2016年10月3日月曜日

クリント・イーストウッド監督「ハドソン川の奇跡」


いつ死ぬんだよ


現代の馬援と言えば、クリント・イーストウッド。

御年86才。

まだ新作映画をつくるよ・・・・・・。

前作、「アメリカン・スナイパー」も、とても80を超えた監督の作品とは思えない、現代の映画でした。
クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」の感想


そして、今作は、2009年にアメリカで起こった「USエアウェイズ1549便不時着水事故」を扱っています。
USエアウェイズ1549便不時着水事故 - Wikipedia

たった七年前の出来事。

まぁ、ほんと、「老いてはいよいよ壮(さかん)」です。(下衆の勘繰りだけど、スタッフが優秀なんだろうなぁとは思ってしまうけど。まぁ、その優秀なスタッフの中心に、たとえ象徴としても存在していることで、名作が生まれるのなら、それはそれで、スゴイのだが)

バランス感覚


クリント・イーストウッド監督と言えば、ゴリゴリの共和党支持者として有名です。(ハリウッドでは、民主党支持が優勢で、珍しい存在なのでは?)

クリント・イーストウッドがトランプ氏支持 「軟弱な時代だ。誰もが発言に細心の注意を払う」

民主党憎しで、トランプ氏でも許容してしまう、「器の大きさ」というか、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というか、「敵の敵は味方」というか。(THE共和党であるレーガンの後継者として共和党大統領となったパパ・ブッシュ氏も、「こりゃ、駄目だ」と匙を投げましたが・・・・・・。■ブッシュ父「クリントン氏に投票する」 共和党の元大統領が異例の告白)


政治的には、ちょっと偏ったところがあるんだけれども、そして、年を取れば、より偏狭になるものだが、つくる映画は、けっこうバランスがとれているんだよね。

日本でも、たまぁーに、保守色濃厚な作品がつくられることがあるけど、所詮、国内限定にならざる得ない。

それに比べると、クリント・イーストウッド監督の作品は、日本人でも十分に理解できる普遍性を持っているわけで、なんだか不思議。
「優秀なスタッフが、下支えしてるんじゃねーの?」と勘繰りたくなるわけです。

あらすじ


で、「ハドソン川の奇跡」。原題は、機長のニックネーム「Sully」。
まぁ、分かりやすいタイトルが求められるし、「Sully」では意味分からんなのだが、それにしても、身も蓋もない邦題だね。

作品の粗筋。
バードストライクで飛行不能になった飛行機を、機長は見事にハドソン川に着水、奇跡的に乗客乗員に死者を出すことはなかった。

偉業に対して、マスコミは賞賛を惜しまない一方で、政府は、「本当は空港まで戻ることが出来たのに、機長の判断ミスで着水したのではないか?」と疑い始めるのであった・・・・。


「父親たちの星条旗」「アメリカン・スナイパー」でも、一般人が、英雄と讃えられる一方で、歴史・社会・政府に翻弄されるという物語でした。

「硫黄島からの手紙」も、栗林中将はモンスターや英雄というよりも、一人の人間として描かれていましたし、「インビクタス/負けざる者たち」のマンデラ大統領も、似た感じかな? そもそも、主人公は、マンデラ大統領ではなく、(一応は)選手だし。

「ハドソン川の奇跡」も、そんな流れの作品です。


映画の主人公を演じるのは、善人「トム・ハンクス」。

突然の大衆からの英雄視に戸惑いながらも自分を見失ず、家族への愛を忘れず、驕ることなく、かと言って卑下することもない機長が描かれています。
こういうのが、「宣伝くせー」とはならず、「ほっこり」として受け入れられるのも、さすがトム・ハンクスさんです。


でも、映画内では、分かりやすいニコニコ顔は封印。
敢えて渋面ばかり、・・・・・・でも、善人という演技。ここらへんは、ちょっとヒネったね、という感じ。

なんで、そんな顔になってしまったかと言うと、絶えず政府からミスを疑われているから。

偉くなくとも


主人公は、アメリカ社会において、妻を娶り、子供をもうけ、40数年間、パイロットして粛々と仕事をこなしてきた。
それは、英雄的な行為ではないかもしれないが、アメリカ社会に限らず、ある地域・組織・団体においては、決して恥ずべき経歴ではない。

