2016年11月28日月曜日

なんとなく見てきた「聖の青春」



現在の日本で、現役でありながら既にレジェンドというと、野球のイチロー選手と、棋士の羽生さんでしょうか?

七冠だもんね。
漫画よりも漫画みたいな強さでして、その偉業があるからこそ、「月下の棋士」における滝川名人にしろ、「3月のライオン」における宗谷名人にしろ、逆輸入でリアリティが生まれるというか、有り様が自然になってしまうというか。

その存在感たるや、未だに堂々としたものがあります。

で、その全盛期の羽生さんを苦しめたと言われる、村山聖棋士の映画が「聖の青春」になります。

原作は、大崎善生さんによるノンフィクション「聖の青春」。
漫画化、舞台化もされて、今度は映画。


平日の昼間に映画館で鑑賞したのですが、観客は、まぁまぁはいってました。
時間帯もあるのでしょうが、若い人はおらず、だいたい六十前後で、男女半々。


内容ですが、一言であらわすと、「天才の夭折モノ」。
ぶっちゃけ、泣けるに決っている。

後は、まぁ、主人公に、どこまで共感やら同情、憐憫が生まれるかなんだけれども、・・・・・・病気のせいなんだけれども、「怪童」と呼ばれた容姿。

「3月のライオン」の二階堂のようなキャラなら愛されもしようが、映画内では、独り善がりのこだわりをもった傲岸不遜で、人を人とも思わない人間として描かれています。

難病を患っているのにお酒やジャンクフード大好きとか、少女漫画が趣味で女性には奥手という側面は、料理の仕方によっては、「愛くるしい」と観客に思わせることができるのでしょう。(たとえば「寅さん」のように)
でも映画では、まったく同情ができない困った人間として描いているのが、偉いようなムゴイような。

場面によっては「キモイ」キャラになっていまして、まぁ作り手としては、リアルを追求した結果なのか、故人に敬意を払ったからなのか。(漫画っぽくなることを回避したかった?)


主人公が、そんな感じなので、カタルシスの得難い映画になってました。


松山ケンイチさんが役作りで激太りしたことが話題でしたが、出演者全員が適材適所で熱演。

なんだけれども、一方で、師弟愛やら親子愛、羽生さんとのライバルだからこその心の交流とか、決して詰め込めすぎてはいないけど、どこか焦点がボケてしまっているような・・・・・。
ここらへんの加減は、難しいところなんだけれども。


「意外」と言っては失礼なのだろうけど、東出昌大さんの羽生さんの役作りは、すごかったね。
イケメン若手俳優にはありがちだけど、「人気はあるようだけど、どれやっても同じ人にしか見えない」というのが東出さんのイメージでしたが(後は、杏さんの旦那)、今作では、羽生さんよりも羽生さん。
歩き方まで似せていました。


まぁ、かわいそうな話ではありますが、村山聖棋士の人生が未だに語られるのは、羽生善治というレジェンドがあってのこと。

山本おさむさんの漫画のタイトルは、「聖 -天才・羽生が恐れた男-」だもんね。

映画内でも、主人公・聖は、自分の命が長くないと分かっているから、羽生さんとからの一勝は、普通のプロ棋士の二十勝分に値すると述べている。
短い人生かもしれないが、將棋の歴史に燦然たる名を残すことになる羽生さんから勝利をもぎ取ることは、この世界に自分という存在の爪痕を残す最善の方法であるわけでして。

その「あがき」が、まぁこの映画の肝。

ならば、主人公と同等くらいに、羽生さんの完成度が求められるわけでして、そりゃ、力も入るわけだ。

羽生さんの、あの独特な聖人的空気感は、大変素晴らしく再現されていました。
(が、勝負師の面は、ちょっと弱かったかな? と思わないでもないですが)

聖の青春 (講談社文庫)
by カエレバ

2016年10月16日日曜日

「ニュースの真相」、製作者の思いは分かるが


まぁ、こんなもんか


「ニュースの真相」を見てきました。

アメリカでは2015年公開で、日本では翌年に持ち越し・・・・・という流れからすると、「あんま話題にならなかったな(=ヒットしなかった)」というのが透けており、正直なところ、あんまり期待はしておりませんでした。

