2017年12月3日日曜日

是枝裕和監督「三度目の殺人」



是枝監督の作品だから、つまらんわけないだろうと思っていたけど、それにしても、面白かった「三度目の殺人」。

多分、自分だけではないと思うのですが、弁護士という仕事に対して、時に胡散臭さを覚えるのは、事実を捻じ曲げてでも、犯罪者の弁論しているのではないだろうか? という疑念。

たとえば、「置き引き」とか「万引き」といった軽量の犯罪で(軽量と言っても、自分が被害に遭ったら、腹立たしいだろうが)、検察側の立証に穴があり、弁護士として、そこを突いて無罪を勝ち取るくらいなら、「立証できねぇ検察が悪い」とか、「疑わしきは罰せずが日本の司法だからねー」などと、うそぶいていられるだろうけど、これが、「強盗殺人」とか「強姦殺人」なんてドッシリとした犯罪だと、どうなんだろうねぇ。

経歴にしても、当該の犯罪にしても、「こりゃ、救いようがねーなー」なんてタイプの人間であっても、まぁ、「穴」があれば、それをこじ開けて、どうにかこうにか無罪を勝ち取る・・・・・のは無理でも、情状酌量でも何でも使って減刑を勝ち取るのが、そりゃ、まぁ「それが仕事」と言ってしまえば、それまでなのだが、しかし、弁護士さんというのは、そういうジレンマって、どう考えているんだろうなぁ、などと、世間を騒がした事件の裁判が始まると、頭に浮かぶことが度々ですが、この「三度目の殺人」は、そのモヤモヤを見事に物語へ昇華していて、さすがだなぁ。

徐々に明らかになっていく謎の配置も絶妙でねー。

けっこう、最初の方で、犯人とキーパーソンの人物が親しかったという「意外な事実」が明かされていながらも、それを、福山雅治さんが演じる主人公が、なかなか問いたださない。
それは、ちょっと不自然ではあったけど、そのタメがあっての、「告白」の衝撃につながるわけで、ここらへんは、物語の方便ということで。


それにしても、モチーフの目のつけどころ、脚本の巧みさ、それを支える、演者たちの芸達者ぶり。

役所広司さんなんて、「日本のいちばん長い日」では、天皇の信任厚い陸軍大臣を熱演していたのに、この作品では、一見すると、こ汚い初老の男性のようで、話し始めると得体の知れない不気味さにじみだしており、前科持ちだとうなずけてしまう存在感。

もう一人の主役・福山雅治さんは、「そして父になる」と同じく、斜に構えたエリートが、やっぱり、よく似合っている。

そして、意外だったのは、広瀬すずさん。
実写版「ちはやふる」にて、「自分の美貌に無頓着な、ポジティブ小悪魔」という漫画でしか成立しないキャラを、その美貌で以て、ちゃんと三次元に降臨させる圧倒的な「美」「陽」のスター性を発揮していましたが、今作では、非常に「陰鬱」な、スクールカースト底辺なクラスの片隅で押し黙っているようなキャラに、ちゃんとなりきっていて、朝ドラの主役抜擢も決定しており、スキャンダルさせなければ、まだまだ行けるで~という感じでした。




by カエレバ

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