そして、その地道な積み重ねがあって、「ハドソン川の奇跡」を成し遂げることが出来た。
不幸中の幸い。

しかし、劇中において、機長を追及する側の人間たちは、その粛々と生きてきた彼の人生を、まったく省みようとはしない。

単純にコンピューターのシュミレーションから、「こういう可能性があったはず」と責め立てる。(現代的な世知辛さと言いたいところですし、映画内でも、どことなくそんな雰囲気ですが、まぁ、いつの時代も似たようなもんでしょうね・・・・・・)

よしんば彼の判断が間違っていたとしても、最悪の事態を想定して、現場で出来うる最高の判断を下しに過ぎない。
己の技量を最大限に発揮しての着水だったはず。


ここらへんの、

・「偉くなくとも正しく生きる」を地でいっていたような人物

と、

・傲慢な政府(官僚組織)

の対比は、すごく健全な保守思想を背景にしているようなぁー、個人的には思いました。

で、まぁ最終的には、機長の昔ながらの経験やら知見の積み重ね(過去こそが大事という意味での「保守」ですな)が勝利するんだけどね。


上映時間は90分。

物語上、盛り上がるのは、当然、「飛行機が不調となり、川に着水するまでの流れ」。
普通に考えると、冒頭か最後に挿入するしかないように思えるんだが、映画では、ある程度物語が進行してから、不時着のシーンが挿入される。

しかも二回も。

普通、こんなことしたら、「なんだか冗長だなー、繰り返す必要あるの?」と思ってしまうけど、「機長の判断の、なにが問題とされているのか?」が明確になってから、再度の着水シーンになるので、ちゃんと緊張感を伴って見ることが出来る。

ここらへんのさじ加減も、絶妙ね。

で、映画内では、家族愛を描きつつ、夫婦愛で留めて、無理に娘達を絡ませないあたりも、「分かっているなぁー」。

なんだけれども、あんまりにも、まとまりが良くてねー。
そのせいで、逆に、小品に留まってしまった感じがします。

ハドソン川の奇跡
by カエレバ

2016年9月22日木曜日

映画「ダーク・プレイス」の感想


シャーリズ・セロン主演の、ミステリー映画「ダーク・プレイス」。

そんな期待しないで見に行ったら、やっぱり、「まぁこんなもんか」くらいに収まる感じの作品でした。

つまらなかったわけじゃないんだけどね。

こんな感じの物語


シャーリズ・セロン演じる女主人公は、小さい頃に、実の兄によって家族を惨殺されてしまったという、悲惨な過去を背負っている。

だが、この「悲惨な過去」のおかげで、多くの寄付が全米から集まっており、悠々自適に暮らしていた。

が、それも、「これまでは」のお話。

毎日楽しく暮らしていたら、当然、お金もなくなるわけで。
人々の記憶も薄れ、かつて発売した自伝も、もう話題にはならず。

いままで働いたこともないので、今更、就職なんてこともする気がない。
どうにかならんかと困っているところに、「殺人クラブ」という奇妙なサークルから、過去の事件について語って欲しいと誘いを受ける。

家族の事件を思い出すのは本意ではないが、背に腹は代えられない。
報酬の為に、「殺人クラブ」に赴き、事件と改めて対峙することになった主人公。

彼らと接しているうちに、事件は報道されているような単純なものではなかったことを、知ることになる・・・・・・。

終わってみれば


まぁ出て来る人物が、どいつもこいつもダメ人間ばっか。

で、そいつらと同じくらいダメ人間の主人公が、事件に関わった人物たちに当時の話を聞きに行く。
すると、次に会うべき人物のヒントをもらう。
で、その人に会うと、次のヒントが・・・・・。

その合間合間に、事件が起きる前の、過去のシーンが差し挟まれる。

最初は混乱したけど、最終的には、「あぁ、そういうことだったのか」と腑に落ちる・・・・・・・、だけれども、まぁ、終わってしまえば、結構「予想通りね」というオチ。
無理などんでん返しをすると、それはそれで、興醒めだから、程よいバランスなんだろうけど。

それにしても、本筋とは、まったく無関係と思われていた事件が唐突に絡んで、さらに犯人判明って、・・・・・・うーむ。
原作の方は、きっと、丁寧に伏線を貼っているのだろうと思われますが。
二時間映画だから、本筋を追うのが精一杯なんだろうなぁ。


