2017年4月2日日曜日

漫画原作の難しさを思い知らせられる実写映画「3月のライオン 前編」



空いてたね


本当は、「ひるね姫」を見たかったのですが、近くの映画館ではやっておらず。
バスで小一時間かかるシネコンでも、夜のみ上映。

原作の漫画も単行本はそろえているし、最近、目出度く中途半端な所で終わったアニメ版も見てまして、興味がなかったわけでもないので、二番手の「3月のライオン 前編」を見ることに。

こちらも近くでは公開しておらず、バスに揺られての遠征。

「平日なので、ゆっくり見れるだろう」と思っていたら、バスに次々と私服の中高生が乗り込んでくる。その時になって、「あぁ春休みか」と気がつく。
すると、「混んでるかもなぁー」と覚悟を決め、案の定、シネコンの発券機の前は、少年少女が並んでいる。

「なんかめんどうくせぇー」と思ったけど、「3月のライオン」のスクリーンは、・・・・・全然、人がいない。ガラガラ。

「あれ?」と思い、「もしかして、これは!?」と不安に思ったら、・・・・・見終わった感想としては、そりゃ、人が少ないのも、「むべなるかな」。

「アイドル映画」ではないにしも、メインのターゲットは、少年少女のはずなのだが、どうにも、映画としての作品の完成度は、イマイチでした。
(アニメは、エピソードの並びが「?」と思ったこともあるけど、「三十分アニメで、ここまで原作のテイストを活かすのか!」と感心するほどの出来でした。それだけに、ちと残念)

ファンムービーとしては上出来


最近、オンデマンドで見た実写版「ちはやふる 前編後編」の出来が非常に良かったので、「3月のライオン」も期待していたんだけどね。

正直、二時間映画としては、褒められる作品ではなかったなぁ。


是枝監督ですら、「海街diary」は、純粋に二時間映画として見ると、やっぱりちょっと物足りものがあった。

それ以上に、「3月のライオン」は厳しかったです。

冒頭から、登場人物たちの立ち位置を紹介するような、ぎこちないストーリー。
中盤以降も、原作のエピソードを消化することがメインの展開。
ラストの対局シーンの連続も、どこに焦点が当たっているのか不明。

将棋の物語なので、そこから言葉を拝借すると、盤面に駒がぶち撒けられたような映画になってました。

ラストに向かってカタルシスを高めていくような「棋譜」になっていなかったなぁ・・・・・。


原作付き物語の宿命から逃れられなかった、ということでしょうか?

原作の漫画「3月のライオン」は、主人公の桐山零を中心にした、群像劇。
前後半にしても、四時間の中に、すべてを詰め込むのは、当然、難しい。

いっそ登場人物を削ってしまうなり、桐山視点オンリーにしてしまえば、すっきりとした物語を提示できるのでしょうが・・・・・、しかし、原作モノにおいて、「オリジナル」は鬼門。

オリジナル展開、オリジナル設定、オリジナル人物・・・・・・、なんと多くの作品が、「オリジナル」によって、ファンから総スカンを喰らって爆死したことか。(たまーに、成功する作品もありますが・・・・・)

その危険を冒すくらいなから、ある程度、詰め込め過ぎでも、原作重視という安牌を選びたくなってしまうのは、まーねー、理解できるんですが。

それにしても、島田八段の突然の登場とか、長期連載の漫画においては気にならない流れでも、二時間の映画では「唐突」感が否めなかった。

いっそ、島田研究会周辺は削ってしまっても良かったのではないかと思いつつ、原作において、孤高の天才・桐山零に、「大人とはこうだ!」という背中を見せつける大事なキャラ。(「ファーストガンダム」における、ランバ・ラルですな)

ただ将棋を指すだけではなく、そこから社会とつながっていこうとする島田八段の生き様が、後の桐山少年の暴走寸前(“寸前”ではなく、“暴走”でいいのか?)の、川本家救済に向かわせるのだから、どうしても外せない。

そこらへんを、まるっと排除してしまうと、代わりのオリジナル展開を用意する必要が出てくるから、・・・・・・・まぁ、それは避けたいよね。

結果、二時間映画としては、微妙になってしまったわけで。


場面場面の完成度は高かったです。
「3月のライオン」を実写化したら、「こうなるよね」という見事な絵でした。

登場人物にしても、染谷将太さんの二階堂は「やり過ぎ」感はありましたが(「聖」の松山ケンイチさんに対抗したか?)、全体としては、文句のない配役。

そういう、製作者の「愛」やら、「気づかい」が十分に感じられるだけに、ストーリーは残念。

もしかしたら、この散らかったエピソードが、「後編」において回収されるのかもしれませんが・・・・・・、どうかなぁ。

おまけの感想


ちょっと気になったのは、桐山の養父(幸田柾近)を、竹野内豊さんが演じていたこと。
これだけ違和感があった。

原作は、もっと優しいお父さんだったのに、えらく「強そう」な人を選んだなぁ。温水洋一さんとは言わないまでも、遠藤憲一さんくらいの、ちょっと「とぼけた」感もあるような人の方が合っているような?

まぁ、でも、主人公の桐山や、有村架純さん演じる幸田香子を「追い詰める」面を、二時間ポッチで強調するには、これくらい「父性」が前面に出ている人が必要だったんだろうなぁ。

ここらへんは、まぁ、オリジナルと言えば、オリジナルだったなぁ。

by カエレバ

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