心臓病を患いながらも、仕事を探さなくてはいけなくなったダニエル。
ひょんなことから(←便利な言葉)、シングルマザーのケイティと知り合い、彼女と親しくなる。
必死に生きようとする二人の日常を通して、(イギリス)社会の福祉の欠陥が暴かれていく・・・・・。
直前に見た映画が「ムーンライト」でした。
そんなに複雑ではない筋立てでしたが、大胆な三章構成、それと連関して三色のフィルターによって色分けされたポスター、カメラワークの不安定さで主人公の不安定な心理状態を表現し、実験的に音楽を使い、・・・・・・まぁ、なんつーか、物語自体はシンプルだけど「ほれほれ、解釈しなはれ」と言わんばかりのクリエイターの思惑がグイグイと前乗りでやってくるような映画でした。
だからこそ、アカデミー賞を取れたのでしょうけど。
で、「わたしは、ダニエル・ブレイク」。
「ムーンライト」では、冒頭からグルグルと回る映像に酔いそうになりましたが、こちらは、どっしりと構えた絵。
癖はあるけど、情に厚いという共感度の高い主人公と、それを裏付ける役者の演技。
一本筋の通った物語。
殊更にまどろっこしい手法などはなくとも、シンプルであるからこそ、製作者の主張が直球で伝わるわけで。(別に「ムーンライト」が悪い作品というわけではないけど)
エンドロールも、昨今では珍しいくらいに短く、「映画の本質」というか、「物語の本質」とは何かを感じさせてくれる作品でした。
・・・・・しかし、国家の酷薄な福祉政策を指弾する映画なのに、「文部科学省特別選定作品」というのは、なんつーか、「いいの?」と思わないでも。
「あれはイギリスの話で、日本は関係ねーし」ということなのでしょうか・・・・・。
追記
加計学園問題が大きくなる直前に、前川喜平前文科次官の出会い系バー通いが暴露され、安倍さん嫌いの人は、「こんな姑息な手段を使いやがって」と、より安倍さんを嫌いになり、安倍さん好きの人は、「ほーれ、出会い系バーなんかに通うような人間なんて、たかが知れている」と、より安倍さんのアレなところを意図的に見落とすという、大変心温まる展開になっており、さすが「昭和の妖怪」と呼ばれた男のお孫さん、こりゃ、「平成の妖怪」になりつつあるのか? などと思ってしまいますが、その前文科次官が出会い系バーに通った理由が貧困調査と主張しているわけで、「わたしは、ダニエル・ブレイク」を文科省が推すのも一応筋が通っているね。
I, Daniel Blake | ||||
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