シャーリーズ・セロンと言えば、「モンスター」での熱演(怪演)が印象深いから、そんなの期待していたけど、まぁぶっちゃけ、今作は普通のサスペンス映画でした。

ダーク・プレイス [Blu-ray]
by カエレバ

2016年9月21日水曜日

萌えアニメの名工房「京都アニメーション」が送り出した「聲の形」



泣くな


かつて、鳴り物入りで掲載されたオリジナルの「聲の形」(短編)は、「マガジン」を購読していたので、リアルタイムで読みました。

少年誌でありながら、「障害者」への「いじめ」を扱った点は、「英断だなー」とは思ったけど、作品としては、「まぁ佳作かな」といった程度の感想でした。
その後、購読を止めてしまったので、改めて連載された長編バージョンの方は、読む機会がなく現在に至る。

で、「あの京アニがアニメ化する」と聞いたときは、「英断だなー」とは思ったけど、まぁそれ以下でもそれ以上でもなく。正直、大して期待はしていませんでした。

そして、2016年。

「シン・ゴジラ」の波が去る前に、新海誠監督「君の名は。」ブームが到来、まだまだヒット街道驀進中ですが、その監督から、


という評価をもらっているのは、さて、社交辞令なのか、本心なのか。

もう「君の名は。」を見て、アニメ欲(?)みたいなものが満たされてしまって、「別になぁ・・・・・」と思っていたけど、前評判は上々。
「大してすることもないし」という消極的な理由で、休日に映画館に行ってみましたが、中高生だらけで。

席も後ろの方は埋まっていて、「あぁ、失敗した」と思いつつ、スクリーンを見上げるような席を確保。

で、いろんな映画の予告が流れ始めるんだけども、後ろの中高生たちが、クチャクチャしゃべっているんですよ。
両隣が空いているのが、せめてもの救いだったのですが、上映直前になってカップル登場。しかも、隣は男が座りやがる。

で、この男が上映中に、声が聞こえるくらいに泣き出すわけだ。

「おいおい、彼女連れで、男がアニメで泣くんじゃねーよ」と思ったもの、当の私も涙が出ておりました・・・・・・。

現代日本の「罪と罰」


「京都アニメーション」(通称「京アニ」)と言えば、「涼宮ハルヒ」や「らき☆すた」「けいおん!」とか、萌えアニメをつくらせたら天下一品というのが、僕のイメージです。

そういうアニオタに刺さりやすい作品に長けている会社が、「障害者」への「いじめ」を扱った作品を映像化するというのは、どういうもんなんだ?
下手をすれば、安易な感動作にしてしまって、いわゆる「感動ポルノ」批判も有り得るわけで、・・・・・・・しかし、開始数分、特に、聴覚障害者である西宮が転校してきて、最初は受け入れようとしたものの、徐々にクラスのお荷物扱いにされてしまうという短いながらも、リアルで残酷なシーケンスを見せられて、圧倒。「これは本気でつくっているんだ」と納得。

もう、そのころには館内も静まり返っていました。


この映画では、「障害者」への「いじめ」、そして、少年の「贖罪」の過程が描かれています。

多くの日本人は、小中と学校生活を送ってきています。
身近に障害者がいなかったとしても、異質なるものを排除しようと動いたことや、または実際に排除されたという経験は、誰にもあると思います。(「日本」の「学校生活」に限った話ではありませんが)
仮に、そのような行為とは無縁であり、また、うまく立ち回って排除される立場に追いやられることはなかったとしても、個人の行為や集団の動きを見たことはあるのでは?

さて、その時、制止することはできたでしょうか? まぁ、時には、したかもしれません。
しかし、全部は無理でしょう。

傍観を決め込んだことだって、あるのではないでしょうか?

もし、自分は完璧だと自信を持って言える人がいたら、どうぞ石を投げなさい・・・・・。


映画においては、加害者と被害者、そして傍観者も登場し、痛々しい言葉の応酬となり、さらには暴力となってぶつかり合います。

キャラクターの造形、特に女性側は、京アニらしく非常に可愛らしく描かれています。
楽器でも持たせてバンドなり吹奏楽なりやらせたら、人気が出てフィギュアもバンバン売れそうな感じです。

なんだけれども、多くの日本人の奥底に眠っている罪悪感やらトラウマを引きずり出すような、非常に残酷な物語になっているんだよね。
現代日本版「罪と罰」は、萌えアニメの様相で表現されるのか・・・・。(首相がマリオに扮するくらいの「現代日本」だからね)


