2015年8月13日木曜日

オリジナル版「日本のいちばん長い日」の感想

今さらながら、1967年に公開された「日本のいちばん長い日」を見てみました。

白黒で、特別派手なシーンがあるわけではないので、今の目から見ると、まるでドキュメンタリー。

昭和天皇によって終戦の聖断が下され、玉音放送の録音、そして放送という過程で起こった事件が描かれております。

宮城事件 wiki
佐々木武雄 wiki
厚木航空隊事件 wiki

いろんな事件と言っても、敗戦という事実を認めることのできない軍部の反発が中心。

群像劇ではあるけど、主人公(中心)は三船敏郎演じるところの「阿南陸軍大臣」になるのかな?
阿南惟幾 wiki

白黒の画面に、三船敏郎の大きな目が映えるね。


内閣では「降伏勧告受諾やむ無し」という雰囲気がつくられつつあるが、陸軍では継戦するべしという強硬論が多数。

敗戦を受け入れるとなれば、ドイツでナチスが追放されたように、戦争を主導した軍部、中でも陸軍が冷や飯どころか、臭い飯を食わされることは確実なわけで。

クーデターを起こして権力を奪取したり、辞職することで内閣を崩壊に持ち込むことは可能。

が、天皇陛下の聖断は既に下されたわけで、しかも、陸軍や海軍に自ら出向いて説得にあたる覚悟まで持っている。
仮に現内閣を倒すとなれば、そのお心に背く結果になるわけで・・・・・。


陸軍トップとしての阿南陸軍大臣が苦悩が随所に描かれるのと同時に、一部の将校は、一発逆転の為に不穏な策動をする。

この宮城事件を起こす面々が、「至誠尽忠」にも見える。
「国体護持」を持ち出して、天皇陛下の為にクーデターが必要だ! と主張しているのだけれども、・・・・・、まぁしかし、単に保身、組織防衛に走っているだけにも見える。

日中戦争、太平洋戦争は陸軍が中心になって始め、また主導してきた。
「敗戦」となれば、連合国からの処罰とは別に、能力としての「責任」も、当然問われる訳で。
そういう現実を受け入れられない、独善的なエリートの弱さにも見える。


内閣では、原爆が二つも落ちて、沖縄も民衆を巻き込んで占領、ソ連も参戦と、継戦が不可能と分析している。

が、陸軍では、本土決戦に持ち込んで、相手側も被害甚大となれば、有利な講和条件が引き出せるのではないかと考えている・・・・・のだけど、そんなの幻想よね。

映画「ヒットラー 最後の12日間」でも描かれていたけど、最終局面において指導部は、現実を直視することは出来ず、幻想に逃げてしまっている。

「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ」
機動警察パトレイバー2 the Movie/全台詞


その幻想が狂気にまで昇華されていたのが、宮城事件に呼応した佐々木武雄。

演技が秀逸でね。
死神博士の天本英世さんが演じているのですが、理屈云々などはなく、完全に狂っている。

ラストの宮城事件を起こした二人が、映画のラストにおいて決起を促すビラを撒いてシーンも、その狂気に通じるところ。


それに比べて、最終的には割腹自殺する阿南大臣は、冷静であり、理性的なまま従容として死んでいく(史実はどうなのか分かりませんが)。

これが製作者の意図なんだろうなぁ。
軍部のロマンチシズムを描きつつも、過剰に美しくはしなかったさじ加減が、絶妙でした。


さて、オリジナル版では、天皇陛下が、はっきり映らないようにしている。
「畏れ多い」のと、「天上人」という演出なんだろうなぁ。

リメイク版では、本木雅弘さんが昭和天皇を演じており、前面に押し出される模様。

数百年前ならともかく、近現代の天皇となると、どう描いても、批判にさらされる危険がつきまとう負け戦に引きずり込まれる可能性が高いですが、さて、どんな風に描かれているのかな~?

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