2014年11月20日木曜日

東浩紀「弱いつながり 検索ワードを探す旅」を読了

「TBS RADIO 文化系トークラジオ Life」を聞いていると、よく「東浩紀」さんのお話が出てくるのですが、未だ一冊も読んだことがなく。

で、一冊読んで見ようかと手にした「弱いつながり 検索ワードを探す旅」。
最新作なのかな?

アマゾンのレビューで「薄いです」と書いてあったのですが、確かに字も大きく、ページ数も150枚で、集中力がある人なら一~二時間くらいで読み終えることが出来ると思います。

しかし、ページは少ないですが、内容は濃い・・・・・・という、ありがちな言葉を並べたくなりますが、・・・・・「濃い」とまでは言えないか?

そもそも、海外旅行から世界の有り様を考察という「悲しき熱帯」的な流れからのロゴスの限界を指摘というのは、思想・哲学のことは詳しくないけど、まぁ、ありがち?


でも、今更感もあるような、ありがちなことを主張しなくてはいけないというのは、結局のところ、それほどまでにネットの支配が確立されてしまっているということなのか、・・・・ふむ。

それで思い出したのは、「TBS RADIO 文化系トークラジオ Life」の「ソーシャル、レジャー、リア充」の回。

峰なゆかさんが、「女子会での写真は、一旦ネットに上げたものを加工して、完成品だけを参加者と共有する」と言って、それに対して、速水さん(だっとと思う)が「もう飲み会ではなく、ネットに現実があるんだね」と感想を述べていたこと。

日々の生活の変化ってゆっくりだから、気がついていなかったけど、「目の前のリアルを無視して、仮想のネットが優先される」傾向は、確実に進んでいるのかもね。


インターネットの誕生によって、「あらゆる人が、平等に情報にアクセスできる! 情報の共産革命だ!」てな感じで喜ばれていたはずなのに、気がついたら、グーグルやらフェースブックやらに情報が全て握られてしまっている。

もちろん、無料でアクセスできることによって、もたらされた恩恵は大きいんだけど、大きければ大きいほどに、副作用も出てくるのは、どこでもある話でして。

正負は糾える縄の如し。


ネットが巨大になり過ぎてしまった。膨大な情報がいくらあっても、フィルタリングができなければ、結局は必要なものにアクセスすることができない。

で、グーグル先生は、便利なツールを基本無料で開放してくれている。

とっても賢くて、「自分に必要な情報」を、素早く取り出してくれる。


が、この「自分に必要な情報」がクセモノでして・・・・・。
ネットには情報が溢れているということになっているけど、ぜんぜんそんなことはないんです。むしろ重要な情報は見えない。なぜなら、ネットでは自分が見たいと思っているものしか見ることができないからです。そしてまた、みな自分が書きたいと思っているものしかネットに書かないからです。
グーグルが、evilかevilでないかは、さて置くとしまして、こうして指摘されてみると非常に納得。

ネットは、人間の知識を無限に広げてくれるのではなく、タコ壺に押し入れる装置としても作用する。

日本に限らず、ネット世界においては保守的な愛国運動が盛んだけど、この説明で、その原因が、ようやく理解出来ました。


特に重要なのが、本書においては、ネット自体を批判しているわけではないんだよね。(「書を捨てよ町へ出よう」ではない)

オッサンにありがちな、「昔は良かった」的な論法で、
 「ネットは犯罪の温床だ」
 「人間性を破壊する」
 「日本社会の伝統をズタズタにする」
てな安易な言葉を持ち出してきているわけではない。

最早、後戻りはできない世界に、我々は生きているのであって、それを踏まえて、「ネットの特性に気をつけろ」、「意識的にネットからの距離を考えろ」と、いう警告している。

すっかりスマートフォンが手放せなくなってしまった生活をおくっている人間なので、なんともお耳痛い警告です。


また、「TBS RADIO 文化系トークラジオ Life」の前回「フィジカルの逆襲」は、どうも最後の一歩が腑に落ちないという感じだったのですが、本書を経由することで、ようやく胸に収まった気がします。


弱いつながり 検索ワードを探す旅
by カエレバ

0 件のコメント:

コメントを投稿