※ただしイケメンに限る


この「萌えアニメ」の器を利用したというのが、良いんだか悪いんだか。


可愛らしく描かれた西宮が、劇中において初の発声シーンには、衝撃を受けました。

通常のアニメ文法で描かれているキャラクターに、聴覚障害者特有の声をかぶせることの違和感。
この違和感は、これまでアニメ作品が取り扱ってこなかったことの裏返しだよね。


また、植野という美少女から出た、言うなれば「障害者などいなくなってしまえ」という発言は、相模原で障害者施設殺傷事件が起きてしまった現在では、原作者・製作者が、どこまで意図したのかは分かりませんが、見た目と発言のギャップは、物語に独特のテイストを加味することになっていました。


が!

「※ただしイケメンに限る」でして、原作に沿っているとは言え、ヒロイン西宮。劇場版ということで、萌えの匠たちが技量のあらん限りで可愛らしく描いており、そりゃ、「物語なんてそんなもんだよ。アニメに限った話じゃないでしょ?」とは分かりつつも、結局、美少女だから救われてんじゃんと、まぁ、いやらしいことを思わんでも。

女キャラは、とにかく美人。母親たちまで、美魔女という豪華な布陣。
まぁ、原作が、そうなんだから、仕方ないんだろうけど。


で、物語の根幹に関わるツッコミとしては、(ネタバレでなんですが)・・・・・・・いじめの被害者が、加害者に惚れるって・・・・そりゃ、あまりにも、ファンタジーだよね。
ファンタジーだから、ラストに「救い」もあるわけで、それを一概に否定するのも無粋だとは思うものの・・・・。

いじめの被害者・加害者を同性にして、最終的に友情が成立するという流れの方がリアルではあるんだろうけど、そうすると物語のダイナミズムに欠けるのかな~。

女性監督


こまかいツッコミを入れると、そりゃ、なんだってキリがないのですが(主人公の自転車が変わったのは、なんか説明があった?)、障害者であり「いじめ」を経験して自己肯定感が持てないヒロインと、その「いじめ」の加害者であり、また被害者にもなる主人公も、その罪と罰で自己肯定感を持てず、その二人の心理の行き来を細やかに描けているのは(もちろん、原作の力もあるのだろうが)、素晴らしかったです。


何度となく描かれる、水への飛び込みシーン。

googleで、「夢判断 飛び込み」と検索すると、「新しい世界への飛躍」といった感じの言葉が並んでいます。

まぁ、そんな当たるも八卦当たらぬも八卦な夢判断を援用しなくても、絵のイメージからしても、地上から水への飛び込みというのは、大変動きのあるものになります。

で、実際、ダイブシーンを契機にして、物語が動くことが多い。

(ネタバレですが)その最たるものは、当然、ヒロインの投身自殺。
これは、オープニングの主人公の自殺シーンと重なるわけでして、どちらも花火が打ち上がっていることから、製作者の意図的な「対」と言っていいでしょう。

主人公の自殺は未遂に終わり、直ぐに母親によって「身勝手」と批判されます。

その代わりに、主人公は、ヒロインの自殺の身代わりとなる。

ドストエフスキーの「罪と罰」において、主人公のラスコーリニコフは、裁判では真の意味で自らの行為を理解できず、流刑地の日々において神の存在を認識して、ようやく「罪」を自覚します。

「聲の形」においては、この自殺の身代わりによって、他人の向き合ってこなかった自らの「罪」に気付く。(それは西宮の闇に気が付いてやれなかった、ということでもあるのかな?)


そういった、細やかな流れというのは女性監督ならではなのかな~。(女性だから繊細な心理描写という、ありがちなコメント・・・・・)


で、今作の監督・山田尚子さん。wiki見たら、まだ31才だって。

こりゃ、まだまだ活躍が期待できますね。

業界では珍しくない女性アニメ監督 - Togetterまとめ

アニメにおいても、ガラスの天井は既に破られているようだけれども、宮崎駿監督筆頭の大御所、庵野秀明・細田守、そして、「君の名は。」で一気にメジャー化した新海誠監督等の中堅など、やっぱり、まだまだ男性ばっかりなのかな~というイメージが個人的にはあります。

