2016年5月3日火曜日

マンガ大賞受賞「ゴールデンカムイ」1巻から6巻までの感想


以前、ラジオで伊集院光さんが褒めていて、先日、2016年のマンガ大賞を受賞した「ゴールデンカムイ」。

ならばと、読んでみました。

・・・・・・率直な感想としては、もっと「重い」作品だと思っていました。

が、作者の絵柄が明るいおかげで(つまり劇画調ではない、という意味です)、連続殺人犯だってコミカルに。
殺し合いのシーンも残酷には感じられず、作品全体としては、「軽い」というわけではないけど、サクッと読めます。

ザックリとした粗筋


「不死身の杉元」と呼ばれる日露戦争帰りの男が主人公。
かつての想い人であり、親友の妻の眼病を治すには、莫大なお金が必要。
北海道で一攫千金を目指し、砂金掘りをやっている。

が、もちろん、素人が手を出して、簡単に金が見つかる訳もなく。
そんな彼の耳に、アイヌが秘蔵した金塊の噂を耳にする。

で、まぁ、ひょんなことから知りあったアイヌの少女アシㇼパと一緒に、その金塊を探すことに。


しかし、噂を知っているのは、杉元だけではなかった。

北海道を守る第七師団と、幕末からの生き残りである土方歳三たちも、金塊を狙っていた・・・・・。

反近代


で、まぁ、最近のヒット漫画ですから、絵は綺麗で見易いのは、もはや標準。
「金塊の謎解き」「奪い合うアクション」「ちょっとしたギャグ」「動物ネタ」などが、散りばめられていて、言うなれば「暗殺教室」と同じで、幕の内弁当風。
「グルメ」「料理」すら網羅しているのだが、意外にお色気はない。(その割に、チ○コやウ○コなど下の話題は多いな・・・・・。)

アクションにしても、格闘技していたかと思うと、次には、狙撃戦だったりして、なんでもあり。

盛り沢山の内容で、テンポも小気味良く、出し惜しみなし。
三つの集団が金塊を狙って対立というだけではなく、さらに彼らの部下や仲間が、他の集団と通じあっていたりして、人物関係は錯綜している。
それでいて、決して小難しくなっていないのが、上手ですなぁ~。


そんな中で、今作を特別印象深いものにしているのは、物語の端々にあらわれる「アイヌ トリビア」。
主人公の杉元が、かなり年下の相棒、それも女性を、「ちゃん」づけではなく、「アシㇼパさん」と呼んでいることが象徴しているように、単に雑学披露ではなく、アイヌ文化への敬意を伴って紹介されている。

「異文化への敬意」というのは、自然と、現代社会への警鐘が含まれているものでして、今作も、その例に漏れず。
アイヌ文化を紹介すると、自然と、短期的な目先の利益を追求する現代社会(近代)への警鐘がされています。


主人公の杉元。日露戦争の英雄ではあるが、上司を半殺しにして、恩給をふいにしてしまったという人間。
家族は結核で全員を失っており、軍に居場所がないだけではなく、故郷すら喪失。
言うなれば、日本(近代)社会の埒外にいる。

相棒のアシㇼパはアイヌ人だから、当然、和人(近代人)とは違う。

主人公たちと同じく金塊を狙う「第七師団」にしても、日本近代の総決算であった日露戦争における激戦で多くの死傷者を出しておきながら、戦後は割りを食わされている。

土方歳三などは、そもそも幕末期、最後の最後まで、近代社会をつくろうとした新政府軍に反抗した人間。

また、物語の重要なファクターとなる囚人たちはアウトローで、当然、近代社会からあぶれたもの。


こうして並べてみると、三つの集団は敵対し合っているけど、「反近代」という立ち位置は同じなんだよね。

そういう意味では、連帯が出来るような気がしてしまうのだが・・・・・。だいたいにして、杉元が欲しいお金は、全体の金塊と比べたら微々たるもの。
アシㇼパは、金塊が欲しいのではなく、自らのルーツを知りたいだけ。

が、「第七師団」&「土方歳三」、どちらも近代社会を否定したいわけではなく、むしろ乗っ取ろうとしている。

それと比べると、アイヌ文化というのは、近代社会と敵対しているわけではないが、別種の存在。

作中において丁寧に何度もアイヌ文化を紹介しているのは、アシㇼパの属している集団は、根本的に「第七師団」&「土方歳三」たちとは違うことを表しているのだろうけど、さて、杉元は、どうなんだろう?
最終的には、アイヌ人になるのかな?

おまけ


6巻だが、もろ黒澤明監督の「用心棒」だったね。

「この町で 景気が良いのは 棺屋だけよ」なんてセリフは、まんまだし。(なので、元ネタを隠す気はないので、パクったというよりは、オマージュなんだろうけど)

まぁーねー、こうも盛り沢山な作品になってしまうと、どっかからかネタを見つけてこないと、大変だしな。


その直前のホテルの回も、H・H・ホームズの殺人ホテルが下敷きだし。

入ったら脱出不能の殺人ホテル
殺人博物館~H・H・ホームズ


他にも、「脱獄王の白石」は白鳥由栄、「不敗の牛山」は牛島辰熊などの実在の人物がモデルとなっているわけで、他にも僕が分からんだけで、いろいろ元ネタがあるんだろうなぁ。

ここらへんの元ネタ探しも、1つの楽しみということで。




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