2017年12月10日日曜日

神性を帯びる探偵「オリエンタル急行殺人事件(2017)」



まぁ、暇な時間と、映画の始まりが合致して、「これでいいか」くらいの気分で見た「オリエンタル急行殺人事件」。

トランプ大統領が、エルサレムにアメリカ大使館を移すことを決断して、いろんな国が大慌てという現在に、偶然重なる「嘆きの壁」からスタート。

「キリスト教」「ユダヤ教」「イスラム教」、それぞれの当地の代表者が容疑者という、本当にそんな事件があったら、陰腹でもしなくては、その裁判官は担当出来ないだろうレベルの危険度ですが、「イギリスが悪い!」と、あっさりと裁定を下す主人公のポアロ。

言うまでもなく、第一次世界大戦における三枚舌外交を批判しているわけで、原作未読なんですが、別段、無ければ無くても本筋には弊害のないエピソード。
「社会風刺ぶっこんできたなー」と、ちょっと驚き。

以降、人種問題に触れたりしつつ、「社会派」といった重々しい描写もなく、往時の大英帝国を思い起こさせるオリエンタル急行の豪華な列車内と、現代風に再定義されたクラシカルだけれども洒落た服装に目を奪われるのだが、会話の端々に登場人物たちの背景や関係性、後の伏線などが含まれ、で、起こるよ殺人事件。

前述の通り、原作未読だし、映画の過去作も未見、・・・・・だけれども、名作・古典の宿命でして、なぜかオチは知っているので、「あぁ、なるほどなるほど、この発言は重要ね、覚えておいた方がいいのね」といった感じで、展開に驚きはないのだけれども、まぁ、しっかりとした脚本と絵、演技なので、楽しく見れてはしまう。

それにしても、最後の最後、主人公のポアロが、推理モノのお約束、「犯人はお前だ!」とネタバレのお白州シーン、居並んだ容疑者たちの構図が、明らかに最後の晩餐。

「な、な、なぜ?」と戸惑っていると、ポアロはポアロで、「おれは神と同格」みたいなことを宣言。

( ゚д゚)なに!?

ポアロは、「最後の晩餐」の一部ではなく、彼らの前に陣取っているということは、・・・・・「父なる神」として、キリストすら裁くの? すげーな、おい。

なんだけれども、よくよく思い出してみると、ポアロのことを、登場人物たちが、「ヘラクレス」って、呼ぶんだよね。
「なんで?」と思ったら、
ポアロのファーストネーム“Hercules”がギリシア神話の英雄ヘラクレスに由来する
という背景もあるようで。

また映画冒頭、「キリスト教」「ユダヤ教」「イスラム教」の三人の代表者を裁くなんて、「神」でもなければ、出来ないお仕事。

そして、最後の最後。

ネタバレだが、「いいよいいよ、おれは、お前たちの罪を問わない」と実行犯たちに、恩赦を与えて去っていくポアロ。

最早、法律など超越した存在となってしまったのかと、唖然と言うか、笑えると言うか。


確かに、ポアロは、警察でも検察でも裁判官でもないからね。
探偵という、あくまでも、一民間人に過ぎないわけで、そんな人間が、なんだか良く分からない理由と権限で(殺人事件が発生した当初、「オレ、やらないよ」ってポアロが、言っているのは、まぁ当然だよね。別に「金」にはならないし、そもそも捜査って「公的な機関」が行うべきものだし。だから、ポアロを説得する理屈が、人種問題を持ち出してきて、なんだか妙だったなぁ)、取り調べを始めるわけで、その整合性を突き詰めていくと、「ポアロ」=「神」なのかもしれないが、・・・・・・推理ドラマに、「そんな仰々しい論理性を与えんでも」と思わないでも。

まぁ、そんなところは気にしなくても、十分、娯楽作として楽しめる映画でした。

by カエレバ

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