が、今作を見ていると、新しい時代が来ようとしているのかね~。(さて、ゲーム業界で、女性クリエイターが前面に出て来るのは、いつごろなのかな)


聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)
by カエレバ

2016年9月18日日曜日

映画「シチズンフォー  スノーデンの暴露」の感想



NSA(アメリカ国家安全保障局)の、違法(?)な国民監視の実態を告発したエドワード・スノーデン氏のドキュメンタリー映画「シチズンフォー  スノーデンの暴露」を見てきました。

エドワード・スノーデン氏からの記者への接触、スクープ記事掲載による世間の反応、及び、スノーデン氏が亡命を余儀なくされる顛末などが描かれておりました。


中心となっているのは、スクープ記事掲載直前に、香港へ移動した彼へのインタビューです。

ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏なんかは、山師的なところがあるように見えるが(個人的な感想です)、このインタビューを見ると、エドワード・スノーデン氏は、アメリカ人らしい価値観と使命感をもって告発に挑んだんだなぁー、というのがよく分かりました。


一方で、NSAの国民監視の方法と、その違法性についての説明は少なめ。

また、NSAの監視がどのように活用されて、アメリカの国益にかなったのか(実際にテロを防げたのか?)?、また報道以降、NSAは活動を自粛しているのか? なんて疑問が浮かんできたけど、そういうことには答えてくれないわけでして、・・・・・・ちょっと物足りなかったですね。


暴露―スノーデンが私に託したファイル―
by カエレバ

2016年9月14日水曜日

新海誠「君の名は。」感想


売れるなぁ


「今年はシン・ゴジラで決まりだな、ありがとう庵野監督」と思っていましたが、新海誠監督の「君の名は。」が登場すると、巷の話題はすっかり奪われてしまった模様。

興行収入も猛追。

年に二作も、オタク系で話題作が出るなんて・・・・・・と、驚いている次第。


これまでの新海誠監督作品は、ちょろちょろ見ています。

が、どうもナイーブというか、繊細が過ぎるというか。

悪く言うと、おセンチなんだよね。(古い表現だな)


「秒速5センチメートル」なんかは、それが、うまーく作用していたと思うけど。

一方、直近の作品である「言の葉の庭」は、ちょっと、まぁ、なんか自己に酔っていると言うか、あまりにデリケートと言うか。
どうにも、見ていて恥ずかしかったなぁ・・・・・。


「君の名は。」も、当初は映画館に行くまでもないか、まぁ配信なりDVDで見れば事足りるだろうと思っておりましたが、あまりのウナギ登りの評判に、交通費を千円かけて見てきました。


とりあえず、世評通り面白かったです。

作品の完成度としては、「秒速5センチメートル」も超えたと思います。

冒頭はゆっくりとしたテンポで二人の主人公の日常を丁寧に描き、中盤からの急転直下、そして何気なく撒かれていた伏線を使っての救出劇で、最終的にはホッとするラスト。

緩急は巧みでしたし、まだあどけない少年少女の純愛を下敷きというのは鉄板の材料でして、311以降だからこそ身につまされるカタストロフィを差し込みつつ、物語は人々の願望の反映であるからこその惨劇の回避など、・・・・・・まぁ、そりゃ、ヒットするわけだよ。


思い出すこと




「君の名は。」を見ていて、ちょっと思い出したのは、渡辺麻友さんの声優が妙に上手だった「ねらわれた学園」。(ストーリーが複雑な割には、妙にアニメちっくな演出が過多だったなぁ・・・・)

あっちも、キラッキラッした絵の中で、日常生活を描きつつ、SF的な仕掛けを駆使して、最終的には世界が救われ、主人公たちも結ばれる、という流れは、なんとなーく通底しるんだが、まぁ、アニメの「ねらわれた学園」も、大林宣彦監督の「ねらわれた学園」があってのもの。