で、見終わった感想ですが・・・・・・、案の定、「こんなもんか」という感じ。


あらすじ


2004年、二期目を目指す共和党ブッシュ大統領と、それを阻止すべく、民主党ジョン・ケリー氏は、激しい選挙戦を繰り広げていた。

そんな中、CBSニュースでは、ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑を報道する。

大きな話題となるのだが、しかし、番組の中で提示された証拠が「捏造ではないか?」という指摘がされる。

ニュースを報道した現場では反論を試みるのだが、徐々に劣勢に立たされて・・・・・。


で、物語は、「ブッシュ大統領の不正を暴くぞー、おぉ!」と現場の奮闘、「ついに報道できた!」と盛り上がるけども、あっと言う間に追い詰められて・・・・・という感じで、流れに起伏があるんだけど、いろいろと盛り込み過ぎなのかな? 登場人物に感情移入し難いのかな? 映画の中では多くのイベントが発生しているのに、見ている方は、なんか平坦というか、平板というか、イマイチ乗れない。

劇中の重要な二人の人物について、他の登場人物が、「彼らは親子みたいなもんだ」と言わせるのは、「それは観客に気づかせるのが重要なのであって、口にしたらお終いでしょ」と興醒めだし、そして、親子的な絆があるようには結局見えない・・・・・。


が、まぁ、最大の欠点は、あまりに「共和党大嫌い!」「保守派のバカヤロー!!」が色濃いことか?(個人的には、共和党よりも民主党の方に頑張って欲しいと思っているが)
だって、ラストシーンでブッシュ大統領の再選が決まって、主人公たちはやけ酒飲んでいるって・・・・・、そりゃ、あんまりだ(分かり易過ぎだろ)。

そんな感じ。
政治色・党派色が強過ぎて、「このお話しって、どこまで信じていれば、いいんだろう?」と不安になるんだよね・・・。


とは言うものの


とは言うものの、まぁ、製作者側の言いたいことも、よく分かるけどね。

民主党ジョン・ケリー氏は、ベトナム戦争で叙勲している。
選挙戦では、その叙勲すらも中傷に遭ったようだけれでも、従軍した事実は揺るがない。

に比べて、当時(今も?)、イラクとアフガンという孫子もビックリの二正面での戦争をしていながら、当の最高指揮官であるブッシュ大統領は、ベトナム戦争には従軍していない。
しかも、政治的な力をもってベトナム行きを免れたという客観的証拠はともかく、状況証拠は数多上がっているわけで。

で、2000年にしろ、2004年にしろ、大統領選挙は、かなりの接戦。
2000年の場合は、ブッシュ氏は選挙人では勝ったものの、総得票数では民主党のゴア氏に負けているわけで、・・・・・熱心な支持者からすると、大統領選出過程も納得できないし、最高司令官としても納得できない。

そんな人間が大きな戦争を始めて国をメチャクチャにしたわけで、もし「軍歴の疑惑」が、ちゃんと報道されていれば、こんなことにはならなかったはず、・・・・・・という思いが強いんだろうし、だから、こういう作品になったんだろうなぁ。


ネットの台頭


■ブッシュ大統領の軍歴疑惑報道はデタラメ--ブロガーがCBSに異議申し立て

しかし、この映画を見て、改めて思い出したのだが、CBSニュースの顔であるダン・ラザーを引きずり下ろしたのは、ネットなんだよね。

もう10年以上前の出来事だけど、以降の時代を象徴するような事件だったんだなぁ。


そして、主人公が、「小さな瑕疵をあげつらって、問題の本質から目を背けている(本質から目を背けるように仕向けている)」、つまりは、「木を見て森を見ず」だというラストでの主張も、現代的だね~。


現在絶賛吊し上げ中の豊洲移転問題なんかも、話題が「盛り土」に集約されてしまって、「なんだかなー」という感じ。

他にも、従軍慰安婦問題における朝日新聞やら、南京事件、沖縄の米軍基地、原発等々、左右・保守革新を問わず、枝葉末節をあげつらって、「ほれ、みたことか!」と勝どきをあげている姿を、しょっちゅう見かけるのだが、さて、相手の主張の一部分を否定できるからと言って全体を否定できるわけでもないし & 自説が全肯定できるわけでもない。

なんだけれども、「政治」になると、局地戦の限定的な勝利も大勝利と宣伝され、寸土の譲歩ですら無条件降伏と非難されてしまうわけでして、結局、殲滅戦の後に残るは、「なんだか、誰も幸せになってない気が・・・・」という焼け野原。

なんとなーく、漠然と、ネットの普及によって、こういう傾向は促進されてしまったような気がするけど、さて、どうなんでしょう?


