ついに庵野監督がメジャー世界に羽ばたくか!?
庵野秀明監督は「エヴァンゲリオン」の成功の後は、村上龍さんの「ラブ&ポップ」、永井豪さんの「キューティー・ハニー」を実写化したりして、まぁ、それなりに話題にはなったけど、・・・・・・「それなり」という感じでした。
面白かったけどね。
結局、最近になって、エヴァをリブート、まんまと大ヒット。
まぁ、こちらも面白いから困ったものでして。
でも、個人的には、「このままエヴァだけで、終わってしまうのかね・・・・」という危惧も。
エヴァだって、社会現象にまでなった大ヒットなのは、分かってますよ。
それは、そうなんだが・・・・・・。
超映画批評(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』60点)さんで、
この映画にエヴァンゲリオン初心者の方を連れて行くのはあまりオススメしない。ためしに私は本シリーズを知らないスタッフを連れて行ったが「眠くなるけど(アクションシーンが)うるさくて眠れず、早く終わらないかとずっと思ってた」などと散々な評価であった。と書かれている。
つい最近お亡くなりになった永六輔さんも、「話題だから見てみたけど、なんだか分からんから、途中で退席したよ」とラジオでおっしゃってました。
アニメ史に残るようなヒット作であって、やっぱりオタクコンテンツから抜け出ていない。(一応言っておくと、オタクコンテンツが悪いわけではないよ)
お師匠筋の宮崎駿監督なら「ナウシカ」(「もののけ姫」か?)、押井守監督なら「GHOST IN THE SHELL」で、オタクの大将から一歩抜け出したのですが、さて、庵野監督は、このままオタクの大将で終わるのかな・・・・・、いや、別にオタクの大将が悪いわけじゃないし、妙に芸術家気取られるくらいなら、清々しいとは思うけどね。
・・・・・・そして、「シン・ゴジラ」。
渡辺謙さん主演のハリウッド版「GODZILLA」の成功から、「本家の日本でつくらんで、どうする!?」というライバル意識と危機感で制作が決定。
特撮面では、「進撃の巨人」の酷評から立ち直れるかの、瀬戸際。
今作が失敗すれば、「やっぱり、日本のSF映画は、こんなものか・・・・・。所詮、オタク or マニア向けか、子供相手の商売しか出来ないのね」という失望と失笑が広がるのは必定。
どうなのかね~、いけるのかね~、エヴァの最終作をつくりたくないから逃げてるかね~、・・・・・などと思っておりましたが、ものの見事に傑作を送り出してくれました。
ありがとう、庵野監督。
「THE 日本」が、いいんだか、わるいんだか
今作は、特撮ファン&SFファンだけに限定されることのない物語であり、渡辺謙さんの「GODZILLA」とも違う、オリジナリティに富んだ「今のゴジラ」「庵野監督のゴジラ」でした。
そして、単に優れたエンターテイメント作品であるだけでなく、現代日本に対して、示唆に富む内容。
が、この「現代に日本に対して、大変示唆に富む内容」というのが曲者だったりします。
この作品、えらく、登場人物が多いんだよ。
で、官僚は官僚で、自衛隊は自衛隊で、絶えず会議をしている。
怪獣映画と言うよりも、会議映画ですよ。
確かに、リアリティを生み出す効果はある。
庵野監督らしい、「ハッタリだな」と思わないでもなかったけど、これって、主人公・矢口が率いるチームとの対比で、描かれているんだよね。
縦割り式で、最終的に上の判断が無ければ銃の一発も打てない官僚組織。
で、ありながら、トップの首相は、個人的な思いや政治的信念とは違っていても、周囲からの説得で、あっさり従ってしまう。
日本らしい組織。空気によって物事が運ぶ、無責任の構図。
に、比べて、主人公の矢口チームは、一つの部屋に集まって、縦も横も関係なく、意見を出し合う。
また、リーダーの矢口は、他人からの意見を聞く度量はあるが、自らの決意に忠実で、危険を顧みず現場で指揮をとる。