そして、「君の名は。」の男女入れ替えも、やはり大林宣彦監督の「転校生」、未来人と少女の初恋は「時をかける少女」の影響下にあるわけでして。

そういう意味では、「君の名は。」は、ジュブナイル邦画の系譜にしっかりと乗っかり、かつ一つの到達点と言えるんだろうなぁ。


by カエレバ

2016年8月14日日曜日

新作「ゴーストバスターズ」を見てきた

続編というかリボーンというかリスタートというかリブートというか


見たことがない人でも、テーマ曲は聞いたことがあり、「あぁ、ゴーストバスターズの曲ね」と分かるくらいに知れ渡っている作品です。

ハリウッドのネタ切れもありまして、 昨今のリブートブームに乗って新作がつくられました。

1も2も見たことがあるはずなのですが、幼少期のことなので、ほとんど内容は忘れています。

が、1980年代のアメリカ映画らしく、とてもワクワクする映画だったのは、なんとなく覚えています。


で、今作。



映画「ゴーストバスターズ」最新作予告編が公開されるも大ブーイングを受けるなど賛否両論

個人的には別段気にならなかったのですが、あんまり予告編(前評判)は、良くなかったですね。


さて、実際見てみました。

まぁ前作は、ほとんど覚えていないので、比較はできないので、純粋に今作の評価になるのですが、・・・・・・うーん。

少なくともワクワク感はなかったですね。

単純に私が年を取ったのか、作品のレベルがイマイチだったのか・・・・。

隣の隣にカップルがいて、女性(20代前半?)は、けっこう声を出して笑っていたんですよ。

なので、自分(男性)の肌には合わなかっただけなのかね~。

あらすじ


主人公の女性は、大学教授。終身雇用の権利を得ようと必死になっている最中。
そんな大事な時期に、幽霊を退治して欲しいという、珍妙な依頼を受ける。
そこで、かつて友人と書いたオカルト本が出版されていることを知る。

「これはマズイ」と、直ぐに旧友に抗議へ。
未だに幽霊の存在を信じている旧友は、聞く耳を持たず。

そこで、幽霊退治の依頼を仲介してやるので、出版を撤回してもらうように持ち掛ける。

大喜びの旧友と一緒に、主人公は依頼主のところへ向かうのであった・・・・・。

女性による女性の為の映画?


敢えて女性四人組、さらに中年。

全盛期のキャメロン・ディアスの美貌に頼っていた「チャーリーズ・エンジェル」なんかと比べると、「どの層を狙っているんだ!?」と不安になるような布陣。

男に媚びるような作品はつくらん! という製作者の意図が透けて見えます。


昨今のブロックバスター映画なら、ゲップが出るくらいにCGが冒頭から尾っぽまで詰まっているのですが、この作品は、女性たちの掛け合いにも時間が割かれています。

ここらへんも、女性の観客を意識した配合なのかな?

ネタバレ


で、まぁネタバレです。

幽霊退治(ゴーストバスター)なんて、権威には相手にされていない世界。
そこに従事する人間というのは、現代では女性こそが相応しいということなんでしょう。

女性主人公たちを大学(権威)から追い出すのは、男だったし。


他に登場する男たちも、(作品がコメディということもあって)どれもこれも、一癖二癖あり。

その中で、重要な役割を担う二人の男性。


一人は、彼女たちの補佐。
マッチョの美男子だけど、脳みそからっぽ。

電話の応対も出来ないような、ダメダメ。

戦力になるどこか、足を引っ張るタイプ。


もう一人は、幽霊を現実世界に解き放つ黒幕。
ネクラの童貞こじらせ小デブ。

この重要な二人は、物語の途中で合体してしまう。


「イケメンもキモメンも、どっちも女の敵じゃーい」ということなのか?


で、この男が霊界と現世の壁に穴を開け、ニューヨークは幽霊で大パニックに。

警官や軍隊(ものの見事に、男性ばかり)が出動するが、まったく役に立たず。(踊るだけ)

結局、ゴーストバスターズチーム(全員女性)の活躍によって、世界は救われる。


・・・・・・男尊女卑ならぬ、女尊男卑だねー。


ラストで友情を取り戻し、二人の女性の髪が白髪になってしまうのは、老化のメタファーとも捉えることが出来るわけでして、いろいろあったけど、新しい研究施設も手に入って、仲良しの女性四人で、これからもガンバロー的な終わりは、「年を取っても、女だけで仲良く。もう男になんか頼らないし、男の面倒を見るのもやなこったい」という、まぁ、現代女性の願望につながっているようにも見えます。


娯楽映画なので「政治性」というものが前面に押し出されているわけではないし、無理にほじくり出す必要もないのでしょうが、どうも、イマイチ楽しめなかったせいで、そこらへんに原因があるのかな~などと思ってしまいますが、所詮、屁理屈です。


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by カエレバ

2016年8月7日日曜日

ありがとう、庵野秀明監督「シン・ゴジラ」


ついに庵野監督がメジャー世界に羽ばたくか!?