まぁ、ともかく、そういう現代的な課題・風潮の描写もあるだけでに、ちょっと惜しかったなぁ・・・・。

大統領の疑惑
by カエレバ

2016年10月3日月曜日

クリント・イーストウッド監督「ハドソン川の奇跡」


いつ死ぬんだよ


現代の馬援と言えば、クリント・イーストウッド。

御年86才。

まだ新作映画をつくるよ・・・・・・。

前作、「アメリカン・スナイパー」も、とても80を超えた監督の作品とは思えない、現代の映画でした。
■クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」の感想


そして、今作は、2009年にアメリカで起こった「USエアウェイズ1549便不時着水事故」を扱っています。
■USエアウェイズ1549便不時着水事故 - Wikipedia

たった七年前の出来事。

まぁ、ほんと、「老いてはいよいよ壮(さかん)」です。(下衆の勘繰りだけど、スタッフが優秀なんだろうなぁとは思ってしまうけど。まぁ、その優秀なスタッフの中心に、たとえ象徴としても存在していることで、名作が生まれるのなら、それはそれで、スゴイのだが)

バランス感覚


クリント・イーストウッド監督と言えば、ゴリゴリの共和党支持者として有名です。(ハリウッドでは、民主党支持が優勢で、珍しい存在なのでは?)

■クリント・イーストウッドがトランプ氏支持 「軟弱な時代だ。誰もが発言に細心の注意を払う」

民主党憎しで、トランプ氏でも許容してしまう、「器の大きさ」というか、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というか、「敵の敵は味方」というか。(THE共和党であるレーガンの後継者として共和党大統領となったパパ・ブッシュ氏も、「こりゃ、駄目だ」と匙を投げましたが・・・・・・。■ブッシュ父「クリントン氏に投票する」 共和党の元大統領が異例の告白)


政治的には、ちょっと偏ったところがあるんだけれども、そして、年を取れば、より偏狭になるものだが、つくる映画は、けっこうバランスがとれているんだよね。

日本でも、たまぁーに、保守色濃厚な作品がつくられることがあるけど、所詮、国内限定にならざる得ない。

それに比べると、クリント・イーストウッド監督の作品は、日本人でも十分に理解できる普遍性を持っているわけで、なんだか不思議。
「優秀なスタッフが、下支えしてるんじゃねーの?」と勘繰りたくなるわけです。

あらすじ


で、「ハドソン川の奇跡」。原題は、機長のニックネーム「Sully」。
まぁ、分かりやすいタイトルが求められるし、「Sully」では意味分からんなのだが、それにしても、身も蓋もない邦題だね。

作品の粗筋。
バードストライクで飛行不能になった飛行機を、機長は見事にハドソン川に着水、奇跡的に乗客乗員に死者を出すことはなかった。

偉業に対して、マスコミは賞賛を惜しまない一方で、政府は、「本当は空港まで戻ることが出来たのに、機長の判断ミスで着水したのではないか?」と疑い始めるのであった・・・・。


「父親たちの星条旗」「アメリカン・スナイパー」でも、一般人が、英雄と讃えられる一方で、歴史・社会・政府に翻弄されるという物語でした。

「硫黄島からの手紙」も、栗林中将はモンスターや英雄というよりも、一人の人間として描かれていましたし、「インビクタス/負けざる者たち」のマンデラ大統領も、似た感じかな? そもそも、主人公は、マンデラ大統領ではなく、(一応は)選手だし。

「ハドソン川の奇跡」も、そんな流れの作品です。


映画の主人公を演じるのは、善人「トム・ハンクス」。

突然の大衆からの英雄視に戸惑いながらも自分を見失ず、家族への愛を忘れず、驕ることなく、かと言って卑下することもない機長が描かれています。
こういうのが、「宣伝くせー」とはならず、「ほっこり」として受け入れられるのも、さすがトム・ハンクスさんです。


でも、映画内では、分かりやすいニコニコ顔は封印。
敢えて渋面ばかり、・・・・・・でも、善人という演技。ここらへんは、ちょっとヒネったね、という感じ。

なんで、そんな顔になってしまったかと言うと、絶えず政府からミスを疑われているから。

偉くなくとも


主人公は、アメリカ社会において、妻を娶り、子供をもうけ、40数年間、パイロットして粛々と仕事をこなしてきた。
それは、英雄的な行為ではないかもしれないが、アメリカ社会に限らず、ある地域・組織・団体においては、決して恥ずべき経歴ではない。

