遅ればせながら、「バケモノの子」を見てきました。
うーん、ん?
前作「おおかみこどもの雨と雪」は、現代ファンタジーだけれども、「子離れ」「母子家庭」「Iターン」などなど、見る人によって、多くの感想を持つような奥行きのある作品でした。
が、一方で、「子供が見るのは、ちょっとツライか?」と思わないでも。
で、今作「バケモノの子」ですが、・・・・・・子供には、いいかもね。
でも、大人には、ちょっと物足りないか?
登場人物たちが、他人や自分の「立場」や「心情」を、安易に説明するんだよね。
まぁ、「アニメなんだから子供に見せないと」 → 「子供でも分かり易く」という配慮なんだろうけど・・・・・。
ストーリーですが、母子家庭の蓮は、優しい母を交通事故で亡くしてしまう。
母の実家に引き取られることになるが、祖父母たちの心ない言動に傷ついた&腹を立てた蓮は、家を飛び出してしまう。
そこで、異界から訪れていたバケモノの「熊徹」と遭遇。
警察に負われた蓮は、彼を追ってバケモノの世界に逃げ込んでしまう。
なんだかんだありつつも、孤独だった熊徹と、同じく孤独だった蓮は、一緒に暮らしていくことになる。
傷ついた同世代の異性同士であれば恋人同士、同世代の同性同士なら友人。(最近は、同性同士でも恋人になったりしますが)
年齢差がある異性・同性ならば、擬似的な親子関係になるというのは、物語のお約束。
で、それを象徴するように、蓮は、熊徹から新しい名前「九太」を授かる。
「名付けの親」と言われるくらいでして、これによって、「蓮」改め「九太」は、バケモノの世界で、新しい居場所を見つけたのであった。
オーソドックスな展開ではありながらも、テンポの良い流れで、特別に引っかかるところはなかったのですが・・・・・・・・、中盤から、「ん?」て感じでした。
徐々にネタバレです。
熊徹と九太は、「バケモノの子」というタイトルからも分かるように、血は繋がっていないし、同じ生物ですらないけど、親子の関係となっていく。
でも、九太は17才になったある日、偶然、人間界に戻ってしまう。
まぁ、大人になって、自己のルーツに興味がわいてくるのは普通でしょう。
そして、勉強に目覚めて、大学を受験することまでも考えるよになる。
「ん?」と違和感を覚えたのは、僕だけ?(僕に、親の経験がないから?)
「バケモノの世界」でも本があるようなので、学問もあるでしょう。
バケモノの世界には興味はない。
でも、人間界の勉強には惹かれる。
・・・・・・・なんか、どうしてそうなるのか、よく分からんかったなぁ。
「バケモノの世界」というのが、「幼年期」「少年期」のメタファーであり、そこは父親(熊徹)の庇護の世界。
だから、青年期への移行で、「バケモノの世界」から抜け出ようとしている。
というのは、分からんでもないです。
が、その結果として、実の父親の元に転がり込むってのは、どうなの?
是枝監督「そして父になる」では、「親子関係というのは血では決まらない」という現代的な物語であったけど。
細田監督としても、別に、「親子というのは血で決まる」なんて言ってはいないけど、「バケモノの子」の流れでは、そうなっちゃうよなぁ・・・・・・。
そもそも、バケモノの世界では、最初は苦労したが、熊徹とは信頼関係も出来、友達もいる。
武術では、熊徹の一番弟子として、一目置かれてもいる。
九太には、ちゃんと居場所がある。
「それなのに、なんで、人間界に、そんなに興味があるのか?」という疑問は拭えないねぇ~。
まぁ、前述のように、大人になって、自らのルーツ(人間界)に興味を抱くのは、決して不自然ではない。
そして、人間界のことを知ろうと思えば、大学に行くのが最良。(←この前提自体が、ちょっと無理筋な感じがするが)
大学を受験しようと思ったら、戸籍や住民票が必要。
そしたら、血のつながった親に手助けしてもらうのは、まったく理に適っている。
だから、別に熊徹や、育ててもらったコミュニティ(バケモノの世界)を裏切ったわけではない、・・・・ということなの?
うーん、そう考えることは出来るけど、個人的には、納得できんなぁ。
邪推するに、細田守監督が(自分の)子供に「遊んでばっかりじゃなくて、ちゃんと勉強しろよ」ということを伝えておきたいが為に、受験勉強のシーンが生まれたんじゃないの? と思ってしまいますが、さて。
で、人間世界で出会う楓についても、正直、「必要?」と思わないでも。
(クラスでは孤立して、親とは上手くいってない美少女というお約束。彼女も、孤独なわけでして、蓮と引かれ合うのもお約束)
まぁね。
親元を巣立って、パートーナーを見つけ、新しい家族をつくるというのは「健全な物語」。
そして、アニメだし。
男の子の主人公には、かわいらしい女の子がいないと、ね。
とは理解しつつも、彼女の登場で、「結局、九太は色香に惑わされて、育ての親と自分も見守ってくれたコミュニティを捨てるの?」と意地悪な感想が頭に浮かんでしまったなぁ・・・・。
さらに疑問符なのは、この子が、ラスト戦闘シーンで、「隠れていろ」と主人公から命令されても、離れないんだよね。
「お前、なにできるんだよ?」と思って見ていたら、モンスターと化した蓮のライバルに向かって、口先だけで立ち向かっていく。
いいじゃん、お約束だよ、お約束。
これで、盛り上がるんだよ! ということなのだろうが、・・・・・・・うーむ。
ラスト。
九太は、「剣を捨てた」とされている。
熊徹から習った武術は止めたんでしょう。
うーん。
そりゃ、子が親の仕事を継ぐ必要はないわけでして。
肝心なのは心(魂)であって、それは、熊徹から九太に、ちゃんと継承されている。
だから、最終的には、真の親子関係を結べた、という大団円なんだが・・・・・・。
その結果として、自分を迫害した人間界(実の父親)に戻っていくというのは、うーん、なんだか。
まぁ人間界から逃げてきたのだから、ちゃんと大人になって、再度挑むというのは、健全な気もしつつ、「なんで、バケモノの世界を捨てる必要があるの?」と、どうしても腑に落ちないなぁ・・・・。(田舎から東京に就職した人のように、ちょくちょくは顔を出しに戻るんでしょうけども)
「おおかみこどもの雨と雪」では、最終的に子供が狼の世界へ旅立ってしまうという予想外の展開に、「ん!」と膝を打つものがありましたが、今作の「バケモノの子」における最終的には子供が故郷を捨てるという予想外の展開には、「ん?」と腕組みして小首を傾げてしまった、という感じでした。
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