庵野秀明監督は「エヴァンゲリオン」の成功の後は、村上龍さんの「ラブ&ポップ」、永井豪さんの「キューティー・ハニー」を実写化したりして、まぁ、それなりに話題にはなったけど、・・・・・・「それなり」という感じでした。

面白かったけどね。


結局、最近になって、エヴァをリブート、まんまと大ヒット。

まぁ、こちらも面白いから困ったものでして。


でも、個人的には、「このままエヴァだけで、終わってしまうのかね・・・・」という危惧も。


エヴァだって、社会現象にまでなった大ヒットなのは、分かってますよ。
それは、そうなんだが・・・・・・。

超映画批評(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』60点)さんで、
この映画にエヴァンゲリオン初心者の方を連れて行くのはあまりオススメしない。ためしに私は本シリーズを知らないスタッフを連れて行ったが「眠くなるけど(アクションシーンが)うるさくて眠れず、早く終わらないかとずっと思ってた」などと散々な評価であった。
と書かれている。

つい最近お亡くなりになった永六輔さんも、「話題だから見てみたけど、なんだか分からんから、途中で退席したよ」とラジオでおっしゃってました。

アニメ史に残るようなヒット作であって、やっぱりオタクコンテンツから抜け出ていない。(一応言っておくと、オタクコンテンツが悪いわけではないよ)


お師匠筋の宮崎駿監督なら「ナウシカ」(「もののけ姫」か?)、押井守監督なら「GHOST IN THE SHELL」で、オタクの大将から一歩抜け出したのですが、さて、庵野監督は、このままオタクの大将で終わるのかな・・・・・、いや、別にオタクの大将が悪いわけじゃないし、妙に芸術家気取られるくらいなら、清々しいとは思うけどね。

でも、これだけの才能がある人なんだから、メジャーな世界でも通用する作品も見たいなー、とは思っておりました。



・・・・・・そして、「シン・ゴジラ」。

渡辺謙さん主演のハリウッド版「GODZILLA」の成功から、「本家の日本でつくらんで、どうする!?」というライバル意識と危機感で制作が決定。

特撮面では、「進撃の巨人」の酷評から立ち直れるかの、瀬戸際。
今作が失敗すれば、「やっぱり、日本のSF映画は、こんなものか・・・・・。所詮、オタク or マニア向けか、子供相手の商売しか出来ないのね」という失望と失笑が広がるのは必定。

どうなのかね~、いけるのかね~、エヴァの最終作をつくりたくないから逃げてるかね~、・・・・・などと思っておりましたが、ものの見事に傑作を送り出してくれました。

ありがとう、庵野監督。

「THE 日本」が、いいんだか、わるいんだか


今作は、特撮ファン&SFファンだけに限定されることのない物語であり、渡辺謙さんの「GODZILLA」とも違う、オリジナリティに富んだ「今のゴジラ」「庵野監督のゴジラ」でした。

そして、単に優れたエンターテイメント作品であるだけでなく、現代日本に対して、示唆に富む内容。

が、この「現代に日本に対して、大変示唆に富む内容」というのが曲者だったりします。


この作品、えらく、登場人物が多いんだよ。
で、官僚は官僚で、自衛隊は自衛隊で、絶えず会議をしている。

怪獣映画と言うよりも、会議映画ですよ。


確かに、リアリティを生み出す効果はある。
庵野監督らしい、「ハッタリだな」と思わないでもなかったけど、これって、主人公・矢口が率いるチームとの対比で、描かれているんだよね。

縦割り式で、最終的に上の判断が無ければ銃の一発も打てない官僚組織。

で、ありながら、トップの首相は、個人的な思いや政治的信念とは違っていても、周囲からの説得で、あっさり従ってしまう。
日本らしい組織。空気によって物事が運ぶ、無責任の構図。


に、比べて、主人公の矢口チームは、一つの部屋に集まって、縦も横も関係なく、意見を出し合う。
また、リーダーの矢口は、他人からの意見を聞く度量はあるが、自らの決意に忠実で、危険を顧みず現場で指揮をとる。
(人命を前にして、攻撃を止めさせる首相と、最終決戦を前にして躊躇しない矢口も、対比になっていたねー)