そして、その地道な積み重ねがあって、「ハドソン川の奇跡」を成し遂げることが出来た。
不幸中の幸い。

しかし、劇中において、機長を追及する側の人間たちは、その粛々と生きてきた彼の人生を、まったく省みようとはしない。

単純にコンピューターのシュミレーションから、「こういう可能性があったはず」と責め立てる。(現代的な世知辛さと言いたいところですし、映画内でも、どことなくそんな雰囲気ですが、まぁ、いつの時代も似たようなもんでしょうね・・・・・・)

よしんば彼の判断が間違っていたとしても、最悪の事態を想定して、現場で出来うる最高の判断を下しに過ぎない。
己の技量を最大限に発揮しての着水だったはず。


ここらへんの、

・「偉くなくとも正しく生きる」を地でいっていたような人物

と、

・傲慢な政府(官僚組織)

の対比は、すごく健全な保守思想を背景にしているようなぁー、個人的には思いました。

で、まぁ最終的には、機長の昔ながらの経験やら知見の積み重ね(過去こそが大事という意味での「保守」ですな)が勝利するんだけどね。


上映時間は90分。

物語上、盛り上がるのは、当然、「飛行機が不調となり、川に着水するまでの流れ」。
普通に考えると、冒頭か最後に挿入するしかないように思えるんだが、映画では、ある程度物語が進行してから、不時着のシーンが挿入される。

しかも二回も。

普通、こんなことしたら、「なんだか冗長だなー、繰り返す必要あるの?」と思ってしまうけど、「機長の判断の、なにが問題とされているのか?」が明確になってから、再度の着水シーンになるので、ちゃんと緊張感を伴って見ることが出来る。

ここらへんのさじ加減も、絶妙ね。

で、映画内では、家族愛を描きつつ、夫婦愛で留めて、無理に娘達を絡ませないあたりも、「分かっているなぁー」。

なんだけれども、あんまりにも、まとまりが良くてねー。
そのせいで、逆に、小品に留まってしまった感じがします。

ハドソン川の奇跡
by カエレバ

2016年9月22日木曜日

映画「ダーク・プレイス」の感想


シャーリズ・セロン主演の、ミステリー映画「ダーク・プレイス」。

そんな期待しないで見に行ったら、やっぱり、「まぁこんなもんか」くらいに収まる感じの作品でした。

つまらなかったわけじゃないんだけどね。

こんな感じの物語


シャーリズ・セロン演じる女主人公は、小さい頃に、実の兄によって家族を惨殺されてしまったという、悲惨な過去を背負っている。

だが、この「悲惨な過去」のおかげで、多くの寄付が全米から集まっており、悠々自適に暮らしていた。

が、それも、「これまでは」のお話。

毎日楽しく暮らしていたら、当然、お金もなくなるわけで。
人々の記憶も薄れ、かつて発売した自伝も、もう話題にはならず。

いままで働いたこともないので、今更、就職なんてこともする気がない。
どうにかならんかと困っているところに、「殺人クラブ」という奇妙なサークルから、過去の事件について語って欲しいと誘いを受ける。

家族の事件を思い出すのは本意ではないが、背に腹は代えられない。
報酬の為に、「殺人クラブ」に赴き、事件と改めて対峙することになった主人公。

彼らと接しているうちに、事件は報道されているような単純なものではなかったことを、知ることになる・・・・・・。

終わってみれば


まぁ出て来る人物が、どいつもこいつもダメ人間ばっか。

で、そいつらと同じくらいダメ人間の主人公が、事件に関わった人物たちに当時の話を聞きに行く。
すると、次に会うべき人物のヒントをもらう。
で、その人に会うと、次のヒントが・・・・・。

その合間合間に、事件が起きる前の、過去のシーンが差し挟まれる。

最初は混乱したけど、最終的には、「あぁ、そういうことだったのか」と腑に落ちる・・・・・・・、だけれども、まぁ、終わってしまえば、結構「予想通りね」というオチ。
無理などんでん返しをすると、それはそれで、興醒めだから、程よいバランスなんだろうけど。

