「スポットライト」を見てきました。
第88回アカデミー賞にて、作品賞&脚本賞を受賞しているので、つまらんわけないだろうなぁとは思っていたけど、安定の面白さ。
ハリウッド映画の層の厚さは、まぁ、すごいね。
概要
強引にジャンル分けすると、「大統領の陰謀」と同じタイプです。
報道記者たちが、どのようにしてスクープをものにしたかを、なぞるお話。
で、そのスクープ対象なのだが、カトリック教会による児童の性的虐待事件。
カトリック教会の性的虐待事件 - Wikipedia。
世界的(この場合の世界は「欧米」だが)な大スクープとして報道されたのですが、日本では知る人ぞ知る程度ですかね?
その報道の端緒となった日刊紙「ボストン・グローブ」の取材開始から、スクープ記事が掲載された初日までの過程が描かれています。
冒頭からの流れ
「上手だな」と思ったのは、物語の始まり。
「アオイオノオ」をハリウッドで実写化するとしたら、「庵野秀明さんは、この人に演じさせるしかない」という編集長が就任したところから。(庵野さんのように朴訥なしゃべり方ではないです)
この新編集長というのが、地元ボストンの出身ではない。
言うなれば落下傘候補でして、上の都合で配属された人。
しかも、ユダヤ人でユダヤ教徒。
しがらみのない人間なんだよね。
そんな彼が、一神父による児童の性的虐待事件に興味を持つ。
周囲は、あまり乗り気ではない中、根深い問題があるのではないかと、特捜班である「スポットライト」チームに、取材を依頼する。
ネタバレ。
最終的には、多くの問題神父が存在していたのに、教会は、その都度、事件をもみ消してしまっていたことが露呈するのだが・・・・・。
この作品、「児童の性的虐待」という、欧米では非常にナーバスな問題。
(■2歳の息子と風呂に入った父親が大炎上、児童虐待だと厳しい批判も _ ユルクヤル、外国人から見た世界)
センセーショナルな組み立ても出来たのだろうけど、虐待されているシーンを描写するようなことはしない。
被害者も、成人した人間のみ登場。
また加害者にして、極端なモンスターには描いていない。(なんだか不気味な神父が一人だけ登場するけど)
基本的には、取材班と取材対象者との描写(演技)で、問題の重大性をあぶり出していく。(そういう脚本と演技力が、まぁ、さすがハリウッドなんだが)
そして、性的虐待事件を扱いつつも、もう一つの問題をあぶり出していくわけで、それは、新聞社には、何度なく被害者や事件の関係者からのリークや依頼がありながら、黙殺していた事実。
膨大な被害者がいて、よくよく調べてみると、異常なことが溢れていたはずなのに、教会という地域の良心・道徳を扱う場所が、まさか児童を虐待するような神父を大量に抱えているわけがないという常識(偏見)にとらわれてしまい、結果、見過ごしてしまっていた。
地域とはまったく縁もゆかりもない、庵野秀明監督似の新編集長が赴任するまで、事件に「スポットライト」が当たることはなかったわけでして、この冒頭からラストまでの流れが、・・・・・・上手よね~。
で、まぁ、事件を追っている中で、教会からの圧力があったり、911が発生してスタッフを割かなくてはいけなかったり、他社に出し抜かれるのではないかという疑心暗鬼で記事の発表時期をめぐって内輪揉めが発生したりと、・・・・・・真摯に主題に向き合っているけど、無理のない起伏をつくって、観客を退屈させないようにしているのは、ホント、上手よね~。
スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪 | ||||
|
0 件のコメント:
コメントを投稿