2017年11月2日木曜日

シャーリーズ・セロンによる金蹴りが光る「アトミックブロンド」



アクション系から演技派に転向するという例は間々ありますが、演技派からアクション系に移るというのは、なかなか珍しいのではないかと思いますが、すっかり肉体を酷使してばかりのようなシャーリーズ・セロン。

その彼女が主演の「アトミックブロンド」。
女版007とも言われてましたが、見た感想としては、「これだ!」。

ダニエル・クレイグ版の「007」は、特にデビュー作「カジノ・ロワイヤル」は、荒唐無稽さを排し、納得のいく新しいジェームズ・ボンドでしたが、作品も続くと、なんか、ちょっと派手さを重視する面が出てきて、結局、銃でドンパチして、敵はなぎ倒すのにボンドには決して当たらないという、まぁ、うーん、ご都合だね・・・・・。

けっこう期待していた「007 スペクター」の感想

スパイアクションでは、トム・クルーズのミッション・インポッシブルがありますが、正直、冗談みたいな展開の連続。
これはこれで、お気楽に楽しめる娯楽作としては合格なのでしょうが・・・・・。


相変わらず不死身のイーサン・ハント「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」

戦う女では今年は「ワンダーウーマン」がありましたが、どうにも「いい子ちゃん」過ぎてね。
「知識でしか知らない人間のために、楽園を出て戦う」というのは、そりゃ、アメリカンヒーローとしては合格なのでしょうが、一般人としては、どうにも理解できないわけで(良くも悪くも、アメリカの好戦的体質のあらわれだよね)。


そんなこんな、いろいろとあった不満を、ものの見事に解決してくれた、「アトミックブロンド」。

彼女に戦う理由などない。
それが彼女の仕事だから。(単に劇中で説明がないだけだが)

女ではあるが、「女」を武器にすることはない。
色気や愛想などはなく、基本、己の機転と肉体で戦う。

それでいて、スレンダーな女性であるが為に、ちゃんと屈強な男たちとの体格差が、映画の中では描かれており、柔道だって、ボクシングだって、結局「重い」方が強いわけで、だから、ただ一対一で対峙するだけなのに、彼女にとっては、もう窮地。

それを、007のように、一発大逆転のスパイメカに頼ることはなく、また、敵には当たるけど自分には当たらない魔法の銃もなく、その結果として、とりあえず、敵と鉢合うと、挨拶代わりに股間に蹴りを入れるわけで。

しかも、オープニングで拝める、傷だらけ・痣だらけのシャーリーズ・セロンのヌードシーンが象徴しているように、バトルで負った痛みは、ちゃんと蓄積されたまま。(まぁ、完全リアルだったら、立ち上がることもできないようなケガをしている気がするけど)

そんな感じで、これまであった、「なんだかなぁー」という不満点が、見事に解消されいる映画でした。


以下、ネタバレあり。

ただ、まぁ、世評での、「分かりづらい」というのも、理解できるストーリー展開。

東独のスパイグラスが、裏切り者によって殺害されるシーンがあるけど、もっと以前に、目立たないで「消す」方法があったような?

そもそも、明らかに「怪しい人間」がいるのに、疑いつつも頼っているというのが、なんとも。

と思ったら、どんでん返しで、主人公が二重スパイであることが明かされて、「あぁ、なるほど」と、ちょっと納得。

・・・・・・・なんだけれども、そこで終わっていれば、冷戦下において、「どちらの陣営をも欺いて生きる女」という、まさしく独立した「タフ」な人間像となったのだろうけど・・・・・・最後の最後に、またどんでん返し。
トリプルスパイで、「実はアメリカのスパイでした」というオチは、・・・・・好き好きだろうけど、なんか「惜しい!」と思ってしまった。

まぁ、でも、全体としては、野心的であるが独善に陥ることはない、非常に完成度の高い映画でした。

by カエレバ

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