それにしても、本筋とは、まったく無関係と思われていた事件が唐突に絡んで、さらに犯人判明って、・・・・・・うーむ。
原作の方は、きっと、丁寧に伏線を貼っているのだろうと思われますが。
二時間映画だから、本筋を追うのが精一杯なんだろうなぁ。


シャーリーズ・セロンと言えば、「モンスター」での熱演(怪演)が印象深いから、そんなの期待していたけど、まぁぶっちゃけ、今作は普通のサスペンス映画でした。

ダーク・プレイス [Blu-ray]
by カエレバ

2016年9月21日水曜日

萌えアニメの名工房「京都アニメーション」が送り出した「聲の形」



泣くな


かつて、鳴り物入りで掲載されたオリジナルの「聲の形」(短編)は、「マガジン」を購読していたので、リアルタイムで読みました。

少年誌でありながら、「障害者」への「いじめ」を扱った点は、「英断だなー」とは思ったけど、作品としては、「まぁ佳作かな」といった程度の感想でした。
その後、購読を止めてしまったので、改めて連載された長編バージョンの方は、読む機会がなく現在に至る。

で、「あの京アニがアニメ化する」と聞いたときは、「英断だなー」とは思ったけど、まぁそれ以下でもそれ以上でもなく。正直、大して期待はしていませんでした。

そして、2016年。

「シン・ゴジラ」の波が去る前に、新海誠監督「君の名は。」ブームが到来、まだまだヒット街道驀進中ですが、その監督から、


という評価をもらっているのは、さて、社交辞令なのか、本心なのか。

もう「君の名は。」を見て、アニメ欲(?)みたいなものが満たされてしまって、「別になぁ・・・・・」と思っていたけど、前評判は上々。
「大してすることもないし」という消極的な理由で、休日に映画館に行ってみましたが、中高生だらけで。

席も後ろの方は埋まっていて、「あぁ、失敗した」と思いつつ、スクリーンを見上げるような席を確保。

で、いろんな映画の予告が流れ始めるんだけども、後ろの中高生たちが、クチャクチャしゃべっているんですよ。
両隣が空いているのが、せめてもの救いだったのですが、上映直前になってカップル登場。しかも、隣は男が座りやがる。

で、この男が上映中に、声が聞こえるくらいに泣き出すわけだ。

「おいおい、彼女連れで、男がアニメで泣くんじゃねーよ」と思ったもの、当の私も涙が出ておりました・・・・・・。

現代日本の「罪と罰」


「京都アニメーション」(通称「京アニ」)と言えば、「涼宮ハルヒ」や「らき☆すた」「けいおん!」とか、萌えアニメをつくらせたら天下一品というのが、僕のイメージです。

そういうアニオタに刺さりやすい作品に長けている会社が、「障害者」への「いじめ」を扱った作品を映像化するというのは、どういうもんなんだ?
下手をすれば、安易な感動作にしてしまって、いわゆる「感動ポルノ」批判も有り得るわけで、・・・・・・・しかし、開始数分、特に、聴覚障害者である西宮が転校してきて、最初は受け入れようとしたものの、徐々にクラスのお荷物扱いにされてしまうという短いながらも、リアルで残酷なシーケンスを見せられて、圧倒。「これは本気でつくっているんだ」と納得。

もう、そのころには館内も静まり返っていました。


この映画では、「障害者」への「いじめ」、そして、少年の「贖罪」の過程が描かれています。

多くの日本人は、小中と学校生活を送ってきています。
身近に障害者がいなかったとしても、異質なるものを排除しようと動いたことや、または実際に排除されたという経験は、誰にもあると思います。(「日本」の「学校生活」に限った話ではありませんが)
仮に、そのような行為とは無縁であり、また、うまく立ち回って排除される立場に追いやられることはなかったとしても、個人の行為や集団の動きを見たことはあるのでは?

さて、その時、制止することはできたでしょうか? まぁ、時には、したかもしれません。
しかし、全部は無理でしょう。

傍観を決め込んだことだって、あるのではないでしょうか?

