「ソラニン」「うみべの女の子」を読んで、すっかり「浅野いにお」さんのファンになってしまいました。
以前の感想。
■浅野いにお「うみべの女の子」
■浅野いにお「ソラニン」
■山本直樹×浅野いにお「対談 マンガって、めんどくさい」
で、初期(と言っても、浅野さんは、まだまだ若いですが)の作品である「素晴らしい世界」を読んでみたのですが・・・・・、うーん、若いね、作品が。
まぁ、でも、あきらかに、この作品が土台になって、「ソラニン」が生まれたのが、よく分かります。
夢見るバンドマンの話しが何度も出てくるし。
そもそも、作品全体をつらぬく、「変化と、それを恐れる」というモチーフが、「ソラニン」だもんね。
で、「素晴らしい世界」ですが、短編集。
いろいろな年代の老若男女が主人公ですが、・・・・・基本、若い子が多いかな?
連作になっていて、登場人物たちの住んでいる町は共通している。
短編をまたがって登場する人物もいる。
それぞれのお話の主人公は、種々雑多の悩みを抱えている。
暴力的であったり、まったりだったり、絶望的であったりするけど、おしなべて閉塞感のある状況に置かれている。
で、いろいろあって、最終的には、その状況が完全に解決されるわけではないけど、ほのかに希望があるようなラストで終わる。
・・・・・・正直、ワンパターンではありますね。
僕も若ければ、この絶望と希望のコントラストに惑溺できたのだろうけど、年を取ると、ダメね~。
例えば第一話。
トガさんという大学を中退したばかりの女性が飼っているカメの視点から始まります。
カメは、眠っているトガさんに対して、
ホントに気持ち よさそうに寝るぜ、 アンタは。なんてことを思います。
どんな夢 見てんだが……
でも、いつまでも 寝てるわけには
いかねぇぜ。そうだろ?
トガさん。
で、まぁいろいろあって、トガさんの住んでいるアパートは全焼。もちろん、ペットのカメは焼死。
でも、トガさんは、カメは甲羅を残して逃げたに違いないと妄想する。
その妄想内において、カメが述べる言葉。
人生には 前に進まなきゃ ならない時がある。この、言葉に促されるようにして、大学も辞めて、アパートも焼けたけど、バンドで頑張っていこうと志して、物語は終わります。
なりふり かまわず 進むんだ。
たとえ 間違ってたって 俺は後悔 しないぜ。
そうだろ トガさん。
「変わらなきゃ!」
↓
「でも、恐い」
↓
「でも、やっぱり変わらないと!」
第一話での、この流れが、基本的に、全ての短編で繰り返されます。
・・・・・が、中には、
何気ない会話。となって、変化がなく終わる話もあるんですが・・・・・、これが、まぁ、結局伏線でして。
別に何も変わってない。
でも今は、
変わってないことが
少しうれしい。
最終話では、上の感想をもらした女の子は、流行りの奇病にやられて、一切の感情をなくしたような、生きるだけの人形になってしまう。
この病気の設定が、あまりにも唐突、かつ荒唐無稽で、「うーん、まだまだ若いね」と、やはり思わざる得ないのですが、・・・・・それは、さておき。
作品の意図としては、変化を拒否した人間への罰なのかな、この病気は。
僕には、そう感じましたが、さて、他の人は、どう思うのかな?
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