると、「ハクソー・リッジ」は、分かり易いというか、俗っぽいというか、最終的には主人公は戦友たちから認められ、怪我をして地上に降ろされるシーンは、宗教画的な光あふれる演出で、「貫いた信仰心は無駄にはならない」という単純な大団円に落ち着いたあたりは、鑑賞後に変な重みを残さないものの、まぁそれだけに軽いなぁ~と思わないでも。

好き好きなんでしょうけど。


ここ最近で、関連する映画と言えば、こんな感じでしょうか?

戦場における「神」の問題、映画「フューリー」。
「ブラピの最高傑作」という宣伝文句の「フューリー」を見てきました

戦争が生み出す「英雄」という悲劇、「アメリカン・スナイパー」。
クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」の感想

Hacksaw Ridge [Blu-ray]
by カエレバ














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