もし、自分は完璧だと自信を持って言える人がいたら、どうぞ石を投げなさい・・・・・。


映画においては、加害者と被害者、そして傍観者も登場し、痛々しい言葉の応酬となり、さらには暴力となってぶつかり合います。

キャラクターの造形、特に女性側は、京アニらしく非常に可愛らしく描かれています。
楽器でも持たせてバンドなり吹奏楽なりやらせたら、人気が出てフィギュアもバンバン売れそうな感じです。

なんだけれども、多くの日本人の奥底に眠っている罪悪感やらトラウマを引きずり出すような、非常に残酷な物語になっているんだよね。
現代日本版「罪と罰」は、萌えアニメの様相で表現されるのか・・・・。(首相がマリオに扮するくらいの「現代日本」だからね)


※ただしイケメンに限る


この「萌えアニメ」の器を利用したというのが、良いんだか悪いんだか。


可愛らしく描かれた西宮が、劇中において初の発声シーンには、衝撃を受けました。

通常のアニメ文法で描かれているキャラクターに、聴覚障害者特有の声をかぶせることの違和感。
この違和感は、これまでアニメ作品が取り扱ってこなかったことの裏返しだよね。


また、植野という美少女から出た、言うなれば「障害者などいなくなってしまえ」という発言は、相模原で障害者施設殺傷事件が起きてしまった現在では、原作者・製作者が、どこまで意図したのかは分かりませんが、見た目と発言のギャップは、物語に独特のテイストを加味することになっていました。


が!

「※ただしイケメンに限る」でして、原作に沿っているとは言え、ヒロイン西宮。劇場版ということで、萌えの匠たちが技量のあらん限りで可愛らしく描いており、そりゃ、「物語なんてそんなもんだよ。アニメに限った話じゃないでしょ?」とは分かりつつも、結局、美少女だから救われてんじゃんと、まぁ、いやらしいことを思わんでも。

女キャラは、とにかく美人。母親たちまで、美魔女という豪華な布陣。
まぁ、原作が、そうなんだから、仕方ないんだろうけど。


で、物語の根幹に関わるツッコミとしては、(ネタバレでなんですが)・・・・・・・いじめの被害者が、加害者に惚れるって・・・・そりゃ、あまりにも、ファンタジーだよね。
ファンタジーだから、ラストに「救い」もあるわけで、それを一概に否定するのも無粋だとは思うものの・・・・。

いじめの被害者・加害者を同性にして、最終的に友情が成立するという流れの方がリアルではあるんだろうけど、そうすると物語のダイナミズムに欠けるのかな~。

女性監督


こまかいツッコミを入れると、そりゃ、なんだってキリがないのですが(主人公の自転車が変わったのは、なんか説明があった?)、障害者であり「いじめ」を経験して自己肯定感が持てないヒロインと、その「いじめ」の加害者であり、また被害者にもなる主人公も、その罪と罰で自己肯定感を持てず、その二人の心理の行き来を細やかに描けているのは(もちろん、原作の力もあるのだろうが)、素晴らしかったです。


何度となく描かれる、水への飛び込みシーン。

googleで、「夢判断 飛び込み」と検索すると、「新しい世界への飛躍」といった感じの言葉が並んでいます。

まぁ、そんな当たるも八卦当たらぬも八卦な夢判断を援用しなくても、絵のイメージからしても、地上から水への飛び込みというのは、大変動きのあるものになります。

で、実際、ダイブシーンを契機にして、物語が動くことが多い。

(ネタバレですが)その最たるものは、当然、ヒロインの投身自殺。
これは、オープニングの主人公の自殺シーンと重なるわけでして、どちらも花火が打ち上がっていることから、製作者の意図的な「対」と言っていいでしょう。

主人公の自殺は未遂に終わり、直ぐに母親によって「身勝手」と批判されます。

その代わりに、主人公は、ヒロインの自殺の身代わりとなる。

ドストエフスキーの「罪と罰」において、主人公のラスコーリニコフは、裁判では真の意味で自らの行為を理解できず、流刑地の日々において神の存在を認識して、ようやく「罪」を自覚します。

「聲の形」においては、この自殺の身代わりによって、他人の向き合ってこなかった自らの「罪」に気付く。(それは西宮の闇に気が付いてやれなかった、ということでもあるのかな?)


