「ハリウッドも、ネタ切れね」
というお話は、・・・・・・もう○十年以上前から言われてますかね?
ヒット作の続編、過去の名作のリメイク、海外作品の翻案、複数の主人公のクロスオーバー・・・・・。
まぁねー、もう物語の手法も種切れだよね・・・・・。
そんな感じでありながら、相変わらずヒット作を作り続けているのですから、まぁ、さすがアメリカなんですが。
ハリウッドはネタ切れでも、世界は広いものです。
まだまだ新しい切り口というものは存在するのだなぁ、と思わされたのが「ザ・トライブ」でした。
(見た後に知ったのですが、ウクライナの映画。ロシアと喧嘩している国だけあって、覚悟が違うのが画面からビンビン伝わってきました)
冒頭で「字幕はないよ~」という説明がありまして、以降、本当にまったくなし。
大自然をテーマにしたドキュメンタリーというのであれば、それは問題ないでしょう。
でも、この映画では、聾学校内で繰り広げられる、少年少女たちの心の動きを扱っている。
そういう繊細なものにもかかわらず、字幕や解説といった言葉による説明は皆無。
それで二時間成立させているのだから、「こんなこと出来るんだな・・・・」と唖然とさせられました。
(直近で思い出すのは、ピクサーの「ウォーリー」かな。あちらは、前半は言葉がなく進んだけど)
ストーリー自体は、そんなに複雑な筋ではない。
(言葉で説明できないのだから、そりゃ、仕方ないでしょうが)
まぁ、異国の人間が前情報なしで見ても、ギリギリ理解できるラインに設定されています。
仮に、登場人物たちが聾唖者ではなく、健常者(←なんだか微妙な言葉だね)であっても、成り立つ話だと思います。
だからといって、見ている最中に、「あぁこういうオチが待っているのね」と安易に予測させるような陳腐なものではない。
全編、場面を盛り上げたり、登場人物の心情を代弁してくれるような音楽はない。
映画の中の人達は、手話を駆使して会話。それに対して、字幕はない。
もちろん発話などは、まったくない。(多少の悲鳴くらいは、ありますが)
でも、手話というものが、こんなにも豊かに感情表現をすることができるのだと、初めて知りました。
まったく理解できない外国語を話されても、その表情や声調から喜怒哀楽だけは理解できるように、手話であっても同じものなんですね。
見終わって、冷静に考えると、この映画の時代設定って、2010年代だよね?
ノートパソコンは、決して分厚いものではないし。
でも、携帯は出てこない。
「異国の話だから」というので、なんとなく見過ごしてしまうけど、そんなに豊かではないウクライナでも、全員が携帯を持っていないわけがない。(まして、若い子が)
でも、映画では一度も画面に登場しない。
携帯が出てきてしまうと、発話というコミュニケーション手段を排除した意味がなくなってしまうからなんだろうなぁ。
まぁ、ここらへんは、物語の嘘ということで。
そして、監督は、「手話の感情表現と登場人物の演技力だけで、物語が成り立つ! それくらいの理解力は観客は持ち得ているはず!!」という賭けをして、そして、見事に勝ったわけだ。
いろいろと考えさせられる映画でした。
何遍も言っているように、字幕はない。言葉による説明はない。でも、物語の中では、登場人物たちは手話を使って豊かに会話している。
特に、映画の見始めにおいては、置いてきぼりをくらったかのような感情に襲われました。
自分は、この映画から排除されているなぁ・・・・とも。
でも、「あぁ、これって、聾唖者が普段感じていることなのかも」と考えさせられました。
そう書いてしまうと、「聾唖者は、現代社会においても、まだまだ、こんなに不幸な存在なのです」という映画だと思う人もいるでしょうが、別に、そういうことを訴えているわけではない。(少なくとも、分かり易く訴えてはいない)
前述の通り、「聾唖者」という設定を抜きにしても成立する、アウトロー・不良の映画でもある。
登場人物たちの多くは、自らの欲望の赴くままに、ある意味「自由」に生きている。
と、書いてしまうと、今度は、「聾唖者であっても、こんなに瑞々しい青春をおくっているんだ!」と捉えてしまう人がいるでしょうが、そういう青春映画でもない。
主人公を含めて、彼らの生き方に対して、安易に善悪の評価を下すようなことないです。
日本の不良映画・漫画にあるように、爽快感はない。
「こういうことは、してはいけませんよ」という説教臭さもない。
徹底的にドライ。
カメラは、登場人物に対して、距離を詰めることも、離れることもない。
そもそも、言葉による説明がないことで、手話を解しない観客は、否応なく彼らから突き放されてしまうわけでして。
・・・・・・・・・・でも、不思議なもので、突き放されているからこそ、この映画では「痛み」というものが、如実に伝わってくるんだよね。
(以下、ネタバレですが)
言葉なく殴り合い、トラックによる轢死、悲鳴を上げるができないレイプ等々、この映画では、暴力が溢れているのだが、そこに「音」はない。
でも、見る側が、彼らの手話の内容を絶えず想像によって始終補完しているせいのか、この「痛み」も、必要以上に想像してしまうようで。
特に、堕胎のシーンは最悪だった。
今まで見た映画で、このシーン以上に、「直視に耐えない」と思わせたものはないよ・・・・・。
てな感じで、とにかく、なかなか得難い体験をさせてくれる映画でした。
あと、まぁ下世話な話ですが、これ、DVDやBlu-rayだと、字幕出るんじゃないかな?
映画館で見た人でも、また楽しめます♪ みたいな売り方をするのではないだろうかと邪推してしまいますが、さて。
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