2014年7月22日火曜日
「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」見てきました
コーエン兄弟の新作「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」を見てきました。
「真夜中のカーボーイ」みたいな作品でした。
見たことのない方に言いますと、田舎から出てきた時代遅れのカーボーイルックの男娼と、そいつに女を紹介しようとする男性の物語。
・・・・・しかし、こう書いてみると、最悪なストーリーだな。(だから面白んだけど)
(ただ、「真夜中のカーボーイ」はバディ・ムービーでもありますが、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」は、バディを喪失した物語です)
で、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」は、売れない歌手の物語。
まぁ、男娼に比べたら、まだマシですが、性格は負けず劣らず最悪。
以下、ネタバレ。
主人公のルーウィン・デイヴィスは、誰にでも喧嘩を吹っかける。
自分に歌う場所を提供してくれている酒場の主人や、彼の才能を惜しんで寝床を貸してくれるパトロン(のような男)、実の姉等々、とにかく噛み付く。
何故に、そんなに喧嘩っ早いのかと言うと、最初は、「売れない自分に苛立っているんだろうな・・・・」という感じでした。
が、徐々に、彼の歌っているフォークソングが時代遅れになりつつあることや、そしてなによりも、相棒がいなくなってしまったことが判明します。
その相棒は、どうやら自殺したようですが、原因などが言及されることはありません。
そこらへんの説明不足が、この映画は絶妙でして、主人公の他にも、多くの登場人物が、彼の死を惜しんでいるんだけど、サラッとしか触れない。
主人公にしても、相棒の自殺はショックを与えているのだろうけど、そのことについて心情を吐露することはないし、泣いたり、怒ったり感情を表にすることはない。
でも、「あんた、下手くそじゃないけど、売れるとは思えんな。今三人組のグループを考えているんだけど、その一人にならないか? まぁセンターは任せられないけど、清潔感のある格好で、後ろでちょっとやってみないか?」(アイドルのバッグバンドを勧められる感じ?)と、まぁ、家も金もない彼に手を差し伸べる男が登場するんだけど、主人公は、突っ張って、断ってしまう。
そんなとき、自分の理想を追い求めているようにも見えるけど、自殺した相棒に義理立てしているようにも見えるし、また自殺した相棒に義理立てしている自分に酔っているようにも見える。
ここらへんが、なんとも言えない味になっています。
もっとも、身近にいたら、最悪であることには、変わりはないんですが。
(でも、落ちるところまで落ちても偏屈なままでいる、痩せ我慢のダンディズムが、男性としては、同情心をくすぐるものがあります)
で、最後に最後になって、その相棒へのわだかまりも解消して、主人公は次の段階に進めるのか? という感じで終わります。
売れそうな感じもするし、歌手への夢は諦めるようにも見えるし、やっぱり、また「売れねーなー」という苛立ちを抱えたまま奮闘する毎日が繰り返されるように捉えることもできる、そんなラスト。
「製作者側が、答えを出すのを、逃げたな」と感じることもあるようなラストだけど、この映画では、うまーく味わい深く終わっております。
で、キャリー・マリガンがヒロイン(?)として出ているんだけど、この女性は、お股の緩いフォーク仲間で、彼氏はいるけど主人公とやちゃっている。
で、妊娠してしまって、心地良いくらいに主人公を口汚く罵るんだけど、それでいて、たまに優しい言葉を掛けてくれるという感じ。
ディカプリオ版の「華麗なるギャツビー」では、綺麗でお馬鹿なお嬢さんだな、くらいにしか感じなかったけど、この作品では、奥行きのある女性像を演じていて、大変可愛らしかったです。
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