そういった、細やかな流れというのは女性監督ならではなのかな~。(女性だから繊細な心理描写という、ありがちなコメント・・・・・)


で、今作の監督・山田尚子さん。wiki見たら、まだ31才だって。

こりゃ、まだまだ活躍が期待できますね。

■業界では珍しくない女性アニメ監督 - Togetterまとめ

アニメにおいても、ガラスの天井は既に破られているようだけれども、宮崎駿監督筆頭の大御所、庵野秀明・細田守、そして、「君の名は。」で一気にメジャー化した新海誠監督等の中堅など、やっぱり、まだまだ男性ばっかりなのかな~というイメージが個人的にはあります。

が、今作を見ていると、新しい時代が来ようとしているのかね~。(さて、ゲーム業界で、女性クリエイターが前面に出て来るのは、いつごろなのかな)


聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)
by カエレバ

2016年9月18日日曜日

映画「シチズンフォー  スノーデンの暴露」の感想



NSA(アメリカ国家安全保障局)の、違法(?)な国民監視の実態を告発したエドワード・スノーデン氏のドキュメンタリー映画「シチズンフォー  スノーデンの暴露」を見てきました。

エドワード・スノーデン氏からの記者への接触、スクープ記事掲載による世間の反応、及び、スノーデン氏が亡命を余儀なくされる顛末などが描かれておりました。


中心となっているのは、スクープ記事掲載直前に、香港へ移動した彼へのインタビューです。

ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏なんかは、山師的なところがあるように見えるが(個人的な感想です)、このインタビューを見ると、エドワード・スノーデン氏は、アメリカ人らしい価値観と使命感をもって告発に挑んだんだなぁー、というのがよく分かりました。


一方で、NSAの国民監視の方法と、その違法性についての説明は少なめ。

また、NSAの監視がどのように活用されて、アメリカの国益にかなったのか(実際にテロを防げたのか?)?、また報道以降、NSAは活動を自粛しているのか? なんて疑問が浮かんできたけど、そういうことには答えてくれないわけでして、・・・・・・ちょっと物足りなかったですね。


暴露―スノーデンが私に託したファイル―
by カエレバ

2016年9月14日水曜日

新海誠「君の名は。」感想


売れるなぁ


「今年はシン・ゴジラで決まりだな、ありがとう庵野監督」と思っていましたが、新海誠監督の「君の名は。」が登場すると、巷の話題はすっかり奪われてしまった模様。

興行収入も猛追。

年に二作も、オタク系で話題作が出るなんて・・・・・・と、驚いている次第。


これまでの新海誠監督作品は、ちょろちょろ見ています。

が、どうもナイーブというか、繊細が過ぎるというか。

悪く言うと、おセンチなんだよね。(古い表現だな)


「秒速5センチメートル」なんかは、それが、うまーく作用していたと思うけど。

一方、直近の作品である「言の葉の庭」は、ちょっと、まぁ、なんか自己に酔っていると言うか、あまりにデリケートと言うか。
どうにも、見ていて恥ずかしかったなぁ・・・・・。


「君の名は。」も、当初は映画館に行くまでもないか、まぁ配信なりDVDで見れば事足りるだろうと思っておりましたが、あまりのウナギ登りの評判に、交通費を千円かけて見てきました。


とりあえず、世評通り面白かったです。

作品の完成度としては、「秒速5センチメートル」も超えたと思います。

冒頭はゆっくりとしたテンポで二人の主人公の日常を丁寧に描き、中盤からの急転直下、そして何気なく撒かれていた伏線を使っての救出劇で、最終的にはホッとするラスト。

緩急は巧みでしたし、まだあどけない少年少女の純愛を下敷きというのは鉄板の材料でして、311以降だからこそ身につまされるカタストロフィを差し込みつつ、物語は人々の願望の反映であるからこその惨劇の回避など、・・・・・・まぁ、そりゃ、ヒットするわけだよ。


思い出すこと




「君の名は。」を見ていて、ちょっと思い出したのは、渡辺麻友さんの声優が妙に上手だった「ねらわれた学園」。(ストーリーが複雑な割には、妙にアニメちっくな演出が過多だったなぁ・・・・)

あっちも、キラッキラッした絵の中で、日常生活を描きつつ、SF的な仕掛けを駆使して、最終的には世界が救われ、主人公たちも結ばれる、という流れは、なんとなーく通底しるんだが、まぁ、アニメの「ねらわれた学園」も、大林宣彦監督の「ねらわれた学園」があってのもの。

そして、「君の名は。」の男女入れ替えも、やはり大林宣彦監督の「転校生」、未来人と少女の初恋は「時をかける少女」の影響下にあるわけでして。

そういう意味では、「君の名は。」は、ジュブナイル邦画の系譜にしっかりと乗っかり、かつ一つの到達点と言えるんだろうなぁ。


by カエレバ