漫画「主に泣いてます」の最終巻の10巻まで読了。
(五巻までの感想は、■東村アキコ「主に泣いてます 1-5」読了)
出会った男性は、全て狂ってしまう超絶美人&ナイスバディの泉さんをめぐる物語は、過去に遡り、そして現在の妹にフォーカスが当たり、で、まぁ、一応、和解が成立。
薄幸の美人・泉さんにも薄明かりが見えたのも束の間、今度は、かつての愛人であった青山先生が意識不明の危篤。
どうやら、自殺を企図したよう。
ショックを受ける泉に、自分が支えるとばかりに、積極的に介入を図る主人公の赤松君であったが・・・・・。
美人である以上は、彼女は不幸の星から逃れられない。
では、どうしましょう? ということなんだけど。
途中読んでいて考えたのは、まさか、谷崎潤一郎「春琴抄」ルートか? ということ。
泉さんは、第三者なり、自らの手なりで顔をつぶし、彼女の心の美しさを愛している(と思っている)赤松君は、目をつぶす、とか?
まぁギャグ漫画だし、それはないか・・・・・・。
でも、そうでもしなきゃ、この物語って、延々とループの繰り返し。
ギャグ漫画だから、それはそれでアリだろうけど。
どう落着するのかな? と思っていましたが、「春琴抄」ルートとはいかないけど、「泉さんを太らせよう(醜女にしよう)」計画もあったりしたけど、うまくいかず。
最終的には、「美人だから」「か弱いから」「女性だから」「若いから」という理由で、みんなが泉さんをかばおうと必死になるから、より彼女は不幸になっていくという構図が露わになり、その結果として、彼女は自立を志す。
そして運良く自立が出来(ここらへんは、ラストが差し迫って、駆け足でした)、画家として成功した赤松君の前に堂々と顔を出して登場。
つまり、今まで、散々、泉さんがやってきたメークって、過保護の象徴だったのね。
彼女を守ってやりたいという善意の裏側には、「か弱い美人でいて欲しい」という身勝手な(社会の)願望が投影されており、結果して彼女の自立を妨げ、不幸にしてしまっていた。
で、強くなり、と言うよりは、自信をつけた泉さんの笑顔で大団円。
なんだけれども、まぁ、ちょっとモヤモヤが残るなぁ・・・・。
青山先生の記憶喪失はウヤムヤだし、どうやって本妻が愛を取り戻したのか、その過程は省かれちゃっているし。
重要なキャラの一人、中学のつねちゃん(女)は、結局、なんで登校拒否していたのかね?
「彼女の性格だから、仕方ないでしょ?」と言われたら、その通りだけど、それにしても、これからは、ちゃんと学校行くのかな?
で、もっとも重要なのは、つねちゃんは、泉さんの保護者であり、かつ赤松君に惚れているという微妙な立場。
この三角関係が、物語に、ゆるーい緊張感を生んでいたんだけど、・・・・・・結局は、なんかグダグダで、終了。
泉さんはつねちゃんの思いを気がついており、赤松君が自分を思っていることも知っている。
で、赤松君は泉さんへの思いは、ほとんどカミングアウトしているけど、つねちゃんの思いには気がついていない。
つねちゃんは、赤松君の泉さんへの思いは知っているけど、別に泉さんを嫉妬するわけでもなく。
最終的には、赤松君は泉さんを追って、一緒に生活をしているようです。
でも、モデルと画家以上の関係にはなっていない。
もともと、赤松君の目標は画家として食えるようになって、泉さんを守っていくこと。
でも、泉さんが自立してしまった以上は、新しい関係を築かなくてはいけないわけでして。
そこまでは描き切れなかったということで、結局、三角関係は維持されたまま終わりです。
うーむ、ちょっと、モヤモヤ。
「ハチミツとクローバー」では、天才だけど孤独で、どこか浮世離れたところのある「はぐちゃん」の自立が問題になっているんけど、結局、不慮の事故もあって、なんと保護者とくっ付くというエンドで、多くの世の男性に「ファザコン恐るべし!」と心底思わせた作品です。(かなり極端な解説をしております)
それに比べると、勝手に社会から求められる「女とは、所詮、見てくれ」という価値を、やんわりと否定し、自立に向かっていっているので、「主に泣いてます」の方が健全なラストではあるんだけど。
たまに毒が濃くて(風刺が効き過ぎて)、読んでいて辛い時もありましたが、基本的には、ぶっ飛んだギャグ漫画で楽しかったです。
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