精神疾患を患って休職中のサンドラ。
ある日、職場から解雇と告げられる。
パニックになるサンドラ。
社長と直談判し、同僚たちの過半数が、ボーナスを諦めたら解雇は撤回するという約束を得る。
自らの仕事を確保する為に、サンドラは、同僚たちを説得する為に歩き回るのであった。
てな粗筋。
現代の「蟹工船」みたいなお話か? という予想を持って、見に行きました。
でも、予告編の動画を見ると分かるように、別に、主人公の一家って、貧乏臭くはないんだよね。
子供には携帯ゲーム機があって、家にはノートパソコンもある。
自家用車もあって、携帯はスマートフォン。
家族の身なりも、普通に小奇麗。
子供部屋が映るんだけど、今時な感じ。
裕福には見えないけど、まぁ、それなりって感じ。
薄給だけど、旦那も、ちゃんと働いている。
だから、サンドラが失職しても、「食うに困る」ということはない。
それは、同僚たちにも言えることで、それなりに生活は大変だけれども、「食うや食わず」という人は、ほとんどいない。
まぁ強いてあげると、ドレッドヘヤーの黒人の若者は、移民なのか、移民第二世代くらいで、しかも契約社員。他の同僚よりも、経済的にはなかなか大変そう。
でありながら、彼がキリスト教の博愛精神(THE 西洋的価値観)でもって、サンドラの復職に賛成するというのが、印象的でしたが。
この「赤貧洗うが如し」という状況ではない、というところが、現代的なんだろうなぁ。
あくまでも、この物語でサンドラ(や夫)が恐れているのは、「今の生活を維持できない」ということ。
もちろん、探そうと思えば、先進国であっても、「貧困という言葉でも生ぬるい」という苦境の人間はいるでしょう。
が、そういう人や家庭を取り上げれば、問題提起にはなっては、現代的な物語とは成り難い。
だから、中流・・・・よりは、ちょっと下? くらいの、設定になったんだろうなぁ。
この物語の土台である、「自分のボーナスか、同僚の雇用の維持か」を天秤にかけさせるようなシチュエーションが、「現実にある?」とは、思ってしまいます。
が、まるで決定権が社員にあるかのようにして、結局は、会社の意図通りに物事を運ばせるというのが、・・・・・・・自己責任論の罠という感じで、現代的。
ブラック企業批判に対する、さらなる批判として、「嫌なら辞めれば?」という意見があります。
しかし、みんながみんな、(物質的にも経済的にも)強い人間ではない。
ある種の環境下に置かれると、自由意志というものは脆くも崩れ去るわけでして。
で、ネタバレですが、最終的には、サンドラは過半数を獲得することはできない。
が、ギリギリまで賛同者を得ることができたので、社長は、「なかなか大したものだ」と言って、社員へボーナスは出すし、復職もOKと言う。
ただ、契約社員の契約が切れて、空きが出来てからの雇用だと言うわけで、それは受け入れられないと断る。
こうして、大騒ぎの末に馘首でしたというオチ。
サンドラは、同僚たちの説得の最中に、よく「私が選んだわけではない」という言葉を口にするんだけれども、まぁ確かに、その通りで。
最終的には、自分の意思を貫き通した、つまりは自由意志を取り戻した、だから、晴れ晴れとした表情で、さらには頼り切っていた薬からも解放されたということなんだろうなぁ。
それにしても、不思議だったのは、サンドラのうつ病の理由が語られないこと。
旦那は頼りないし、給料は奥様より安い。けど、愛情はしっかりと持っている。(うつ病の奥様に、同僚を説得して回れだなんて、けっこう酷い旦那だけど・・・・・)
子供も、まぁ、普通の子のようです。
家族には問題がないから、やっぱり仕事関係なの?
でも、仕事と病気について、関連して述べられることはなく。
うーん?
まぁ「うつ病は心の風邪」などとも言われますから、発症の原因を、特別なものにしたくなかったのかな?
仮に、心因が仕事であったとすれば、まぁ、物語の主旨が変わってくるもんな。
なら、「怪我」とか内科の「病気」でいいような気がするけど、・・・・・・そうすると、物語として、盛り上がりに欠ける&現代性が損なわれるというところか?
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