伊藤計劃氏の「虐殺器官」読了。
メタルギア好きなので、「MGS PW」に「このPEACE WALKERを伊藤計劃氏に捧ぐ」なんてメッセージで気になっていたのですが、ようやく作品を一つ読むことができました。
感想としては、メタルギアというか、小島監督への愛があふれる作品でした。
wiki見ると、かなりのファンだったようなので、当然と言えば当然ですが。
■伊藤計劃
ちょっと読み返しただけでも、DARPA、ナノマシン、ミーム、PMF、スネークイーター、HALO降下等々、いくらでもメタルギアで使われていた用語が、バンバン出てくるよ。
でも逆に、MGS4の月光のイメージなんか、人工筋肉が実用化されている「虐殺器官」の世界観から発想を得たんじゃないかと考えてしまった。
けど、「虐殺器官」は2007年6月、「メタルギアソリッド4」が2008年6月の発売なので、ゲームの製作期間の長さを考えると、さすがに、ないか?
ありがちな表現を使うと、時代の先端を行くクリエーターが、図らずしもシンクロしてしまった、といったところか?(伊藤計劃氏は、発売当時は無名だったけど)
小島監督の、それもMGS3の影響は、甚大ですな。
いろいろと読み取ることの出来るゲームだけど、MGS3の中では、「国家からの任務と個人」が、一つの柱になっています。
言い換えると、「国家と個人の関係性、その中で自由意思って何?」ということ。
以下、ネタバレなんですが、題名の「虐殺器官」とは、言葉のこと。
ある種の言葉を用いることで、その言語を用いる集団に虐殺を起こすことが可能、という設定になっております。
そう書くと、「SFだね」の一言で片付けられるのですが、ある場面においては、人は、言葉によって人を殺すことになるのも事実。
これは、事故にあった母親への延命治療の停止をしてしまった主人公の独白です。
言葉によって虐殺引き起こすという設定自体は荒唐無稽かもしれないけど、我々の世界において、銃弾やナイフといった凶器は最後に現れるのであって、その前段階には往々にして言葉がある。
「虐殺器官」の主人公は911後のアメリカにおいて新設された暗殺部隊の隊員だけど、彼は所詮、最後の凶器。
彼が殺す対象というのは、国家が決めたものであり、命令(言葉)によって、定められている。
言うなれば、彼に自由意志といったものはない。
それに対比して、虐殺を引き起こす男、ジョン・ポールは、自らの意思でもって行動している(人を殺して歩いている)。
この二人の緊張関係は、最終的には、主人公がジョン・ポールを包含することで終わります。(MGSでのスネイクとザ・ボスを想起させる関係です)
で、そのラストが、「劇場版パトレイバー2」で描かれていたように、戦場を遠くにおいやってしまった先進国への痛烈な批判となっているわけでして、ここらへんのメッセージも、やはり小島監督の影響が濃いですねー。
気になった点としては、暗殺部隊の隊員にしては、主人公がナイーブでね。解説を読むと意図的なんだろうけど。
一人称も僕だし。
(村上春樹氏っぽくも感じられました)
全体的に日本人的なウエットな感じがして、主人公が、どうにもアメリカ人には思えない。
その価値観にしても、ジョン・ポールを取り込んでしまう思考回路にしても、どうしても日本人的なんだよね。
まぁ日本人が書いたんだから当たり前なんだけど。
他にもあげつらえば、ジョン・ポールが自らの秘密についてべらべらとしゃべり出すところなんか、まだまだ荒削りだなーと思ってしまったけど、そうそうたる人間が帯に賛辞を送っているように、テンポよく進んで、物語は十分に面白かったです。
しかし、これだけの作品をデビュー作で書けたのに夭折してしまった、というのは、なんとも・・・・・。
もっとも長編にもかかわらず、10日間で仕上げてしまったという事実からすると、それだけの集中力が発揮できたのは、やっぱり自分の残りの日数を覚悟していたのかな、なんて思ってしまいます。
アニメになるようだけど、うんちく満載で、虐殺器官の説明が複雑にならざる得ないのに、大丈夫か? と勝手に心配してしまいます・・・・・。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) | ||||
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