(人命を前にして、攻撃を止めさせる首相と、最終決戦を前にして躊躇しない矢口も、対比になっていたねー)
で、「普通」の作品だと、
「前者(官僚組織)は悪」
「後者(アウトロー集団、反エスタブリッシュ、反エリート)は善」
と、単純に描いてしまいがちなんだけど、ここが、まぁ、「庵野秀明監督、一皮むけたな~」とうなるところでして、前者にしても、日本的な民主主義として、決して「悪」と描いているわけではない。
初代「ゴジラ」において、圧倒的な力を持つ「ゴジラ」を倒した芹沢博士は、ゴジラを凌駕する力を得た為に、自らを滅ぼさねばいけなかった。
矢口も、自分の行為は、あくまでも非常時の超法規的行為であると自認している。
だからこそ、復興に目処がついたら、自らも身を退かなければいけないと考えているようだし、また、日本の組織においては自分は異端であり、平時においては身の置き所がないことも分かっている、・・・・ということなのだろうなぁ。
ここらへんの、「THE 日本」という組織の描き方は見事だったんだけど、・・・・・・・でも、よく描かれているだけに、海外の人に分かるかな~。
アジア圏なら、庵野監督も名が知られているから、「シン・ゴジラ」はヒットすると思うのだが、でも、西洋には難しいか?
ゴジラは、なんの象徴?
エヴァですと、「死海文書」「ロンギヌスの槍」「生命の実」「白き月」とか、オカルト色の強いワードを羅列して、「さぁ、解釈しなさい」と迫ってくる作品でした。
大ヒット当時、各々が解釈を披露して百家争鳴でした。
つまりは「政治課題」を、物語の謎解きアイテムにしているわけでして、・・・・・・ぐむむむ、巧みな餌撒きですよ、まったく。
(政治課題を物語に内包させるというのは、押井守監督の「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の影響もあるのかな?)
今後、なにか国家間の事件や、軍事に関する問題が発生する度に、「シン・ゴジラ」が持ち出されるのが目に見えます。
時々の事件の特異性に応じて、「シン・ゴジラ」内の枝葉末節を必要に応じて切り取られることになるんだろうねー。
で、その際、重要なのは、「「シン・ゴジラ」におけるゴジラって、なんの象徴?」という問題。
初代からのモチーフである「原子力の悪」、人智を超えた「圧倒的な自然の力」、最早対話をすることも不可能な「外敵(ぶっちゃけ、北朝鮮か中国)」、暴力的に自国を蹂躙していく「黒船」、・・・・・「ゴジラ」が「最悪な来訪者」であることは誰もが認めるところ。
しかし、その解釈となると、エヴァと同じで、いくらでも出てきてしまう。
まして、現実の政治課題とリンクしているとなると、各々の立ち位置によって、色がついてしまうわけで、そこも含めて、ついに「大人な作品」をつくったなぁと感慨深いものがあります。
おまけの感想
石原さとみさんが、相変わらず「綺麗」&「キュート」だったけど、他のキャラがリアリティのあるオッサンばっかりだっただけに、マンガチックで、ちょっと浮いていたね。
まぁ、石原さとみさんの問題ではなく、庵野秀明監督の女性観の起因するのだろうなぁ(矢口チームの女性も、「いかにも」だったし)。
あと、中盤におけるゴジラの絶望的な強さと比べて、ラストが意外にあっさりだったね。
まぁ、リアリティを追及した結果なんだろうけど。
そして、素晴らしいクオリティの作品で、また見れるなら、同じような作品は見たい。
が、・・・・・・・・・・・続編は、どうかな?
映画会社としてはつくりたいだろうけど、・・・・・・難しいだろうなぁ。
怪獣映画なら、新しい怪獣を出すことで解決するけど、これって会議映画だからな。
また延々と会議を見せられてもねぇ。
あっ、でも、「日本に敵対する国が、新しい怪獣をつくって、それと対峙」という、国際関係を絡めた話なら、どうにか成立するか?
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