で、「普通」の作品だと、
「前者(官僚組織)は悪」
「後者(アウトロー集団、反エスタブリッシュ、反エリート)は善」
と、単純に描いてしまいがちなんだけど、ここが、まぁ、「庵野秀明監督、一皮むけたな~」とうなるところでして、前者にしても、日本的な民主主義として、決して「悪」と描いているわけではない。

だから、最終的には、矢口チームによってゴジラを倒すことに成功するものの、当の矢口は復興にも努力を惜しまないつもりだが、「政治家に大事なのは、出処進退」と口にしている。


初代「ゴジラ」において、圧倒的な力を持つ「ゴジラ」を倒した芹沢博士は、ゴジラを凌駕する力を得た為に、自らを滅ぼさねばいけなかった。

矢口も、自分の行為は、あくまでも非常時の超法規的行為であると自認している。
だからこそ、復興に目処がついたら、自らも身を退かなければいけないと考えているようだし、また、日本の組織においては自分は異端であり、平時においては身の置き所がないことも分かっている、・・・・ということなのだろうなぁ。


ここらへんの、「THE 日本」という組織の描き方は見事だったんだけど、・・・・・・・でも、よく描かれているだけに、海外の人に分かるかな~。

アジア圏なら、庵野監督も名が知られているから、「シン・ゴジラ」はヒットすると思うのだが、でも、西洋には難しいか?


ゴジラは、なんの象徴?


庵野監督と言えば、「圧倒的な情報量」「裏設定」を物語に込めて、受け手に「謎解き」をしたくなる仕掛けづくりが上手な方。

エヴァですと、「死海文書」「ロンギヌスの槍」「生命の実」「白き月」とか、オカルト色の強いワードを羅列して、「さぁ、解釈しなさい」と迫ってくる作品でした。

大ヒット当時、各々が解釈を披露して百家争鳴でした。


「シン・ゴジラ」では、これが、「安全保障」「防衛出動」「憲法」「緊急事態条項」「集団的自衛権」・・・・・など、現実の法規・慣習になっている。

つまりは「政治課題」を、物語の謎解きアイテムにしているわけでして、・・・・・・ぐむむむ、巧みな餌撒きですよ、まったく。
(政治課題を物語に内包させるというのは、押井守監督の「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の影響もあるのかな?)

今後、なにか国家間の事件や、軍事に関する問題が発生する度に、「シン・ゴジラ」が持ち出されるのが目に見えます。


時々の事件の特異性に応じて、「シン・ゴジラ」内の枝葉末節を必要に応じて切り取られることになるんだろうねー。

で、その際、重要なのは、「「シン・ゴジラ」におけるゴジラって、なんの象徴?」という問題。

初代からのモチーフである「原子力の悪」、人智を超えた「圧倒的な自然の力」、最早対話をすることも不可能な「外敵(ぶっちゃけ、北朝鮮か中国)」、暴力的に自国を蹂躙していく「黒船」、・・・・・「ゴジラ」が「最悪な来訪者」であることは誰もが認めるところ。

しかし、その解釈となると、エヴァと同じで、いくらでも出てきてしまう。

まして、現実の政治課題とリンクしているとなると、各々の立ち位置によって、色がついてしまうわけで、そこも含めて、ついに「大人な作品」をつくったなぁと感慨深いものがあります。

おまけの感想


石原さとみさんが、相変わらず「綺麗」&「キュート」だったけど、他のキャラがリアリティのあるオッサンばっかりだっただけに、マンガチックで、ちょっと浮いていたね。
まぁ、石原さとみさんの問題ではなく、庵野秀明監督の女性観の起因するのだろうなぁ(矢口チームの女性も、「いかにも」だったし)。


あと、中盤におけるゴジラの絶望的な強さと比べて、ラストが意外にあっさりだったね。
まぁ、リアリティを追及した結果なんだろうけど。


そして、素晴らしいクオリティの作品で、また見れるなら、同じような作品は見たい。

が、・・・・・・・・・・・続編は、どうかな?
映画会社としてはつくりたいだろうけど、・・・・・・難しいだろうなぁ。

怪獣映画なら、新しい怪獣を出すことで解決するけど、これって会議映画だからな。

また延々と会議を見せられてもねぇ。

あっ、でも、「日本に敵対する国が、新しい怪獣をつくって、それと対峙」という、国際関係を絡めた話なら、どうにか成立するか?


シン・ゴジラ音楽集
by カエレバ